112話・・・アマルティア激突6
作品を読みにきていただき感謝です!
もう随分前のことだ。
薄暗い研究室の中。ビーカーらしい硝子瓶がいくつもテーブルに無造作に置かれている。モニターには人影が映し出され、横に数字が羅列している。レンはどこか冷めた目でナノスを見る。
「……これは何の真似よ」
「君へのプレゼントだよ。気に入らなかったかい?」
目の前にあるのは、カプセルの中で眠る三人の少女だった。皆顔が同じ。――ヴェネトラで戦った、あの姉妹だ。まだ何も知らないような表情で、無垢のまま眠っている。
「覚えているかな?唯一生き残ったメイラだ。レン、君にはこの四姉妹をあげるよ。好きに使っていい。ただし、調教して立派な戦闘員にはしてね。約束だよ」
そう言い、ナノスはレンの頬に優しく触れる。
横目でメイラを見ると、あの時とは違い物言いたげな目付きでレンを見ていた。
「ありがとう、ナノス様。じゃあ、メイラが長女として今度は妹たちを引っ張っていくのね」
「いや?長女はエリーニュだよ。そこは変わらない。誰が入れ替わってもナンバリングは変わらないのさ。彼女達はクローンだし、仮に人間の兄弟が死んだとしようか?長男が死んだら次男が長男と呼ばれるようになるかい?ならんだろう。よっぽど隠蔽したい子供じゃないかぎり、残すだろう?だから同じ組織を使っているエリーニュは長女だ。そのまま再生したんだからね」
「…記憶は引き継がれるの?」
「そんなわけないだろう」
バッサリと切り捨てられた。この姉妹は、身体だけが同じで、魂までは同じではない。記憶が引き継がれていても、きっと…メイラは同じ時間を育った姉妹とはもう会えない。
「わたしくが、精いっぱい面倒をみますわ」
「ありがとう、レン」
それからナノスがスイッチを押すと、カプセル内を満たしていた液体は排出され、管が外れ姉妹達が産み落とされた。ゲホゲホと咳き込むと、虚ろ気な瞳がレンを捉える。そして雛鳥が初めて親を見つけた時のような。そんなように嬉しそうにぎこちなく、嬉しそうに微笑んだ。
歩行訓練、慣れてきたら戦闘訓練。そして教養。マナーさえ身に付けさせた。だけど、これは組み込まれているのかエリーニュは粗暴で怒りっぽかった。アレークは飄々としておりどこか掴みどころがない。ティーシは泣き虫ですぐヘラる。メイラは…初めて会った時より距離があった。レンとの距離ではない。姉妹との距離だ。一緒に行動するだけ。話もするが、レンの記憶にあるメイラとは違う性格へと成長していた。良い意味で伝えるならば自我の芽生えと言えばかっこいいのだが。悪く言えばレンへは従順…思考を停止した対応をする。姉妹に関しては上っ面で、案山子と話しているようだった。
浴場で湯船につかっていると、ティーシが寄りかかってくる。水面が揺れる。
「ナノス様が私達を作った神だとしたら、レンお姉様は女神様ですね」
身体がちゃんとあったまっているのか頬が赤い。そこは、人間と変わらない。
「女神なんて大袈裟ね。…女神がいたとしたら、それはお姉様だわ」
「レイラ様のことですね。確かに、ナノス様の奥様でありますものね」
違う。違う…
無邪気に笑うティーシに、怒る気力は湧かなかった。レイラは女神なのだろうか。寧ろ生贄に捧げられた女王ではないだろうか。
「じゃあ、レンお姉様は女王様だな!女神を信仰している女や妖精は神話を呼んでいても多いぜ!」
「女王様…ピッタリじゃないですかぁ。女神の愛を一身に受けて戦う女王。レンお姉様を象徴するみたいですね」
アレークはくつくつと喉の奥を鳴らし笑う。
「そうね」
女王――女王のように振舞えば、四姉妹は兎も角アマルティア兵も雄叫びを上げ、士気を挙げた。ここまで来た。来てしまった。レンは静かに目を閉じる。
・・・
「ゲホォ!」
マノンは呼吸の仕方を思い出したみたいに目を覚ました。がばりと起き上がり、銃を手に取り周りを警戒する。この土地はどこかヴェネトラに似ている。工場地帯で賑わっている街ではなく、戦闘後の瓦礫や鉄材が転がっている光景だった。変った所と言えばシンプルな廃墟がなんとか崩れずに佇んでいた。窓は割れ、壁の塗装も剥がれている。人感センサーを向けてみるが反応はない。ふぅ、と溜息を吐く。ボロボロの街で誰もいないのに、この快晴が一致しなくて背筋が気持ち悪い。
「なんだ、ここ…」
慎重に歩みを続けると「マノン!」と声をかけられる。ゾーイが瓦礫を攀じ登り駆けおりてくる。
「ゾーイ、合流できてよかった。怪我はない?」
「私は平気。マノンは大丈夫そうね。ここ電波が入らないみたいね。あっちにモアさんとローラ先輩がいるわ。行きましょう」
一歩踏み出そうとすると地面が弾け飛ぶ。銃弾が浴びせられたのだ。マノンとゾーイは反射的に後退し銃を構え戦闘態勢に入る。躊躇なく引き金を引き、威嚇射撃をすると聞き慣れた笑い声が鼓膜をくすぐる。瓦礫の山を登る場合わないヒールの音。ふわりとなびく金色のロングヘア…あの頃はシニヨンにしていたのに。
「……レン、お前、生きてたのか」
絞り出した言葉があまりに酷くて。現れたのはレンだった。連絡が付かなくなって二年間も経った。便りが無いのは元気な印。それを支えに心配しないようにしてきた。信じてきて良かった。レンもクスリと笑う。だけど。心に小さな歪が生まれる。
何かが違う
「マノン。わたくしね、ここに来てから本当に変わったの。ここ…アマルティアに来てから人生が正反対になりましたの。マイラは軍人もどきになって…レイラお姉様は双子を出産しましたわ。ねぇ…父親は誰だと思います?」
「マノン、耳を貸すな」
ゾーイの言葉が耳に入らない。視界は真っ暗なのか真っ白なのかも解らない。震えが止まらず歯がカタカタと鳴る。考えたくない。知りたくない。拒否したい。
「た…助けるよ、だから、レン達を救い出すから!」
「もう遅いのよ!」
鞭がビタンと地面を叩く。
「お姉様はナノスの子供を産んだわよ!お姉様がこれ以上実験体にされないようにわたくしは…わたくしはこの身体を捧げた!創りかえられたの!ただ非力な人間のままやられっぱなしのわたくしじゃあない。…そう、わたくしは女王みたいに敬仰されているわ。所詮作られた女王なのにね」
皮肉ぽく笑うと、また鞭を鳴らす。
「さぁ、姉妹達。マノン以外のドブネズミをズタボロにしてさし上げなさい。殺さないようにね、実験に使うから」
「ゾーイ!」マノンは叫ぶと、ゾーイは死角から飛び出してきたクローン四姉妹と交戦する。
「こっちは任せて、マノンはその女王様とやらと話を着けなさい」
「随分余裕じゃあねぇか、女!」
「その淡々とした感じムカつくかも…!」
「まぁまぁ。捕まえたらナノス様の許可をもらって何かしようよ、彼女でさ。ね?メイラも良い案だと思うでしょ?」
「…うん」
ゾーイは囮になるように四姉妹を引き付けこの場を離れていく。
「マノン」
ビクッと体が反応する。銃身はレンに向けられたまま。視線を反らさずレンを見据える。妖艶な笑みなのにどこか下品さが混ざっているそれが気持ち悪くて。あの日のレンは宣言通り、いないのだと打ちのめされる。
「レン…帰ろうよ、事情を説明すればモルガン大佐なら保護してくれるよ!」
「…そうねぇ。保護されるのも悪くないかしら。気に入らなかったら、脱走してしまえばいいだけだもの」
腕を組み、胸を持ち上げてみせる。唇の赤をちろりと舌先が舐める。
(コイツ…!)
保護したらティアマテッタ兵の男達を誑かしスパイ活動をすると暗喩していやがる。ここで怒り任せに発砲すれば主導権をとられるかもしれない。ふー、と長く息を吐くと二発威嚇射撃をする。
「レン。私は真面目に話をしている。おちょくるなら許さない。本気で戦う」
「そう。それが良いわ。わたくし達はもう分かり合えないの。あぁ、でも本気で話し合うなら一ついいかしら」
レンは髪を指で弄りながら話始める。
「貴女、ナノス様の下に来ない?そっちの方が色々都合いいと思うわよ。混血じゃあ不便でしょう。ナノス様ならもっともっと上手に引き出してくれる…ね、悪くないでしょう?」
「…は?」
心が、完全に置いて行かれた。軋み、罅が入る音。顔は同情しているように、憐れんでいる様なのに。いや、だからか。自分のことを勧誘している。自分の使い道を一番わかってくれている相手に身をゆだねることが最適で、本領発揮ができると囁いている。
一緒に来てほしいとか、レイラ達と一緒にいようとかそんな理由ではない。そんな、そんな馬鹿げた理由で誘ってほしくなんかなかった。マノンは歯を食いしばり青筋を立て怒りに満ちる。
「そんなお誘いお断りだね!一回ボコして考え方直してやるよ!」
「相変わらず粗暴さは治っていたいのね。困った子」
瓦礫から飛び跳ねれば、レンは異常とも言える跳脚力で太陽光を浴び逆光する。一瞬視覚をやられるが標準を合わせ、銃撃を開始する。
レンは鞭を振るい地面に突き刺すとその撓りを利用して水球から逃げていく。そして地面内からはズズズと這いよる地鳴りがする。マノンは走り出し距離を取ろうとするが地鳴りからは逃げ出せない。
(鞭の細さが奏でる音じゃあない!レンの奴、一体何を仕込んだ!?)
地下にいる何かに気付いたことが表情に出てしまった。それを見逃さなかったレンは薄っすら笑うとお披露目するように這い出る。轟音と共に地面が割れ、黄金の大蛇が牙を向け噛み殺そうとマノンを襲う。
「ックソ!」
上半身を噛み砕かれそうになり咄嗟にしゃがみ込み地面を蹴り横へ逃げる。反射神経良くてよかった!と内心叫ぶ。
「相変わらずすばしっこいのね。揺れる胸もないみたいだし…小さくてよかったわね」
「なんだと?!ほんっとう、お前さぁ!口悪くなったよな!ナノスに何吹き込まれてんだよ!」
「うぅん、ナニかしらねぇ…色々、教え込まれているの♡」
意地悪く、そして艶やかに口角を上げる。大蛇は無数の頭部に分れマノン目掛けて襲い掛かる。一体一体狙撃していくがこっちは水属性。レンは金属性で分が悪い。腰に仕込んでいたナイフを取り出し蛇の頭部を切り落としていく。魔力は薄く、そして鋭利になるようイメージして。
(クソッ!適当に撃っても当たるレベルでうじゃうじゃいやがる。それに)
地面に落ちた頭部は自立しマノンの足元に噛みついてくる。靴底に尖らせた氷を張り踏み潰していく。流石に破壊までいけば金属片は鉄くずに戻る。しかし本体である鞭はまた再生し攻撃をしかけてくる。この負のスパイラルをどう打破するか…。
(レンの魔力量がわからん以上枯渇するまで使用させる方法は絶対にアウトだ。こっちの魔力が底を尽きる。…本当は、本当は避けたかったけど…!)
解決策はレンを気絶させること。そして現在のレンは魔法も体術も鍛えられているはずだ。むき出しになっている生足を見ればわかる。相当鍛えられている。でも、鍛錬してきたのはレンだけじゃあない。
マノンは地面に魔弾を放ち、高さ十メートルの氷の塔を作り上げる。そして頂点からレンへの狙撃を開始する。水球なんて生易しいモノじゃあない。氷弾だ。洗脳された馬鹿レンを呼び覚ますための、こっちだって生半可じゃあなくて本気だってことを。
一般人が直撃すれば即死レベルの氷弾を避けながらレンは次の手を考える。魔力を溜めた金属のストックはまだある。それで氷の塔を破壊させるか…。金属の棒を複数投げ捨てるとそれは薄い円盤となり、刃が形成され回転し、氷の塔をガリガリと削り始める。
「うぉっと!そうくるのは予想してたよ!」
マノンは靴底から魔力を送ると、塔から勢いよくスパイクトラップが発生する。それでも薄い金属は回転を続けるが阻害され、ついにはスパイクトラップから霜が発生し、徐々に凍り付いていき動きが鈍くなっていく。レンは悔しがる暇もなく、マノンの攻撃からまた逃げ回るのであった。
「なるほどね…」
レイラの魔力増量弾でヘロヘロになった小娘が、今はそれと同等の魔力を放出してもまだ戦い続けている。強くなっている…と思う。魔力のタンクも増えたのだろう。マノンは自分で道を切り開き、訓練し今を得た。だけど自分は?ナノスに実験にされ、自力で得た魔力で増えた魔力ではない。そう思うと、マノンが馬鹿らしくなった。そして自分が汚く愚かに見えた。
(わたくしはただ、お姉様を守りたかっただけなのに。どこで道を間違えたの?)
間違えた?何も間違えていない。後悔していない。してなんかいない!
――『そうだよ、レン』
気が付くと暗闇の中にいた。目の前にはナノスが相変わらずニヤニヤとして嘗め回すように見つめてくる。…この視線にも、慣れてしまった。
ナノスはレンの肩に触れると、スーッと腕を滑り手を握る。
『レン…。君は僕の最高傑作だ。武器としても、女性としても…。全てが誇らしい』
耳元に口を近づけ囁く。
足元から黒い液体が肌を伝い這い上がってくる。その液体は足の間の奥にまで入り込む。思わず「んっ」と声が漏れる。
「そうだ、レン。君は自分を犠牲に出来る素晴らしい女性だ。僕の実験にも耐え、男を受け入れ、女の悦びを知り、そして強さを手に入れた。魔法だって誰にも負けない。この世で一番美しい…」
液体は腹、胸、首元…そして顔を埋めていく。
「さぁ、レン。君の本気を見せてあげなさい。淫らで、美しき女王の姿を…」
レンの動きが一瞬鈍ったのを見逃さず、マノンは引き金を引く。これが当たれば気絶は不可避…のはず。あと数ミリで直撃といったところで鞭で弾き飛ばされた。
「ッチ、やっぱ無理か」
リロードし標準を合わせる。アイズでさらにレンを観察すると様子が可笑しいことに気が付く。頬が紅く染まり、呼吸が僅かに上がっている。
「レン…?」
「ふ、あははははは!」
瞳孔が開き、狂ったように笑い始めたレンに、一瞬たじろぐ。だが、好機。ここで出し惜しみをしたらこちらが不利になる可能性が大きい。
「正気に戻るまで頭に衝撃食らわせてやるんだからな!」
水と無が混ざった魔弾を撃つ。威力はどの弾よりも飛び抜けているはずだ。これで攻撃を続ける。
「わたくしは、いつだって正常なのよ。マノン!」
ヒールを鳴らすと瓦礫の中に埋まっていた金属がレンの壁となり魔弾を防ぐ。マノンが放った魔弾はギリギリと貫通しようとしたが結局は弾かれて呆気なく散った。
思わず目を見開いた。
(防がれた…?私、レンのこと甘く見てた?そんなことない…全力で、魔力を込めて、撃ったはずなのに)
「ビックリしているのね、マノン。可愛らしい事…。ねぇ、マノン。わたくしと一緒に来れば、イイ事を教えてあげるわ。痛い思いなんてさせませんわ。でも…もし最後まで抗うなら。そうね、可哀想だけど…ナノス様の実験体になって遊ばれるのがオチかもしれませんわね」
人差し指が唇をなぞる。
「何言って、」
「嫌でも一人受け入れれば、後は何人だって変わらないわ」
今、自分がどんな表情をしているか解らない。軽蔑?哀れみ?茫然?
心に僅かなズレが生じる。あの日のレンは自分よりも弱くて、だけど凛として強い女性だった。だけど目の前にいるレンは、自分より強くて、今にも壊れそうな人だった。
「レン…それは、平気なんじゃあなくて」
平気なわけない。受けた傷を治そうとして、隠そうとして傷口に新しい傷をつけて無かったことにしようとしているように見える。
「レン…やっぱり、帰ろうよ。一緒に帰ろうよ」
「ハァ。呆れた」
真っ黒な瞳は、マノンを捉える。レンから魔力の波紋が地面に伝わっていく。そして散らばっている金属がわらわらと宙に浮かび上がる。そして形を鋭利な刃に変えて、マノンに向ける。
「物分かりが悪い子は嫌いなの」
刃が一斉に飛んでくる。氷のドームで防ぐが、ガコガコと物凄い音を立て削り、突き刺さろうとしてくる。
「どうしよう、ミラ…レイラ姉。私じゃレンのこと助けられない…救えないよ、解ってあげられないよ…!」
あぁ、本当はレンと戦いたくなかったんだ。やっと本心に気付いたマノンはただポロポロと涙の粒を零す。するとガガガと塔が斜めっていく。あの歯車もどきが塔を削っているのだろう。もう少しすれば倒れるだろう。
(考えなきゃ。どうやってレンを倒すか。考えなきゃ)
考えたくても靄が張りつめて頭が回らない。余計な事ばかりが駆け巡る。その時、ピピ、と無線が入る。
『今平気かしら?随分劣勢みたいだけれど、敵は何人追加されたの?』
ゾーイだ。マノンは少し気が紛れる。
「いや。さっきの女の人一人だけだよ」
『…本領発揮も出来ていないみたいだけれど』
「アハハ…そうかも。なんか、気持ち?へのダメージがきつくってさ」
戦闘中に何を相談しているんだと思った。でも、こんなピンチな状況でもこの話をするべきだと思ったのだ。
「殴り合えば解りあえて、仲直りできるなんて思っていたけど。全然違った。もっと、もっと根っこの部分が…」
『なるほど。よくわからないけれど、マノンもあの女性も今どちらも精神面が傷ついているって状況でいいかしら』
「た、ぶん。いや、レンは絶対そうなんだよ。だけど、」
『なら一旦、こちらに逃げて私達を助けて頂戴。憂さ晴らししてからそのレンさん?をどうするか考えましょう』
「ゾーイ達もピンチなの?」
『ピンチというか。鬱陶しいが正解ね』
「あぁ…なるほど?」
あのクローン四姉妹は確かに鬱陶しいだろう。
『一旦レンさんから離れて頭を整理しなさい。追いかけて来るだろうけど、そうしたら私が代わりに相手をするわ』
「ありがとう、ゾーイ。今から向かうよ」
通信を切ると、マノンは頬をバシンと叩いた。
「くよくよするな!マノン・ミナージュ・ランドルフ!」
ドームを割ると、マノンは勢いよくゾーイ達の下へ駆けだしていく。
「逃げる気?」
レンはマノンを睨みつけ、後を追う。
「逃げるはまぁ確かに!でも安心しな!すっきりしたらまた戦いを申し込むからさ!」
マノンは向かう先はクローン四姉妹がティアマテッタ兵と戦っている方角だ。なるほど、とレンは一人納得する。
「お仲間と合流してどうなるの?数で勝とうとしても結局わたくしも合流すれば変わらないわよ」
「そうかもね。でも気持ちの持ちようは変わるよ?」
二ッと笑うと、マノンはレンを置いて脱兎の如く去っていく。あの速さならすぐに合流されるだろう。レンは溜息を吐くと、走るのを止めた。
「疲れたわ。歩いて向かいましょう。どうせ、結末は同じですもの」
冷めた目で見据える先には、ゾーイ達と戦う四姉妹の戦場がある。




