下り坂と赤い鉄橋
僕は躊躇なくペダルを2・3回強く踏み、大きく加速した。
自転車は、下り坂の重力の助けを借りて、おもしろいようにスピードアップしていく。
僕の右手は、ギアチェンジレバーにかかった。
これだけ加速すれば、日頃あまり使わないギア「3」にできるからだ。
幸い道路は、住宅街の割りに意外と幅広く、車両や人の影もない。
僕はギアチェンジのレバーをグイっとひねり、最高速のギアにチェーンを絡めた。
あまり使わないギアなのでちょっと引っかかるかなと一瞬不安がよぎったが、何の支障もなく切り替わった。
当然ペダルは重くなり、その分加速力もハンパではない。
しばらくは立ちこぎのまま加速したが、何度もこがないうち立ちこぎの必要性がないのに気付いた。
座ったままこいでも十分加速するのだ。重力のいかに偉大なことか。
緩やかな空気は、やがて髪をなびかせ学生服のすそをはためかせる位の強さになったが心地よさは全く変わらない。
それどころか、川面を渡り河川敷の草原を通った空気は若葉の香りを運んできていて、実に気持ち良い。
下り坂は思いのほか急で、こがなくても減速しない状態になった。
座っているだけで少しずつ加速さえする。
僕は、自転車の動きはこの重力の力に任せ、どっかりとサドルに座り込み、ペダルをこぐのをやめた。
川の方を見てみると、はるかかなたには赤色の鉄橋がかかっている。
川の色は空の色を反射してか、本来深緑色なのだろうが薄い青色になっており、赤い鉄橋とのコントラストがとても美しい。




