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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第七十一章:孔明は二万の兵で十万を迎え撃つと宣言した

将たちの協議で孔明が「動かす兵は二万」と告げた瞬間、張飛が椅子を鳴らした。

「十万相手に二万だと?」

孔明は静かに答えた。

「五倍の敵を五倍の力で受ける必要はありません。敵が同時に戦える場所を減らせばよい」

龐統は卓上の木片を二列に分けた。

「十万が一つの軍に見えるのは、後方の将軍だけです」

俺は二人の言葉を聞きながら、二万の兵が何日食えるかを計算した。

曹操軍は三つの軍団に分かれて進んでいた。

中央は旗が多く、左右は食料車を抱えている。

孔明は中央を攻めず、左翼が中央へ助けを求める状況を作ろうとした。

龐統は敵の斥候が見つけやすい場所に、わざと小さな炊事場を設けた。

「敵はこれを本陣の端だと思うでしょう」

俺は眉をひそめた。

「食料を囮にするんですか」

龐統は首を振った。

「空の釜だけです。腹を満たす場所は別にあります」

俺は移動式の炊事車を改良した。

車輪を外せば竈の台になり、雨除けの布を広げれば調理場を作れる。

粟と豆をあらかじめ量って袋に詰め、どの班でも同じ濃さの粥を炊けるようにした。

さらに湯を運ぶ蓋付きの容器を試し、夜営で冷えた兵が食事を待つ時間を減らした。

職人は「戦の道具が鍋ばかりだ」と呆れたが、俺は笑った。

「鍋が動けば、軍も動く」

夜の見回りで、俺は兵の靴底を確かめた。

破れたまま歩けば、どれほど食べても足が先に壊れる。

革職人に頼んで補修用の小片を揃え、班長が毎晩点検することにした。

孔明は「小さな欠けを放置すれば、陣形はそこから崩れます」と言った。

龐統は「靴まで軍略に入るとは」と笑う。

俺も笑ったが、夜が明けると、足を引きずっていた兵が普通に歩く姿を見て、胸が軽くなった。

出陣の朝、若い騎兵が油紙包みを地面に落とした。

関羽は拾って渡すと、「急ぐ時ほど手順を省くな」と静かに言った。

騎兵は「敵が十万もいるのに、こんな小さな包みを」と口を尖らせる。

関羽は自分の鞍の留め具を示した。

「この金具が外れれば、わしも落馬する。大きな敵ほど小さな失敗で負ける」

俺はその言葉を聞き、出発前に鞍、飲み水、食料を三人一組で確かめるよう頼んだ。

点検に時間がかかり、龐統がわざと大げさにため息をついた。

「二万の兵を待たせるとは、恐ろしい策士だ」

だが一刻後、ぬかるみに脚を取られた馬を助けたのは、予備の綱を持っていたその三人組だった。

荷車を開けた炊事兵が、携行食の袋を指で数え直した。

「二十袋足りません」

斥候は敵の動きを追っていたが、荷の積み替えまでは見ていない。

俺は責任を押しつけず、袋を運んだ者を集めた。

荷車の底から破れた袋が見つかり、濡れた食料を捨てるか乾かすかで炊事兵たちの意見が割れた。

張飛は二万という数字に納得せず、訓練場で兵を二列に並べて見せた。

「これで十万を止めるのか」

孔明は兵の間に水桶を置いた。

「この狭い道なら、敵は一度に何人通れますか」

張飛は桶を蹴りそうになり、思いとどまった。

「先にそう言え」

兵たちが笑った。

敵の左翼が囮の炊事場へ突進したとき、そこにいたのは空の釜と踏み固めた土だけだった。

背後の道は細く、追随する兵が詰まる。

孔明の旗が上がると、既存の火薬兵器が遠方で轟音を響かせ、敵は後続を待たずに身を伏せた。

そこへ関羽が横合いから現れ、敵の旗手を包囲した。

龐統の読み通り、左翼の将は中央へ救援を求め、曹操軍全体の歩調が乱れた。

戦が終わると張飛は孔明に言った。

「二万で十分というのは本当だったな」

孔明は笑わなかった。

「二万だからこそ、無駄に失えません」

俺は傷兵の数を記録し、炊事車を負傷者の集まる場所へ移した。

曹操の十万はなお健在だ。

だが二万の兵が一つの意志で動く姿を見て、俺は数の差がそのまま勝敗になるわけではないと実感した。


翌日、俺は各班の炊事係を集めた。

前線の兵が同じ量を食べても、荷を引く兵と馬を世話する兵では疲れ方が違う。

そこで仕事と体調に応じた追加の配給を、班長の判断だけに任せず記録することにした。

公平とは全員を同じにすることではない。

必要な人へ必要なものが届くことだ。

若い炊事係が「数字ばかりだと嫌われませんか」と尋ねた。

俺は頷いた。

「だから最後は顔を見る。記録は人を見なくて済む道具じゃない」

孔明は俺の話を聞いて、「二万の兵を動かすより、二万の不満を収める方が難しいでしょう」と言った。

龐統は横から「その不満を収める人間がいれば、我々は安心して奇策を使えます」と口を挟んだ。

俺は二人に言い返した。

「奇策を考える前に、食事の時間を教えてください」

孔明は真面目な顔で時刻を答え、龐統は腹を抱えて笑った。

出陣を待つ騎兵の一人が、馬の口元を気にしていた。

昨日から餌を残しているという。

俺が飼料を調べると、濡れた袋の底に傷んだ豆が混じっていた。

関羽はその馬を後方へ下げ、予備馬を回した。

「一騎を惜しんで一隊を危うくするな」

俺は飼料袋にも日付と点検印を付けることにした。

兵糧だけでなく馬の食事もまた、戦場へ届く命令の一部だった。

俺は翌日、二万の兵の行軍について現場の者から話を聞いた。

作戦図の上では整って見えたことも、実際には小さな不都合がいくつもあった。

誰かが道を間違え、誰かが荷を落とし、誰かが食事を後回しにしていた。

俺は一人ずつ理由を尋ね、怒る前に仕組みを確かめた。

失敗した人間を叱れば、その日は静かになる。

だが次から失敗が報告されなくなる。

それでは軍は強くならない。

兵の一人が「こんな細かい話まで聞くんですか」と不思議そうにした。

俺は答えた。

「細かいことが積み重なって、最後に大きな差になるんだ」

俺は携行食の袋を手に取り、退路を確かめる斥候のところへ歩いた。

「二万の兵の布陣の間、何が一番困った?」と聞くと、答えは将たちの協議で想像したものとは違っていた。

出陣前、騎兵の手袋に団子が貼りついた。

俺は油紙の包み方を直し、馬上でも片手で開けられるようにした。

関羽は試しに鞍の上で一つ食べ、「これなら手綱を離さずに済む」と頷いた。

二万の兵に必要なのは勇ましい言葉より、こうした小さな確かさだった。

二万の出陣を前に、俺は関羽の騎兵へ渡す携行食を変えた。

乾燥麦だけでは喉を詰まらせるという報告があり、豆の粉を混ぜた柔らかい団子を試す。

騎兵の一人は「走りながら食える」と喜んだが、別の兵は「手袋にくっつく」と眉をひそめた。

二人の意見を聞き、油紙で一つずつ包むことにした。

関羽は試作品を懐に入れ、「腹を満たせば、馬の脚まで軽くなる気がする」と珍しく笑った。

遠くでは曹操軍の旗が増え続けていた。

俺たちは旗を数えるのをやめ、まず二万の兵が迷わず動けるよう、食事と道具の不足を一つずつ消していった。

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