表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚飾の星の王子さま 著者:一条あやめ  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/10

第9話:黄金の沈黙

虚飾の星の偶像 


第9話:黄金の沈黙


著:一条 あやめ


地球。

そこは、これまで見てきた六つの星の愚かさを、一万倍に煮詰めて凝縮したような、混沌の祭壇だったわ。

王子さまが最初に降り立ったのは、月明かりに照らされた、この砂漠。

そこで彼が出会ったのは、黄金色の蛇。死を司る、饒舌な沈黙の化身。

「『あんまり寂しい場所だね、ここは』って、王子さまが言ったら、蛇はこう答えたんですって。『人間のあいだにいたって、寂しいものさ』……ふふ、最高のパンチライン。この地球には、何十億という人間がいるけれど、誰もが自分だけの透明な檻の中に閉じこもっているの」

けれど、王子さまを本当の意味で「完成」させたのは、あの黄金の毛並みを持つキツネとの出会いだった。

「キツネは王子さまに、残酷な真実を教えたわ。――『飼いならす』という、甘美な呪いを。あやめ、君ならわかるでしょう? それは、ただの他人が、世界でたった一人の『特別』に変わる瞬間のこと」

王子さまの瞳が、砂漠の熱を帯びて潤む。

「キツネは言ったんだ。もし君が僕を飼いならしたら、僕らは互いに必要しあうようになる。僕にとって、君は世界で一人だけの人になるし、君にとって、僕は世界で一匹だけのキツネになるんだ……って」

あやめの心に、鋭い棘が刺さる。

アイドルとファン。作家と読者。

私たちは、言葉を通じて、互いを「飼いならして」しまっている。それは、相手がいないと世界がモノクロに見えてしまうという、不治の病にかかること。

「王子さまは、その時気づいたのね。自分の星に残してきたバラが、どうしてあんなに特別だったのか。たとえ地球に五千本のバラが咲き乱れていても、彼が水をやり、ガラスの覆いをし、そのわがままを聞き続けた『あの一輪』には、絶対に勝てないということに」

『大切なものは、目に見えないんだ。心で見なくちゃいけないんだよ』

キツネが残したその有名な言葉を、あやめは、極彩色の比喩で塗り替えていく。

「大切なものは、目に見えない。だからこそ、私たちはその『見えない空白』を、ありったけの言葉と、香水と、嘘で飾り立てるの。バラが本当に美しかったから愛したんじゃない。彼女のために費やした、あの『虚しい時間』こそが、彼女を宝石に変えたのよ」

王子さまは、キツネとの別れに涙を流したわ。

でも、キツネは笑っていた。

「小麦の色を見るたびに、君の金色の髪を思い出せるから。それだけで、僕の人生は黄金色に染まるんだ」

私は、王子さまの細い肩を抱き寄せた。

彼の銀色の衣装は、砂と涙でもうボロボロだったけれど、その姿はどの星の王様よりも気高く、美しかった。

「……王子さま。時間はもう、残り少ないわ。蛇があなたを待っている。あなたの星へ帰るための、最後の一歩を……私がプロデュースしてあげる」

夜の砂漠に、黄金の蛇が、死の調べを奏でるように音もなく近づいてくる。

あやめの指先は、今や熱を帯び、キーボードを叩く音は激しい鼓動のように響いていた。


一条あやめの執筆後記

「ああ……書いていて、呼吸が止まりそう。あなたは私に飼いならされてくれた? 私の物語がないと、あなたの世界が少しだけ退屈に感じるようになってくれたかしら? もしそうなら、私の勝ちね。さあ、次はついに……最終回。一条あやめが贈る、最高に美しくて、最高に残酷な『サヨナラ』よ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ