↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
67/120

第六十七章:関羽と張飛の同時攻撃で、曹操軍七万が崩壊した

七万の敵が二つの街道を塞いだ。

関羽が東、張飛が西へ進めば、どちらかが敵の主力とぶつかる。

孔明は現場から届いた報告を聞いて、二人に別々の命令を出した。

関羽には「正午まで待つこと」

張飛には「正午より先に騒ぐこと」

「俺が囮か!」と張飛は叫んだ。

龐統は首を振った。

「敵がそう思えば、囮ではなくなります」

俺にはその言葉がさっぱり分からなかった。

分かったのは、二つの部隊へ同時に食料を届けるのが、ひどく難しいということだけだった。

西の道は雨で崩れ、荷車が通れない。

俺は車輪の幅を揃えた予備部品を配り、現地で軸を交換できるようにした。

職人の親方は「同じ寸法に揃える方が、作るより骨が折れる」とぼやいた。

「でも、壊れるたびに全部作り直すより早いです」

「言うだけは簡単だな」

親方はそう言いながら、若い職人に型板を渡した。

食料は軽くする必要があった。

乾燥した豆と麦飯を小袋に分け、兵が一食分ずつ持てるようにする。

関羽の隊には夜間の灯火を遮る覆いも配った。

夜、張飛はわざと西の丘に多くの松明を灯した。

敵はそこに主力が集まっていると考え、兵を西へ寄せた。

関羽の東側には薄い守備しか残らないはずだった。

しかし敵将は慎重で、東の道にも騎兵を伏せていた。

「読まれています」と斥候が報告した。

孔明は少し考え、関羽への伝令を書き直した。

「待機を延ばす。先に張飛将軍を動かす」

龐統は笑った。

「敵将は慎重すぎる。慎重な者には、慎重であることを後悔させましょう」

夜明け、張飛が西の丘から駆け下りた。

敵は主力を迎え撃つつもりで槍を揃えたが、張飛の兵は正面衝突を避け、敵の補給車へ向かった。

敵将は騎兵を西へ送った。

そこへ張飛が突然引き返し、別の谷へ消えた。

追った騎兵は狭い道に入り、身動きが取れなくなった。

「今度は追うな!」と敵将が命じたときには、東の関羽が動き始めていた。

関羽の隊は夜のうちに上流へ渡り、東街道の後方に回っていた。

松明を覆う布のおかげで、遠くから光は見えない。

朝霧の中で青龍偃月刀が上がると、兵たちは一斉に道を塞いだ。

敵将は西へも東へも命令を出そうとしたが、伝令が戻らない。

張飛の動きに釣られて、指揮所が移動していたのだ。

「敵の頭が動けば、手足は遅れる」と孔明は言った。

関羽は騎兵を率いて敵の中央へ突入し、張飛は西から戻って敵の側面を叩いた。

二つの攻撃は偶然同時になったのではない。

張飛が敵を動かし、関羽が逃げ道を決めていた。

七万の敵軍を前に、張飛は珍しく無口だった。

関羽がその横顔を見て言う。

「怖いか」

「腹が立つんだ。あいつら、村の井戸を塞いでやがる」

「ならば井戸を取り戻す。敵将の首はその後だ」

二人の意見が一致したのを見て、俺は少し驚いた。

以前の張飛なら、敵の大将を目指して突進していただろう。

作戦の前夜、補給車の車軸が折れた。

荷車には負傷者用の布と水袋が積まれている。

代わりの車を出せば兵糧が遅れる。

俺は職人に頼み、共通の寸法で作っていた予備の車軸を持ってきた。

「この長さなら合うはずです」

「はず、では困る」職人が言う。

夜明けまでに試走を二度行った。

二度目で車輪の留め具が緩み、交換する。

失敗を見つけられたのは幸運だった。

戦場では関羽が東の街道を押さえ、張飛が西の丘から下った。

敵は関羽へ兵を寄せたが、張飛は本陣へ向かわず、井戸を守る部隊を先に破った。

井戸を確保すると、兵に水を汲ませて民へ渡した。

「将軍、追えば敵将を討てます!」

部下が叫ぶ。

張飛は一瞬だけ振り返ったが、井戸のそばで倒れている老人を見て首を振った。

「関羽がいる。俺たちはここを守る」

関羽は敵の退路を塞ぎ、武器を捨てた者を通した。

敵軍は連携を失い、七万という数を活かせないまま崩れた。

戦後、張飛は俺に言った。

「昔なら追った。だが井戸を取られりゃ、勝っても村が死ぬ」

俺は頷いた。

兵器の改良より難しいことがある。

強い将軍が、何を守るために強さを使うかを変えることだ。

七万の敵は、七万人が一度に倒れたわけではなかった。

命令が届かなくなり、隊ごとに退却と降伏が始まった。

指揮官が兵を集めようとしても、荷車が道を塞ぎ、互いの旗が見えない。

俺は救護所で、味方と敵の負傷者を分けずに運ばせた。

新しい吊り床を取り付けた荷車は、今度も役に立った。

趙雲は逃げる敵兵の中に村人が混じっているのを見つけ、騎兵を止めた。

戦場で人を見分けるのは、剣を振るうより難しいことがある。


夕刻、関羽と張飛が並んで帰ってきた。

張飛は大声で「俺が敵を走らせた!」と言い、関羽は「私は止めただけだ」と答えた。

「兄者、それでは俺ばかり働いたようではないか」

「そう聞こえるなら、次も頼む」

兵たちが笑った。

俺は二人に温かい汁を渡した。

張飛は一口飲んでから、ふと真面目な顔をした。

「敵が逃げた道に、村はなかったか」

「趙雲様が確認しています」

「ならよい」

孔明は勝利の報告書を閉じた。

「七万という数は大きい。しかし、明日も同じ策で勝てるとは思わないことです」

龐統は頷く。

「曹操殿は、我らが二人を同時に動かしたことを学ぶでしょう」

俺は空になった食料袋を数えた。

二人の豪傑を同時に走らせるには、二つの腹を同時に満たさなければならない。

そんな当たり前のことが、今日の勝利を支えていた。

関羽と張飛が帰還したとき、兵の間では七万を破った話ばかりが広がっていた。

だが二人は勝利の宴に顔を出さず、補給車の前で言い争っていた。

「お前の隊が道を塞いだ」と関羽。

「兄者の馬が先に入ったんだろう」と張飛。

俺が間に入って確かめると、双方の荷車が同じ細道へ向かったため、負傷者を運ぶ車が通れなくなったのだ。

戦には勝ったが、帰還の道で二刻も失っていた。

「次からは旗の色で進路を分けましょう」と俺は提案した。

関羽の隊は青、張飛の隊は赤。

だが夕暮れには色が見えにくい。

趙雲が言った。

「旗だけでなく、結び目の数も変えればよいのでは」

なるほど。

夜でも手で触れれば分かる。

俺たちは縄の結び目を一つと二つに分け、荷車の前後に付けた。

試しに暗い倉で確かめると、新兵でも取り違えなかった。

「戦場では息が合っていたのに、帰り道で喧嘩か」と龐統が笑う。

張飛は鼻を鳴らした。

「帰るまでが戦だってことだな」

関羽も珍しく笑った。

「その通りだ」

夜が明けると、俺は二人の隊の兵へ温かい汁を配った。

兵は勝利の話より、帰りに仲間を置き去りにしなかったことを誇らしげに話した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。