から揚げ弁当
その時、「くうううう」とまた腹の虫が鳴った。
なるほど。本当に11時30分なのであれば、腹もすくはずだ。この訳のわからない状況で変な納得をしてしまった。
あ、そうだ。弁当があったんだ。
僕は、スマホを学生服の胸ポケットにしまうと、自転車から降りてそのまま道の左側に自転車を引いていき、スタンドをかけて駐輪した。
前を見ても後ろを見ても自動車はおろか人影さえない道だったが、日頃のくせなのか、なんとなく道の端に止めた。
広い草原のど真ん中である。左側は地平線のかなたまで緑色の草原であった。よく見ると、所々に赤や黄色の花が咲いている。甘い香りの正体のようだ。
タタン・タタン・・とはるかかなたから小さな音が聞こえてくる。地平線のわずか下をなにか白いものが動いている。一両編成の汽車が実にのんびりと走っていた。
右側も新緑の草原が延々と続いているが、地平線の近くには林のような帯がありその上には頂き付近がまだ雪化粧されている山並みが見える。
僕がいるこの世界は、上半分が青で、下半分が緑の単純で清廉なところだったんだと納得してしまいそうだ。
草原を渡り行く風は、さっきまで感じていた風よりも若干冷たい気もするが、青葉や花など自然の香りがずっと濃厚な感じがする。
太陽はほぼ真上にあり、時間が11時30分というのもうなずけてしまう。おかげで黒い学生服をあたためてくれるので、幾分涼しい空気の中でも寒さは全く感じない。
僕は、鞄を持って道路から草原に踏み入れた。
牧草なのだろうか、丈が5センチくらいの草が密集してはえており、高級な絨毯の上を歩いているような感覚だった。
数メートル歩いた辺りで鞄の中から弁当を取り出した。鞄をそのまま草むらに置き、その上に腰掛けた。草があまりにも青々としているので、直接座るとズボンが濡れそうな気がしたからだ。
弁当を腿の上に置き、蓋を開けた。
おっ、今日はから揚げか・・箸で一個つまみ上げ、口に運んだ。
うーん、んまい。
もう一個・・から揚げを頬張りながら考えた。
さーてこれからどうしようか・・だいたいここはどこなんだ?
そうだ、僕はひらめいて胸ポケットのスマホを取り出した。画面を灯け、アンテナを確認する。かろうじて1本立っている。




