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銀座のパフューマー 香りの記憶  作者: 昼間 ネル
第一章 香りの記憶。

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9/31

第九話:共鳴する孤独と、新たな狼煙

九条が仕掛けたのは、物理的な罠ではなく「感覚」の罠。

犯人が絶対的な自信を持つ「至高の香り」を、一瞬にして「耐えがたい悪臭」へと反転させるという、調香師ならではの残酷な報復が幕を開けます。

現場に残されたわずかな手がかりから、九条と近藤刑事が辿り着いたのは、時が止まったような古い図書館。

そこで待ち受けていたのは、香りに魅了され、香りに支配された孤独な魂でした。

しかし、事件の解決は、さらなる巨大な悪意への入り口に過ぎませんでした。

九条のプライドを懸けた、見えない敵との戦いがここから始まります。

近藤刑事の車両に積み込まれたのは

九条が調合した「感覚反転剤」。


それは、犯人が愛用する古いヘリオトロープの香りに反応した瞬間、鼻腔を焼くような強烈な

**「腐敗臭」**へと変化する、嗅覚の罠でした。


九条の指し示した「古いインクと防腐剤の匂い」を頼りに、プロファイリングし犯人が特定した。

警察は、郊外の廃墟となった

図書館の周りを包囲しました。


無垢なコンクリートの部屋にいたのは、

ボサボサ頭で目の焦点が合わないの危険な男。

年は三十代位の名は、加藤

しかし、その瞳は焦点が合わず

虚空を見つめています。


部屋に入った近藤刑事に付いた、

仕掛けが、室内に放出された瞬間

男は「ぎゃあああ!」と絶叫し

自分の鼻を掻きむしるようにして崩れ落ちました。


「臭い……! 嘘だ、これは至高の香りのはずだ!

あの人が僕だけにくれた……!」


暴かれた「真実」


近藤刑事が加藤を取り押さえる中、九条はゆっくりと男に近づき、その首筋に残る微かな香りを嗅ぎました。


そこには、犯人が自ら作ったとは思えないほど、

完璧に計算された**「支配の香り」**が刻まれていました。


その後、近藤刑事が、取り調べを行い

全てを自白した。


彼はネットで知り合った「ある人物」から、

定期的にこの香水を買っていたらしい。

「これを使えば、君を裏切る者は皆

安らかに眠る」という言葉と共に。


犯人が心酔していたのは、自分の才能ではなく、

正体不明の「教示」から与えられた毒だったのです。


男が連行された後、九条は現場に落ちていた香水の小瓶を拾い上げました。ラベルには、九条の店のロゴを嘲笑うような、歪んだ黒い蠍のマーク。


「九条さん……犯人、捕まったのに

全然スッキリしませんね」


向日葵の言葉に


九条は無言で小瓶を握りしめました。

「……香りを『凶器』として弄ぶ者が、

まだこの世にいる。

この男はただの捨駒に過ぎなかったか。」


九条は、自分の指先に残った「罠」の香りを、

ハンカチで乱暴に拭い去りました。


数日後、調香室を訪れた近藤刑事は

約束通りの莫大な報酬をデスクに置きました。


「おかげでホシは落ちた。…だが、君の言う通り

香水の送り主は依然として不明だ。

警視庁としても

この件は我々も協力出来るはずだ

何か合ったら頼むよ。」


九条はその報酬に目もくれず、

新しいムエットを手に取ります。


「刑事さん。……次にここへ来る時は、金ではなく『情報』を持ってきなさい。私の鼻を侮辱した

犯人の、特定出来る情報を頂きたい。」

九条がその時、無意識に調合していたのは


綾香(六話)から貰った。

清らかな**「ネロリ」**の香りでした。


それは、汚された世界を再び浄化しようとする、

九条なりの静かな「祈り」のようでもありました。

第8話をお読みいただき、ありがとうございました。

作品の参考にしたいので、ブックマーク、評価お願いします。


九条の放った「感覚反転剤」が、犯人の狂信的なプライドを打ち砕くシーンはいかがでしたでしょうか。

物理的な衝撃よりも、信じていた美しさが内側から腐り落ちる恐怖こそが、九条が選んだ「授業料」でした。

しかし、捕らえた男はあくまで「駒」に過ぎず、背後には「黒いサソリ」のマークを冠する謎の調香師の存在が浮き彫りになります。

自分の聖域である香りを、人を壊すための「毒」として扱う宿敵の登場に、九条の静かな怒りが立ち上がります。

ラストで彼が無意識に調合した「ネロリ」の香り。


綾香(6話)は事件の間にありました。

そのお話は、別でお届けします。


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