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楽しいピクニック Part2

「さあリク、そこだよ! 景気よくいってらっしゃい!」 


恐怖で足がすくむ俺の背中を、ルナールさんが規格外な怪力でドンと押し出した。

一瞬で凄まじい推進力を得た俺は、抗う間もなく前方にすっ飛んでいく。

ブレーキを踏むことすら許されない状況で、俺は考えるよりも先に、迫り来る時限爆弾めがけてスライディング気味に飛び込んでいた。


「う、うおおお! もう、どうにでもなれーーっ!!」


がしっ、とカボチャの冷たい、そしてどこかニトロ臭いヌルつきのある皮に両腕を回し、ラグビーの要領で脳天めがけて決死のダイブを敢行し、顔の部分をラグビーボールのように抱え込む。

カボチャのヘタから弾ける火花がパチパチと顔に当たって痛い。

それどころか、頭頂部から上がる熱気はどんどん強まり、体内の導火線が爆発寸前の猛烈な勢いへと変わっていくのが腕を通して伝わってきた。


「どんどん熱くなっていく――!?」 

「リク! そのカボチャは握り締めると蒸気と熱が出てくるから」


固く目を瞑り、防刃手袋をはめた右手をヘタの導火線へと伸ばし、全力でぎゅっと握り締めた。 

じゅううう、と嫌な音と、手袋越しでも伝わる猛烈な熱が右手を襲う。 

だが、昨日食べたマンドレイク鍋のおかげか、【火属性耐性・微】のバフが奇跡的に機能していた。

熱いことは熱いが、皮膚が消し飛ぶほどではない!

「シュー……プスン」完全に酸素を遮断された導火線が、なんともマヌケな音を立てて鎮火した。

真っ赤に充血していたカボチャの体色が、みるみるうちに元の黄色へと戻り、ぐったりと力を失う。


「止まった……!?」 


自分の心臓のバクバクという音が耳の奥でうるさいほどに響く中、俺は冷や汗まみれで歓喜の声を上げた。 

しかし、命拾いをした安堵に浸る時間は、一秒たりとも与えられなかった。


「ナイスホールド! リク君、そのまま動かないでねー!」


 頭上から、ルナールの快活な、しかしこの状況ではあまりにも不穏すぎる声が響いた。 

恐怖に引きつる顔を恐る恐る見上げると、彼女は右手に白銀の光で形成された巨大な剣を握り、すでに太陽を背にして優雅に跳躍していた。

背中から溢れ出る清らかな魔力の粒子が、琥珀色の空にキラキラと美しい尾を引いている。 

その姿は文句なしに神聖で美しい――が、振り下ろされる光の大剣の軌道は、俺の頭上わずか数センチをかすめていく、完全なるデスルートだった。


「ちょっとルナールさん!? 俺ごと真っ二つにする気ですかーーっ!?」

「大丈夫、私の剣技を信じて! いっくよー、『神天無双流・両断斬り』ーーっ!!」 


耳を裂くような激しい風切り音と共に、白銀の光が俺の鼻先を通り抜けた。 

衝撃波だけで地面の土が派手にめくれ上がり、俺の着ていた作業着の襟元が激しくバタバタと羽ばたく。 


ドゴォン!! 


ワンテンポ遅れて背後から爆音が響く。 

ルナールさんがストンと軽やかに着地すると同時に、俺が文字通り命懸けで抱きかかえていた爆破カボチャは、見事なまでに垂直に、綺麗な二等分へと叩き割られていた。

断面から覗くニトロ成分の果肉が微かにパチパチと頼りなく爆ぜたが、信管を抜かれたそれは、もうただの巨大な野菜でしかなかった。

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