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31 目、目がァアアアア

 

 二度寝、三度寝と繰り返し、ようやく目を覚ました。窓から差し込んでくる日射しはすでに明るい。


 俺の腕に抱きついて気持ち良さそうに眠っているルゥナを容赦なく引っぺがし、ベッドから抜け出す。


 カーテンを開けると、すでに太陽は高く昇っていた。


 昨日は日が落ちる前に街に到着し、シルバーウルフ討伐依頼の報告を終えてすぐに宿に戻ったので、半日以上も眠ってしまったことになる。


 昨日は散々な目にあったけど、無事に帰ってこれたんだなぁ……と安堵しながら、俺はゆっくりと伸びをした。


 外からは子供たちの賑やかな声が聞こえるが、宿には人の気配がほとんどなく、静けさが漂っていた。それが余計に心地よい。


 昼間は冒険者のほとんどが活動しているので、宿屋は閑散としているのだ。


「め、目がぁ……。目がー……」


 後ろの方から情けない悲鳴が上がる。


 振り向くと、ルゥナが両手で顔を覆ってゴロンゴロンとのたうち回っていた。


 どうやら、朝日を浴びて目覚めたらしい。


「ルゥナ、お前……。となりの部屋を借りてなかったか」


 俺の声に反応して、ルゥナの指の間からチラッと視線が覗く。


 そして、うめき声を上げながらまたすぐに手で顔を覆ってしまった。


「……そう、だけど…………?」


「じゃあ、なんで俺の部屋に居るんだよ」


「だって、ここが一番居心地いいもん……」


 甘えたような声で返事をしながらルゥナは起き上がろうゴソゴソするが、やがて諦めたのか、力尽きたようにゴロンとベッドに転がった。


 そのまま枕を抱えてうずくまってしまう。


「ねむい……」


 こいつ、なんというか、自由だなぁ。


 ルゥナと一緒にもう少しゆっくりするのもいいが、しばらく顔を出していないのでシェイラが心配しているだろう。


「俺は用事があるから外に出る。夕方には宿に戻るわ」


「ん、わかった。依頼?」


「いや今日は受けない、体を休めたいからな。お世話になっている錬金術師に顔を見せてくる」


 借りのポーション代を払わないと。あと、お礼も言いたい。


「私も、いく」


「え? 別に構わないけど」


「じゃあ、着替えるね」


 服の裾に手をかけるルゥナを見て、慌てて部屋を出る。


 あれ、ここ俺が借りた部屋だよな。




 昨日露店で買った安売りの服に着替えてから宿を出て、ルゥナと雑談しながら歩いていると、あっという間に目的地に着いた。


「久しぶり、つっても二日くらいしか経ってないか」


 扉を開けて中に入ると、カウンターの奥に座るシェイラがこちらを振り向いて嬉しそうに微笑んだ。


「うん、そうだね。元気そうでよか……って、その頰の傷は!?」


「ああ、これはちょっとな。地面を転がった時に擦れただけで。まあ大丈夫だから安心してくれ」


 俺の顔を見た途端、焦った様子で立ち上がるシェイラに、軽く手を振って落ち着かせる。


「よかった。それなら、いいけどさ」


 彼女は不安そうな表情を浮かべながらも椅子に座ってくれた。


「あ、あとこれ。ツケ払いというか、ポーションいくつか持たせてくれただろ。遅くなって、すまない」


 カウンターに代金の入った袋を置くと、ジト目を向けられる。


「そういうつもりで、渡したわけじゃなかったんだけどなぁ〜……」


「わかっている。でも、助かったんだ。本当にありがとう」


 シェイラはため息を吐いて、頬杖をつく。


 そして、仕方がないといった風に苦笑してみせた。


「…………まあ、その。君が無事だったのが何よりだよ。……おかえり」


 だんだん照れくさくなったのか、最後はそっぽを向いて小声で呟くシェイラに思わず笑ってしまう。


「ああ、ただいま。色々あったけど、なんとか生きて帰って来られたよ」


 そんな彼女の様子を眺めていると、後ろから袖を引っ張られた。


「りーちゃん。私のこと忘れてる」


 ルゥナは不満げに唇を尖らせていた。シェイラはその姿を見て目を丸くする。


「えっと……君は? すごく可愛いねっ! 妹ちゃんかな?」


 お菓子もあるよ〜、とシェイラが手招きするとルゥナは眉を寄せた。


「妹はいない。こいつは同じ冒険者で――」


「私は、ルゥナ。りーちゃんとは一夜を過ごした」


 俺の言葉を遮るようにルゥナが声を上げる。


 シェイラの表情がぴしりと固まった。



 ちょっと、ルゥナさん?



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