103時間目:14回目の入学式
(私、ティル。ティル・ラーナー。メビラ学園の入学式に来てるんだけど、迷ってる。ずっと迷ってる)
ティルは、学校の講堂内で自らの入学式を待っていた。いつものようにグレゴリオとノエルを探し、2人と手を振り合う。ニッと笑い、間もなく入学式が開式になるのを講堂の前を向きながら感じた。
(これから、学園長先生の顔を見るんだ。どんな顔をしていいか、わからなくて)
入学式は開式。ティルは国歌を完璧に歌い上げる。その後の学園長挨拶を待った。学園長のイヴァンは、黒色のスーツという出で立ちで舞台から拡声魔法を用いて挨拶を始める。
(学園長先生)
「春の花が咲き誇り始めたこの良き日に、メビラ学園に入学の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから初等部、中等部、高等部と12年間、魔法をはじめ、この学校で世の中の事を学んでください」
ティルは、そんなイヴァンを凝視する。一方、そのイヴァンは、明らかに誰かを探していた。そして、5分程度の挨拶の最中にお目当ての人物を探し当てた。
(学園長先生、私を見てる。初めて入学式で目が合ったね)
イヴァンは、ティルにわずかに微笑んだ後、最後まで挨拶文を読み上げた。それから、ティルは来賓の紹介、挨拶等を聞き、モニカの新入生の点呼を受けた後、イヴァンから魔法の杖を受け取った。
「これから、よろしくね?」
入学式の閉式後、移動した教室でティルは自らの席に着き、保護者と共にモニカの挨拶を受けた。
「今日から皆さんの担任になります、モニカ・オリーンです。よろしくお願いします!」
(オリーン先生、前のイテラリピティでは、お母さんになってくれてありがとう)
それから、教科書が入る魔法の杖の説明を経て、クラスメイトとの写真、家族との写真をそれぞれ校門で撮影した。その後、グレゴリオが言った。
「さ、帰るよ!ティル!!」
「そうだね!お父さん!!」
ティルは、写真の玉2つを手に答えた。それを見ながらノエルは笑顔で尋ねてきた。
「何で帰る?ティル?」
「えっと、歩きで帰りたい」
その返答にグレゴリオは心配の声を上げる。
「ノエルが大変だと思うけど、大丈夫かい?」
ノエルは、自らのお腹に軽く手を添えながら、柔らかく頷き、言った。それを受け、グレゴリオは言葉を続ける。
「じゃあ、歩きで帰ろう」
「うん!」
それから、ゆっくりとラーナー家の面々は歩きだす。多少、歩いた後、動く歩道に乗る直前に、グレゴリオが言った。
「僕も、メビラ学園に通ってた頃、ここを歩いたなぁ」
それに、ノエルが返した。
「私もよ。明日からここがティルの通学路になるのね。そして、この子の通学路にも」
ノエルは、愛おしそうに自らのお腹を撫でた。ティルは言う。
「その時は、私、弟と一緒に歩く!」
グレゴリオは笑った。
「またまた、妹かもって言ってるだろう?でも、その時は、ティル、お姉ちゃんとして面倒見てやってね?」
「私からも、お願いするわ、ティル」
「うん!!」
それから、ティル達は動く歩道を経て、自宅へと帰って行った。
翌日からの授業は、変わり映えのしない物であった。最初の授業で学級委員長がハワードに決まり、それから箒を作る等、ティルにとっていつもの授業が、他の児童にとっては新鮮な授業が、繰り広げられる。勿論、指導するのは、つい最近まで自らがティルの養母であった事を知らないモニカであった。
そんな中で、ティルは4月のある日の休み時間、ふらっと学園長室へと行った。
「学園長先生」
「おお、ノヴァ・テンポーレ。まさか本当に会いに来るとは思わなかった」
「会いに来ちゃ駄目でしたか?」
「そんな話ではない。喜ばしい事だと言いたかったのだ」
「そうですか」
イヴァンは、自らの席に座りながら、立ったままのティルにこう言った。
「それで、今日はどうした?」
「本当に、イテラリピティで私の事、忘れなかったんだって思って。入学式の時に、初めて学園長先生は、私を見てくれました。なんだか、嬉しかったです」
「それは、探さざるを得なかったからな」
イヴァンは時計を見た。
「もうすぐ、休み時間が終わる。また話そう」
「はい!」
そうして、ティルは教室へと戻って行った。
5月に入る。その日の授業は、宿題の作文を読み上げる時間だった。モニカは言う。
「さ!皆さん宿題の作文は書いてきましたか?」
ティル達児童は、「はーい」と返した。モニカはそんな児童にこう声をかけた。
「では、1人1人読み上げてください。登録番号順に発表をお願いします」
そして、一番小さい番号の児童から作文を読み上げていった。
「私の家族。1年3組、フェリシア・メンデス。私のお父さんは、聖歌隊で歌っていて、バリトンというお仕事をしています。とても上手な歌を歌います。私もお母さんもその歌が好きです。家でもお父さんは、私とお母さんの為に歌ってくれます」
(フェリシアちゃん、このイテラリピティでも、元気でよかった。でも、前のイテラリピティであんまりラインハルトくんとの仲を応援出来なかった。ごめんね)
「僕の家族。1年3組、ハワード・フリーダー。僕の父は、政治家です。バソト院の議長で、議員達をまとめています。議会が忙しい時は、何日も家に帰りませんが、僕と母は、このレボルテという国が良くなるように父を応援しています」
(ハワードくん、また学級委員長、頑張って!それに、また私、何か嘘をついちゃうかも。っていうか、このイテラリピティの入学式であくびしなかったから、私の事、なんとも思ってないかもね)
「私の家族。1年3組、エリン・フレンツェル。私のお父さんは、パン屋をしています。お父さんの作るパンは、とっても美味しいです。毎日毎日お父さんの作るパンを食べています。美味しくて美味しくてとっても幸せです」
(エリンちゃん、また友達でいようね!学園長先生ともお友達になったから、3人で仲良くしてみようかな?うーん、でも止めておこう。エリンちゃんびっくりしちゃうよね?)
「僕の家族。1年3組、ラインハルト・マラブル。僕の父は、騎士をしています。プルド団の団長で、国に忠誠を誓っています。僕は、そんな父が誇りです。いつも母と共に父の任務が成功するように祈っています」
(ラインハルトくん、やっぱりかっこいい!このイテラリピティでも、ラインハルトくんの事好きでいていいかな?)
「私の家族。1年3組、ティル・ラーナー。私のお父さんは、警察官です。みんなが安心して暮らせるように、街を守っています。私とお母さんは、そんなお父さんをかっこいいと思っています。私の家族には、もうすぐ弟が産まれます。とっても楽しみです。4人家族になったら、きっと楽しいと思います。今までよりも、もっと仲良く過ごしたいです」
(作文、嘘じゃないけど、それよりやりたい事が出来たよ。私)




