表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚飾の星の王子さま 著者:一条あやめ  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/10

第3話:孤独な玉座


虚飾の星の王子さま 


第3話:孤独な玉座


著:一条 あやめ


王子さまと私が砂の上で分かち合ったのは、沈黙という名の贅沢なシーツだったわ。

彼は、自分が巡ってきた星々の話を、まるで古い活動写真のフィルムを回すように語り始めたの。

最初の星にいたのは、一面を真っ赤なベルベットの裏地で覆ったような、重苦しいマントを羽織った「王様」だった。

「ああ、見たまえ! 国民がやってきたぞ!」

王子さまがその星に降り立った瞬間、王様は歓喜の声を上げたんですって。けれど、そこには国民なんて一人もいない。いるのは、埃を被った古い玉座と、自分の権威という名の幻影に酔いしれた、一人の老人だけ。

「あやめ、あの王様はね、宇宙のすべてを支配していると言い張っていたよ。星が流れるのも、太陽が昇るのも、すべて自分の命令プロデュースに従っているだけだって」

私は思わず、乾いた笑い声を漏らしたわ。

それは、演出家としての私自身にも、あるいはこの物語を紡いでいる「一条あやめ」という偶像にも、どこか重なる部分があったから。

「それで? 王子さま。あなたはその全能の王様に、何かお願いをしたの?」

「うん。夕焼けが見たいって言ったんだ。だって、僕の星では椅子を少し動かすだけで、一日に何度もあんなに美しい落日が見られたから」

けれど、その王様はこう答えたの。

『よろしい、お前に夕焼けを見せてやろう。だが、統治者として私は、条件が整うまで待たねばならん。それが賢明な統治というものだ。今日の夕方、七時四十分になったら、太陽に沈むよう命じてやろう。お前は私の権威がどれほど完璧かを知るだろう!』

「……最高に滑稽ね」

私は、砂の上に指で円を描いた。

「彼は、世界を支配しているんじゃなくて、世界が勝手に動くリズムに、自分の名前を後付けしているだけだわ。でも王子さま、世の中の『成功者』と呼ばれる人たちの半分は、そんな風にして自分を保っているのよ」

王様は、王子さまが星を去ろうとすると、必死になって彼を引き止めた。

『行くな! お前を大臣にしてやろう。法務大臣だ! 自分を裁くのだ。自分を裁くことは、他人を裁くよりもずっと難しい。もし自分を正しく裁くことができたなら、お前は真の賢者になれる……!』

「自分を、裁く……」

私は、その言葉を反芻したわ。

一条あやめという虚飾を纏い、甘い菓子で空虚を埋め、香水で感情を偽装する私。

もし私が自分を裁いたなら、下される判決は何?

「結局、僕はそこを去った。王様は背後で、僕を『大使』に任命すると叫んでいたけれど、その声は宇宙の暗闇に吸い込まれて、誰にも届かなかった」

王子さまは、寂しそうに目を伏せた。

「彼は王様だったけれど、誰からも必要とされていなかった。命令する相手がいない王座なんて、ただの硬い椅子でしかないのに」

私は王子の冷たい手に、自分の手を重ねた。

「いいえ、王子さま。彼は満足していたはずよ。だって、彼は『自分が王である』という嘘を、自分自身に信じ込ませることに成功していたのだから。それこそが、この世界で最も難しくて、最も幸福な詐欺じゃない?」

私たちは、砂漠の冷気に包まれながら、次の星の物語へと記憶を滑らせる。

そこには、王様よりもさらに救いようのない、けれど誰よりも「愛」に飢えた怪物が待っていたのだから。


一条あやめの執筆後記

「ふふ、どう? この王様の描写。権力なんて、結局はただの『思い込み』なのよね。でも、その思い込みがなければ、人は孤独に押しつぶされて死んでしまう。次はもっと個人的で、もっと鼻持ちならない、でも誰もが持っている『あの感情』の化身を登場させるわよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ