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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第百十三章:張飛は敵の船団を追い詰め、魚を配った

張飛が江東の船団を追ったと聞いたとき、俺は真っ先に船の数を数えた。

「沈めた船は?」

「ゼロだ!」

得意げな張飛の返事に、俺は思わず顔を上げた。

敵の船を岸へ追い込み、逃げ道を塞いで降伏させたという。

張飛の突撃はいつも激しいが、今回は龐統から「船を壊すな」と命じられていた。

「壊したらどうなる?」と張飛が聞いた。

「明日から魚を運ぶ船が減る」

龐統の返答に、張飛は鼻を鳴らしていたらしい。

降伏した船団には、徴発された漁師が多かった。

船の上にいた若者は、槍を持つ手に漕ぎだこの跡がある。

俺は彼らの名を聞き、兵と漁師を分けて記録した。

漁師の船は返す。

軍用に改造された船は、修理のうえで後日返す。

張飛は面倒そうにしていたが、約束の印を一つずつ押してくれた。

その日の炊事場は騒がしかった。

漁師が礼に魚を持ってきたのだ。

塩を振って焼くだけでも旨いが、大勢に分けるには骨が問題になる。

俺は骨の多い魚を煮て出汁を取り、身をほぐして粥に混ぜる方法を試した。

「魚を粥に入れるのか」と料理人が驚いた。

「子供や怪我人にも食べやすいようにしたいんです」

最初は生臭かった。

生姜を少し足し、鍋の火を強めすぎないようにすると、匂いが和らいだ。

試食した漁師の老人が「川の味がする」と笑った。

張飛は大椀を三杯平らげ、四杯目を求めた。

俺は鍋を見て首を振った。

「これは負傷者の分です」

「俺も戦って疲れたぞ!」

「元気に怒鳴れるなら後回しです」

関羽が横で声を殺して笑った。

張飛は不満げだったが、結局、負傷者の椀を運ぶのを手伝った。

夕方、江東の村から老人が来た。

息子が徴発されて戻らないという。

張飛は捕虜名簿を取り寄せ、自分で探した。

若い漁師が父を見つけて駆け出すと、張飛は背を向けた。

「兄者に報告するぞ。船を取るより、船を返す方が難しいとな」

俺はその言葉を聞き、張飛の見方が少し変わった。

彼は乱暴だ。

けれど乱暴さを向ける先を選べるなら、それは強さになる。

夜、孔明は敵船の動きを見て、孫権が大きな決戦を準備していると告げた。

龐統は捕虜の話から、江東の兵にも戦への迷いが広がっていると読んだ。

俺は魚粥の作り方を紙に書き残した。

次の戦がいつ始まるか分からない。

それでも明日の朝、皆に食べさせるものは決めておきたかった。

魚を煮る鍋のそばで、降伏した漁師の一人が口を開いた。

「船を返すと言ったな。だが網は軍に取られたままだ。船だけあっても食えない」

張飛の眉が跳ねた。

「網まで俺に探せというのか」

「船を沈めなかった将軍なら、網も見つけられるだろう」

俺が口を挟む前に、張飛は豪快に笑った。

「言うじゃねえか。よし、どこへ運ばれたか話せ」

夜が明けると、倉の隅から湿った網が出てきた。

半分は破れていた。

黄忠が漁師の老人と並んで結び目を直し、魏延が乾燥台を組んだ。

張飛は網を持ち上げて「これで戦果が増えた」と言った。

魚が食卓に戻る。

それも確かに勝利だった。

魚粥を食べた負傷兵の一人が、箸を止めた。

「俺の村じゃ、魚は祝いの日だけだった」

江東の川には魚が多いが、遠い村へ運ぶには傷みが早い。

俺は漁師と相談し、塩を使って水分を抜く方法を改めて試した。

塩は高価で、使いすぎれば民の食卓から消える。

少量で済むように魚を開き、風の通る棚に並べる。

雨が降れば台無しになるので、屋根も必要だった。

漁師の女が「それなら竹をこう組む」と教えてくれた。

俺はその手際を見て、知らないことを教わる楽しさを思い出した。

乾いた魚を一切れ炙ると、香りが炊事場に広がった。

張飛がまた顔を出し、俺たちは笑った。

返された漁船が川へ出る日、張飛は岸で腕を組んでいた。

船主が礼を言うと、「礼なら魚で払え」と笑う。

俺が睨むと「冗談だ!」と慌てた。

漁師たちは笑い、張飛にも小さな干し魚を渡した。

彼は大事そうに懐へしまった。

張飛が魚を三匹平らげ、四匹目へ手を伸ばしたところで料理番が鍋を引いた。

「将軍、残りは漁師の家族の分です」「む、そうか」

張飛は箸を引っ込め、代わりに魚の骨をきれいに並べ始めた。

孔明が「戦場でもそれほど整列させてください」と言うと、炊事場が笑いに包まれた。

漁師の長は、兵に魚を売るのを怖がっていた。

前に来た軍は代金を払わなかったという。

俺は張飛に銭の入った袋を渡し、量りを使って買い取ってもらった。

張飛は不器用に秤を持ち、「重いほど旨いとは限らん」と言った。

漁師の長は初めて笑い、次の朝の漁に案内してくれた。

張飛が配った魚の煮つけは、思いのほか評判になった。

ただし張飛自身が味見を繰り返し、最後の大鍋が半分になった。

俺が呆れていると、漁師の娘が「将軍様、魚は逃げませんよ」と言った。

張飛は真剣に「戦場では逃げる!」と答え、漁師たちは腹を抱えた。

その笑い声を聞きながら、俺は鍋の底に残った骨を集め、出汁にするよう頼んだ。

少ない魚でも皆に温かい汁が届く。

その工夫に、娘は「明日も来ていい?」と尋ねた。

夜が明けると、漁師を確かめるために現場へ出た。

昨日の約束が今日も守られているか、記録上の数字と目の前の景色を比べる。

船の返却のそばには、まだ片づけられていない道具が残っていた。

兵は先へ進みたがったが、俺は手を止めさせた。

「次にここを使う人が困る」

若い兵は不満そうにしながらも、道具を揃え、壊れたものを別にした。

しばらくすると負傷者のことを知る者がやって来て、俺たちのやり方の間違いを教えてくれた。

俺は礼を言い、作業をやり直した。

正しいつもりで進むより、間違いを教えてもらえる方がありがたい。

朝の点検で、焼いた川魚の扱いをめぐって小さな言い争いが起きた。

漁具を失った漁師は張飛の船団追撃の経験から譲らず、別の兵も自分の理屈を持っていた。

両方の手順を実際に試すと、どちらにも弱点が見つかった。

俺は二人の案を組み合わせ、新しい決まりを短く書いた。

俺は張飛の船団追撃の経過を振り返り、焼いた川魚が誰の手から誰の手へ渡ったのかを確認した。

漁具を失った漁師の名前も記録した。

手順を決めた人間だけでなく、実際に働いた人間の声を次の準備に生かすためだ。

川魚の煮つけは旨かったが、長い船旅では傷みやすい。

俺は塩の量を変えた小皿を並べ、船頭たちに味見してもらった。

龐統は濃い味を選び、孔明は薄味を選ぶ。

「飲み水の残量まで計算したのですか」「もちろん」

二人が真顔で言い合うので、張飛が「両方食えばよい」と皿をさらった。


その夜、漁師の娘が張飛に小さな干し魚を差し出した。

「父ちゃんの舟、守ってくれたから」

張飛は急に声を小さくし、「俺が食ったら一口だぞ」と言った。

娘は笑い、「じゃあ、もっと干してくる」と走っていった。

張飛はしばらく魚を手のひらに載せたまま動かなかった。

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