母からの電話
「本当に北海道なの・・?」
「あ、そうだ。僕のスマホを、母さんのスマホででチェックすることができるよ」
スマホとは便利なものである。ただし、母がGPS機能を使いこなせるかどうかは判らない。
「あっくん、お金いくら持ってんの?」
突然、母の口調からとげが消え、母親らしい語り口になった。
しかも、息子が突然北海道に行ったことに対して疑問を持たないらしい。GPSでの場所確認ができるほど時間がたっていないはずなのに。
「1000円しか持ってないよ」
基本的に高校生は買い食いする程度のお金しか持っていない。
僕は、買い食いはしないのだが、鞄のポケットにいつも1000円だけ入れている。それが今の所持金全額である。
「ふう、・・・そこは、北海道のなんていう町?どんな場所なの?」
偉大な母である。不条理なことを言われても自分の息子を信じ切っているのだ。
「母さん、僕が北海道にいるって本当に信じたの?」
「・・ん、まあね。しょがないわね。遺伝かしら」
遺伝?偉大さが遺伝するのか?母の母も偉大だったのか?なんか僕の考え方のピントがずれているような気がするが。
「とにかく、帰ってくる方法を考えなきゃいけないわね。近くに旅館とかホテルとかはないの?」
「草原のど真ん中で何もない」
「そっか、今から迎えにいくけど、今日中には着かないかもしれないから、泊まれる場所を見つけておいてね。見つかったらまた電話ちょうだい」
そう言うと、母はあっさり電話を切った。
息子が自転車で約800キロメートル移動したのに、そんなに取り乱しもせず淡々と後処理をしようとしている。あれ?何かへんだなぁ。




