遺伝
スマホを胸ポケットにしまい、草の上にひっくり返っている弁当の救済に取り掛かった。
まだ腹の虫は納まっていないのでなるべく食べれる範囲を大きくしたい。
弁当がさかさまに置かれた草と地面との間にそおっと手を入れて、えいっと元に戻す。
幸い、濃密な草のおかげで、ほとんど土などはつかず、なんとか全部賞味することができるようだ。
三個目のから揚げの草切れを払いながら、さっきの母の言葉を考えた。
遺伝?遺伝?もしかして・・・・
僕は、疑問を解消するために母に電話をしたが、誰も電話にでなかった。
仕方がないので、まずは救済した弁当を食べ尽くし、泊まれる場所を見つけることにした。
道路の左側のはるかかなたを一両編成の汽車が走っていたので、その線路を頼りに移動すればなにかあるかもしれない。
そう思った僕は、愛車にまたがり再び走り出した。
時刻は12:00を過ぎている。
まだ暖いが、北海道の夜は寒そうだ。陽の高いうちに泊まれる場所を見つけたいものだ。
道はまだ若干下り坂になっていて、加速するのは容易い。
やがてまた緩い上り坂になったがそんなにきつくなく、はるか遠くに見えた線路は、坂を登りきった頂きあたりに敷設されていた。
道路と線路は垂直に交差しており、小さな踏切があった。
踏み切り付近から道路の先を見通すと、小さな町が見えた。
旅館や民宿くらいはありそうだ。
ほっと胸をなでおろすと、さっきの疑問がまたふつふつを沸いてきた。
再び電話をしてみる。
「もしもし、あっくん?さっきは出れなくてごめんね。そっちに行く準備をしてたものだから。泊まる場所は見つかった?」
なにやら声が弾んでいる。思いがけない旅行気分なのか。
「なんで僕が北海道にいることを疑わないの?」
「・・・」
「もしかして、母さんも同じようなことがあったんじゃない?」




