楽しいピクニック Part1
翌朝、神界の空が爽やかな群青色から琥珀色へと移り変わる頃、俺たちは神界の西の果てにある『トカトカ農園』へと馬車でやって来ていた。 目の前に広がるのは、のどかな田園風景――では断じてなかった。
「あの……先輩。あそこに転がってる黄色い塊、チリチリと導火線みたいな音が聞こえるんですけど気のせいですよね……」
「気のせいじゃないよ。リク、あれが今回収穫する『爆弾カボチャ』だ。見た目はただの大きなカボチャだが、一定以上の衝撃を与えるか、興奮すると大爆発を起こす。実を包む皮はニトロ並みの成分でできているからね」
キース先輩は涼しい顔で、またしても不穏な解説をのたまわった。
見渡す限りの広大な畑。
そこにゴロゴロと転がっている数十個の巨大なカボチャたちは、どれも不気味なハロウィンのジャック・オー・ランタンのような邪悪な笑顔を浮かべ、頭のヘタから「シュー、シュー」と火花を散らしている。完全に生きた時限爆弾だ。
「わあ! 大きいねー! あれを全部煮付けにしたら、何日分のご飯になるかな!?」
ルナールはすでに臨戦態勢で、ぐっと拳を握り締めていた。
彼女の背後には、昨日よりもさらに濃い、神聖にして圧倒的な戦闘オーラが陽炎のように立ち上っている。
目の前の爆弾岩もどきを、彼女はただの「美味しそうなご飯の山」としか認識していないらしい。
「よし、作戦を説明するよ。昨日と同じく、リクが背後から接近してカボチャを完全にホールド。信管であるヘタの火花を素手で握りつぶして動きを止めてくれ。そこをルナが光魔術で一刀両断し、僕がすかさず魔力封印のネットで回収する。」
「先輩、何サラッと『火花を素手で握り潰して』って言いました!? というか火花って握り潰せるんですか!? 熱いし危ないし、もし俺の手の中で爆発したらどうするんですか!?」
「大丈夫だよ。リク、君には昨日マンドレイクを食べて【火属性耐性・微】のバフが一時的にかかっているはずだ。神界の食材の恩恵を信じるんだ」
「いやいやいや! そんなあやふやな微量バフに命預けられませんよ!?」
俺の必死の抗議も虚しく、キース先輩は俺の背中をポンと叩いた。
「さあ、仕事の時間だ。フリー詰所の新人君、君の根性を見せておくれ」
その瞬間、畑のど真ん中にいた一玉の巨大な爆破カボチャが、俺たちの気配を察知してギロリと目を光らせた。
「シューーー!!」と導火線の音が急激に高くなる。
こちらを睨みつける爆破カボチャの邪悪な顔が、怒りでじわじわと真っ赤に染まっていく。
その巨大な体躯がぐっと縮んだかと思った瞬間、ゴムボールのような凄まじい反発力で地面を蹴り、こちらへ向かって一直線にバウンドしながら突撃してきた。
時速数十キロは出ていそうな、黄色い自爆特攻兵器。
正面から見ると、完全にホラー映画の怪異そのものだった。




