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ようこそ! メリヴェール王立探偵事務所へ  作者: 恵良陸引
Episode 3 外出する幽霊

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Episode 3 外出する幽霊(その8)

 「で、僕たちをここに集めたのはどういう話なんですか?」


 ドン・ホールドは不快な様子を隠すことなく言葉を吐いた。挑発的な響きも含んだ声だ。


 聞き取りに使用した医務室には、第一発見者のマーク・プードル、医師を呼びに走ったラッセル・チムニー、ノートンの蘇生を試みたドン・ホールドの3名が集められていた。彼らは互いを疑るような目で見ながら居心地悪そうに立っている。


 「実は、皆さんにある検査を受けていただきたいのです」

 レトは3人を医務室の中心へ来るよう手招きした。3人はますます疑心の目でレトを見る。


 「何の検査です?」少し苛立った声で尋ねたのはマークだ。


 「もしかすると、これで事件の犯人がわかるかもしれません。言い換えれば、ご自身の疑いを晴らす機会になるかもしれません」


 「おい、それって……」ラッセルが顔を真っ赤にさせた。「俺たちがやったと疑われているのか?」


 「あなたたちが、ではなく、あなたたちの誰か、です」

 レトは訂正したが、納得した様子の者はいなかった。


 「いったい、何の検査で調べるんです? 自白を強要する魔法でもかけるつもりですか?」

 ドン・ホールドがメルルを指さしながら言った。メルルは樫の木の杖を胸の前に持ち、今にも呪文を唱えそうな雰囲気だったのだ。


 「自白を強要する魔法は存在しません。仮に、存在したとしても、それを使うことはありません。違法捜査になりますから」

 レトは否定したが、メルルが杖を掲げて床に魔法陣を浮かび上がらせた。


 「おい、あんたが言ってることと、そこの女の子がやってることは違うじゃないか」

 マークが抗議したが、レトはかまう様子を見せなかった。


 「彼女が行おうとしているのは自白を強要するものではありません。ですが、今回の事件には、犯人にある特徴があると思われるのです。それをあぶりだせるかどうか試したいのです」


 「あぶりだし? 自白させる、ではないんだな?」

 ラッセルが念を押す。レトはうなずいた。「ええ」


 それを聞いて、マークが動き出した。魔法陣の輪の中へ入っていく。ドンが続き、最後にラッセルが不承不承ふしょうぶしょうの体で入っていった。


 「これで僕の疑いは晴れるんだな?」

 マークがレトをまっすぐに見て尋ねる。レトはうなずいた。「ご協力、感謝します」


 3人が輪に入ると、メルルはすぐに呪文を唱えだした。魔法陣は赤くなったり、黄色く光ったりしたが、やがてオレンジ色で安定した。


 「な、なんだ?」誰かがつぶやいたときだった。


 「あ、あちい!」

 別の誰かが叫ぶなり、魔法陣の上で転げだした。見ると、片手を押さえるようにしてうめいている。

 残りのふたりはぽかんとした表情で見下ろしているだけだ。


 「どうかされましたか?」

 レトは静かに尋ねた。倒れている男は額に汗を流しながら、「ゆ、指が、指が……」と、うめくだけだ。


 「包帯を外させていただきますね」

 レトはそう言いながら男の手を取った。その小指は白い包帯でぐるぐる巻きにされている。


 レトがすばやく包帯を外すと、男の指には指輪がはめられていた。銀のリングに赤い魔鉱石を埋め込んだマジックルージュスタイルの指輪……。


 「あなたはなぜ、女性向けの指輪をはめているんですか? しかも小指に?」

 レトは落ち着いた声だが容赦のない響きがあった。


 「この指輪はノートン氏から盗んだもので、ノートン氏はそれを取り戻そうとしてあなたに殺されたのではないですか?」


 レトに腕をつかまれていたのは、ラッセル・チムニーだった。

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