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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第七十四章:関羽は曹操軍の本陣を突破し、敵将の旗を奪った

敵の中央軍が乱れた夜が明けると、関羽は静かに馬の鞍を確かめていた。

張飛が「今日は俺が先だ」と言うと、関羽は「お前には別の仕事がある」とだけ返した。

孔明の策では、関羽が敵の本陣へ迫り、張飛が援軍を足止めする。

龐統は敵将が関羽を恐れるあまり、張飛の位置を見失うと読んでいた。

俺は二人の隊の朝食を別々の時刻に用意した。

関羽の兵は軽装だった。

俺が作らせた補助具は、槍の穂先を覆って運ぶ保護具と、負傷者を引き戻すための丈夫な担架。

戦場で兵器が強くなっても、兵士の体は鉄にならない。

関羽は担架を見て「これがあるなら、退く者を置き去りにせずに済む」と言った。

俺はその言葉を忘れないように記録紙の端へ書いた。

龐統は敵将に、張飛が南で大規模な火薬攻撃を準備しているという情報を掴ませた。

敵将は南へ予備兵を送った。

だが南で鳴ったのは遠い威嚇の音だけだった。

孔明は本当の攻勢を北から始める。

関羽は敵が手薄にした道を進み、旗の林へ飛び込んだ。

戦場に赤い旗が翻った瞬間、敵の中央は指揮官が倒れたと思い込んだ。

関羽の隊の帰還を待つあいだ、炊事係の少年が何度も門を見に行った。

兄がその隊にいるのだという。

俺は少年に椀を一つ余分に温めさせた。

「帰ってきたら、すぐ食べられるようにしておこう」


やがて兄が泥だらけで現れ、少年は椀を落としそうになった。

勝利の報告書には記されない小さな再会だった。

俺は、こんな場面を増やすために兵器を改良しているのだと思った。

敵の本陣から奪った軍旗は、雨を吸って重かった。

関羽の部下が誇らしげに掲げると、別の兵が片腕を押さえて倒れた。

興奮のあまり傷に気づかなかったらしい。

俺は旗より先に包帯を求めた。

関羽は旗手に「勝利を見せるのは後だ」と命じ、負傷兵を自ら馬に乗せる。

帰営後、折れた槍を並べると、同じ箇所で三本が割れていた。

工房の職人は木材の乾燥不足を指摘する。

俺は生産数を減らしてでも乾燥期間を守ると決めた。

武勇を称える宴の席で、関羽は俺に杯を向けた。

「次の戦では、あの三本を折らせぬよう頼む」

それが彼なりの礼だった。

「これを見てください」と俺は折れた槍の柄を示した。

関羽の本陣突破で使うつもりだったが、敵陣から戻った騎兵には別の使い道があった。

俺が驚くと、相手は当然のことのように手順を説明した。

関羽が持ち帰った敵将の旗には、泥と血がこびりついていた。

勝利を叫ぶ兵の輪を離れ、関羽は旗の裏に縫われた小さな守り袋を見つめた。

「敵にも帰りを待つ者がいる」

俺は奪った旗を戦利品として飾る案を取り下げた。

敵将は生きていた。

しかし本陣を守る兵は、将軍の命令より先に関羽の姿を見て動揺した。

関羽は敵将へ降伏を勧め、逃げようとした側近を捕らえた。

張飛は援軍を阻み、味方の退路を守り切った。

孔明の火薬戦術と龐統の誘導が、二人の武将の働きを最大限に引き出した。

俺は遠くで倒れる旗を見て、勝利の形が変わったことを知った。


夕刻、関羽は奪った旗を劉備へ差し出した。

「兄者、勝ちました」

劉備は旗より先に関羽の手の傷を見た。

「よく帰った」

張飛は不満げに「俺も働いたぞ」と言い、全員が笑った。

俺は負傷者に温かい汁を配り、食べられない者には少量ずつ与えるよう炊事係に伝えた。

大勝利の夜も、俺の仕事は誰かの明日をつなぐことだった。

関羽の帰還後、俺は工房へ戻って防具の修理記録を調べた。

傷が集中している場所を見れば、戦場で兵がどのような動きをしたかが分かる。

職人の親方は「剣の傷にも癖がある」と教えてくれた。

俺はその知識を取り入れ、補強の位置を変える案を考えた。

新しい兵器を一つ作るより、今ある装備を少し長く使えるようにする方が、多くの兵を助けることもある。

張飛は関羽の手柄を悔しがるふりをしていたが、夜になると負傷した兵のために薪を運んでいた。

俺が見つけると「誰にも言うな」と顔をしかめた。

夜が明けると、炊事係たちは薪の山を見て驚き、俺は何も知らない顔をした。

孔明はすべて察したように微笑み、龐統は「豪傑にも隠したい手柄があるのですな」と小声で囁いた。

俺は翌日、関羽の突撃について現場の者から話を聞いた。

作戦図の上では整って見えたことも、実際には小さな不都合がいくつもあった。

誰かが道を間違え、誰かが荷を落とし、誰かが食事を後回しにしていた。

俺は一人ずつ理由を尋ね、怒る前に仕組みを確かめた。

失敗した人間を叱れば、その日は静かになる。

だが次から失敗が報告されなくなる。

それでは軍は強くならない。

兵の一人が「こんな細かい話まで聞くんですか」と不思議そうにした。

俺は答えた。

「細かいことが積み重なって、最後に大きな差になるんだ」

関羽が奪った本陣の記録台帳、兵の人数だけでなく徴発された村の名前が記されていた。

俺は戦果を数える係に頼み、その記録帳を焼かずに残してもらった。

「敵の記録を何に使う」と問われ、俺は「返す相手を探すためです」と答えた。

関羽は一度だけ頷き、護衛を一人付けた。

軍旗を奪うより難しい仕事が、勝利のあとに残っていた。

奪った旗を囲んで兵が騒ぐ一方、工房の職人は折れた槍の柄を見て唸っていた。

「ここだけ新しくしても、次は別の所が割れる」

関羽はそれを聞くと、勝利の宴より先に槍を預けた。

俺は継ぎ目の寸法を帳面に描き、壊れ方を記録した。

戦の英雄が道具の寿命を気にかける姿が、妙に心強かった。

日が傾くころ、敵陣から戻った騎兵が折れた槍の柄を運んできた。

関羽の本陣突破が終わったあとも仕事は残る。

俺たちは互いに手を貸し、壊れたものとまだ使えるものを分けた。

関羽が奪った旗を前に、兵たちは歓声を上げた。

だが当の関羽は馬から降り、折れた槍を抱える若者を呼び止めた。

「なぜ退かなかった」

若者は俯き、「後ろの仲間が倒れていたからです」と答えた。

関羽はしばらく黙り、「ならば次は二人で戻れ」と言った。

俺は破損した槍の継ぎ目を見せてもらい、工房に補強方法を相談した。

勝った後の点検は地味だ。

しかし敵将の旗より、次に折れない一本の槍が兵の命を守る。

関羽は旗を劉備へ届ける前に、若者の肩を一度だけ叩いた。

この日の夜が明けると、俺は現場の報告を携えて炊事場へ向かった。

食事を運ぶ兵が「道が変わるたび、鍋の置き場所まで変わる」とぼやいた。

そこで移動する隊ごとに荷車の番号を決め、誰が水を運び、誰が火を起こすかを札に書いた。

小さな手順だが、初めて任務についた兵でも迷わず動けた。

俺は兵に礼を言い、札を雨に強い板へ書き直した。

戦場で命令を待つ時間を少しでも減らすためだった。

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