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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第百三章:龐統は曹操の補給軍を戦わずに奪った

龐統は捕虜から聞いた話を地図に書き込んだ。

曹操軍の輸送隊には徴発された農民が多く、兵糧を運ぶ者自身が飢えていた。

彼は彼らを敵として扱わず、帰郷の道を開くことを提案する。

俺は輸送隊の野営地に足を運び、紙の上の計算と現実がどれほど違うかを確かめた。

徴発された運び手は最初、こちらの軍服を見るだけで身を固くした。

戦のたびに兵が来て、物を持っていくのを見てきたのだろう。

俺は兵に槍を下げさせ、まず水を頼んだ。

相手の返事を待つ間、誰も急かさなかった。


やがて少しずつ話を聞かせてもらえた。

どの道が雨でぬかるむか、どこに壊れた橋があるか、村では何が足りないか。

どれも将軍の地図には書かれていないことばかりだ。

俺は聞いたことを全部書き留め、孔明のもとへ持ち帰った。

孔明は一行ずつ読み、「これこそ軍を動かす地図です」と言った。

俺は嬉しいというより、見落とさずに済んだことに安堵した。

俺は捕虜と避難民に出す食事を整えた。

豆の煮汁に青菜を加え、子供には柔らかな麦粥を渡す。

敵軍の輸送夫も同じ列に並べた。

最初は疑っていた男たちが、二杯目の粥を受け取る頃には故郷の話を始めた。

炊事場では返還する麦袋を試すことになった。

料理人は俺の説明を聞いて眉をひそめた。

「言うのは簡単だが、千人分となれば別だぞ」

その通りだった。

少人数でうまくいっても、大鍋では火が均一に回らず、器が足りず、運ぶ途中で冷める。

俺は作り方を押し付けるのをやめ、料理人の手順を横で見た。

鍋を動かす順番、薪を足す時刻、出来上がったものを先に誰へ届けるか。

そこには長年の経験があった。

試作の一回目は失敗し、二回目は塩気が強すぎた。

三回目でようやく兵が笑顔を見せた。

「これなら毎日でも食える」

俺はその言葉を信じすぎず、翌日の残り具合も記録した。

食の改善とは一度うまい物を出すことではなく、続けられる仕組みを作ることだ。

降伏した輸送夫の一人は、故郷の田を荒らされたと話した。

俺は名を尋ね、返還する物資の記録にその村を書き加えた。

すべてを元に戻すことはできない。

それでも、一袋の麦が帰れば次の種まきにつながる。

龐統は「敵の荷を奪うより、敵が荷を運ぶ理由を奪う方が強い」と言った。

龐統は使者を送り、荷車を渡せば輸送夫を全員帰すと告げた。

孔明は関羽の部隊を見える位置に置き、強襲を避ける。

曹操軍の護衛隊長は迷った末、輸送夫を犠牲にする命令を拒んだ。

龐統が敵の補給隊に近づくと聞き、俺は最初、夜襲を想像した。

しかし彼が求めたのは武器ではなく、封をした麦袋と塩だった。

「飢えた者には降伏の言葉より、腐っていない飯の方が届く」

曹操軍の輸送兵は徴発された民夫が多く、三日続けて薄い粥しか食べていないらしい。

俺は炊事係と相談し、こちらの備蓄を削りすぎない量を決めた。

敵の民夫を救うために味方の兵を飢えさせてはならない。

龐統はその数字を聞き、初めて策の規模を小さくした。

夜、輸送隊の頭目が密かに面会を求めた。

「荷を渡せば、俺たちは殺されるのか」

龐統は首を振り、俺に保証書を書かせた。

荷車と馬の数を双方で数え、武器を捨てた者には食事と帰路を与える。

頭目は疑い続けたが、荷車の修理職人が実際に折れた車軸を直すのを見て、ようやく印を押した。

奪ったのは穀物だけではない。

曹操が兵に配るはずだった明日の安心だった。

敵陣では護衛隊長の迷いが問題になっていた。

曹操の将も無能ではない。

こちらが変われば向こうも学ぶし、昨日通じた策が明日も通じるとは限らない。

だから龐統は相手の失敗を笑わなかった。

「人は負ければ考える。考える相手には、同じ答えを見せてはなりません」

孔明も同意した。

二人は意見が一致しているようで、考え始める場所が違う。

孔明は地形と兵の配置から考え、龐統は敵将が何を信じたいかから考える。

俺は二人の議論を聞きながら、必要な物資と運べる時刻だけを答えた。

できないことはできないと言う。

それが軍師の策を現実にする、俺の役目だった。

荷車が百台近くこちらへ渡った。

積まれていたのは穀物だけでなく、鍬、布、傷薬だった。

張飛は「これだけあれば一戦勝ったも同然だ」と笑う。

俺はまず物資の持ち主と徴発元を記録し、奪われた村に返す分を分けた。

龐統が敵の補給軍を戦わずに動かすために使ったのは、俺が食糧庫に付けていた色別の木札だった。

札は本来、豆と麦を取り違えないための目印にすぎない。

だが敵の荷車には似た札が混在し、夜間の積み替えで行き先が分からなくなっていた。

龐統は捕虜の話から混乱を見抜き、偽の命令書ではなく、正しい保管場所を示す札を敵の案内役に渡した。

荷車は自然に劉備軍の管理する道へ流れた。

「兵を欺くより、間違いを一つ直す方が早いこともある」と龐統は言った。

龐統が説得した輸送隊の一部が、約束を破って夜中に逃げた。

奪ったはずの穀物の半分が消え、俺は顔から血の気が引いた。

「腹を空かせた者に信頼だけを要求したのが間違いです」と龐統は言う。

逃亡者を追う代わりに、彼らの村へ戻る道を開き、運び賃と家族への配給を明記した札を渡した。


三日後、空の荷車が戻った。

先頭の男は「今度は自分の意志で運ぶ」と言った。

張飛は百台近い荷車を見て目を丸くした。

「俺が十日戦っても、これほどは取れん」

龐統は「だから戦わなかったのです」と返した。

張飛はしばらく黙ってから豪快に笑った。

「お前は嫌な奴だな。だが頼もしい」

二人の笑い声を聞き、俺は次の配給計画を組み直した。

民夫の頭目は降伏の書付台帳ても疑いを解かなかった。

「昨日、曹操の役人も同じことを言った」

龐統は答えず、荷車の脇に座り込んで壊れた車輪を指さした。

「直してから決めてもよい」

俺が木栓を削る間、頭目は黙って見ていた。

車輪が回ると、彼は初めて名を名乗った。

敵の兵糧を奪うために、敵の民夫の帰る道を壊してはならない。

龐統は受領した袋の数を一つずつ読み上げ、俺は控えを二通作った。

奪取した穀物より、その控えの方が重く感じた。

曹操は補給隊が失われた報告を聞き、剣を抜きかけて止めた。

敗因は火薬ではなく、自軍の輸送夫が信じられなくなっていたことだ。

龐統は静かに言う。

「兵糧を運ぶ手が離れれば、百万の軍も歩けません」

荷車に貼った行先札を、敵の斥候が偽造していた。

俺が考えた便利な仕組みが、逆に混乱を招いたのだ。

誤った道へ進んだ三台の荷車のうち、一台はまだ戻らない。

護衛の兵も二人、行方が分からなかった。

「札を統一すれば誰でも運べる。そう言ったのは俺です」

俺が頭を下げると、龐統は首を横に振った。

「謝る相手は私ではありません。道で待っている者たちです」

俺は夜明けを待たず趙雲に同行し、分かれ道の泥に残った轍を追った。

壊れた車輪のそばで護衛の一人を見つけたが、もう一人は敵に連れ去られていた。

救出できたのは翌々日のことだった。

戻った兵の手首には縄の跡が残っていた。

「次は、札を信じる前に道を見ます」と彼は言った。

責める声ではなかった。

それが余計に痛かった。

木札の切り欠きを日ごとに変え、荷の種類ごとに縄の結び方も変える。

文字を読めない運び手が指先で確かめられるよう、龐統と老人たちが考えた仕組みだった。

俺は新しい札を配る前に、最初の一台に自分で乗った。

荷車が動き出すと、老人が後ろから叫んだ。

「今度はお前が乗って確かめろ!」

俺は荷台に飛び乗った。

段差で尻を打ち、兵たちが笑う。

龐統まで肩を震わせた。

笑われる痛みくらい、荷を運ぶ者の苦労に比べれば安いものだった。

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