14 捨てられないもの
「古い駅を利用した店舗か、そういう方法もあるの?」
「ありますね、古くて保存状態が良ければ利用価値はあります」
ヨーロッパの観光地にはよくある。日本でも遊園地やテーマパークにある建物は、こういう古いものを模倣しているのが多いしね。
「言われてみればそうよね」
だいたいこの街なんか街全体がテーマパークのショッピングモールみたいなものだ。パークがないけれど。
「いや、別にパークはいらないのか」
だいたい観光地なんてアトラクションがなくても成り立っている。城や教会や寺院とか、何かその土地に名所的なものがあれば、それを中心にして観光客は集まって来る。ならばこの街はどうだろう。私は振り返って通ってきた街を見た。
壁があるだけだった。城や教会どころか塔一つなかった。
「なにもないわね」私が街の方を眺めていることの意味を彼女は気づいたようだ。
「ないわけじゃないのよ、教会だってちゃんとあるのよ、ステンドグラスはどんな絵本より美しいしね。でもちょっとこじんまりしてるのよ」
「そうなんですか」私は過去に訪れた際にも教会の存在に気がついてはいなかった。
「なんかねえ自分で言うのもおかしいけれど地味なのよねこの街は。私は好きなんだけれど」生まれ育ったという贔屓目もあるのだろうが、ロンドンやパリなども良いけれどこの街は良いところだと思うのだそうだ。
今はまだ良い、老人だけではなく若者もまだいる。でも十年先二十年先はどうだろう。とりたてて産業もない、農業は近隣の消費をまかなうぐらい。大きいルートからはずれていて、おこぼれのような観光客が訪れるぐらい。この街に明るい未来は見えてこない。
「リチャードもね、あの子もあの子なりになんとかしようとは思ってるのよ。あなたにしたことも動機はね、なにか新しいことが出来ないかなというところから出てきたのだと思うの」やり方は根本的に間違っているとは思うけれど。
「だいたい家の一族って貧乏性なのよ、ものは捨てられないし、手に入れたものは延々と使い続けるし」
彼女は少しヒートしてきた。
「いやそれは美徳でしょう」
「何言ってるのよ、見たでしょうあの家にだって一杯あったでしょう古いものが」
だんだん早口になってきた。
「私は楽しかったですよ」
「みんながあなたみたいな人ばかりだったら良かったのに」残念ながら私は少数派だと思う。
「あなただってねこれを見たらさすがに呆れると思うから」
彼女は私についてくるように言うと駅舎の裏手にむかって歩いていった。後ろ姿は何かに腹を立てているようで、私は少し距離を取ってあとからついていった。裏手には駅舎に隠れるように倉庫があった。
「これもね捨てるに捨てられないの」
扉を開けて中に入ると機関車があった。日本の機関車と違ってカラフルな塗装だ。リアル・トーマスだな。
三十年前までこれが走っていたらしい。




