113話・・・アマルティア激突7
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モアは周りを見渡し、眉間に皺を寄せた。土埃が風に舞い、埃臭さも鼻につく。自然のものではない、人工物が破壊された跡地。風景は違えど、過去の血生臭い光景が蘇る。
「一体ここは何があったんだい。襲撃にでもあったのかい?」
「地図を確認したのですが…恐らくですがアマルティアから近い場所かと思われます。時期は兎も角、攻撃を受けて以来ほったらかしにされたのでしょう」
ローラが表情を変えずに説明する。
「さっき研究所らしい建物があったね」
「使用されていないようでしたが」
研究所を建てるためなのか、それとも利用価値が無くなったからなのか。どちらにせよ襲撃されて町と呼べるような場所が消滅したのは事実だろう。願わくば、ここに住んでいたのがアマルティア兵のみであることだ。
「…子供は。せめて子供は犠牲になっていないといいですね」
「そうだね」
ここが戦場であることが嘘のように静かな時間が流れる。その時間が恐ろしく、緊張し、鼓動が少し強く打つ。
偵察とマノン探しに出たゾーイの話題をローラが出す。
「ゾーイは無事にマノンと合流でき、」
バン!と銃撃音が聞こえてくる。モアは剣。とローラは銃を構える。
「どうだい?土属性なら地面からの振動で状況とか把握できるかい?」
「…まぁ」
ローラは膝を突き、指先を地面に触れる。微量の魔力を流し、超音波のように反射をまつ。微かに感じる足音。一つはゾーイのもの。もう四人は恐らく敵。マノンならもっとガサツなはずだ。
「ゾーイがマノンと距離を取っています。意図的に…でしょうか」
「合流するために捜しに行ったからね。その予想でいいだろう」
恐らくマノンは一人で発生した問題を解決しようとしている。そしてゾーイが囮になった、と予測する。こちらに向かってきている以上ゾーイ一人でどうにかできる相手ではない。
「来たよ」
走って戻ってきたゾーイに違和感を覚える。ピンとくるのは、銃だ。本来ならゾーイの得意分野は長距離射撃。それが通常形態の銃スタイルなのだ。高い建物が無く、隠れ場所になれるような瓦礫の山も心もとない。これではゾーイの得意を生かせない。
そして迫りくる敵は顔が同じ――表情の加減で別人には見えるが――の異様な四人。只者ではないのは確か。
ゾーイは接近戦が不得意なわけではない…はずだ。少なくとも訓練時に自身より立派な体格に恵まれた男を負かしている。だが、あの同じ顔をした女たちはどうだ。背格好はゾーイに近い。寧ろ華奢と受け取れる。だけど身体能力が異常なのだ。目視した瞬間解った。人間離れした脚力、そして柔軟でありながら剛力さが見え隠れする身体。一人でも厄介なのが四人もいる。そして何より目だ。目が不気味なのだ。
狩りをするような、獲物で遊ぶ獣のようにゾーイを追いかけている。つまり遊びながら、本気を出していない状態だ。愉快だと言わんばかりの上機嫌。もう既に嫌な気配が体に纏わりつく。
ゾーイを助太刀するつもりで銃を構えるがあの四人はちょこまかとまぁよく動く。標準がブレて味方に当たるのだけはどうしても避けたい。今の状況、一人でも痛手を負ったら不利になりすぎる。
(本当はナノスと戦う時まで少しでも力を残しておきたかったけれど仕方ないか)
ローラは地面に銃を向け発砲する。
「おいでなさい、エルデドール」
唱えると地面が盛り上がり、湿り気を帯びた土が女性型マネキンのような姿で現れる。数は十数体。特徴と言えば踵が無く円錐のようになっている。
ほう、とモアは感心する。
「お前達、あのそっくり四人組の動きを止めなさい。モアさん、接近戦を任せてもいいですか?ドールごと斬ってくれて構いません。再生するので」
「お安い御用さ。狙撃は自由にしな。小娘の撃つ弾に被弾するような老婆じゃないさ」
「心強いお言葉です」
長命ジョークなのか思わず苦笑いをする。
銃を構えるとモアはブーストを使い姿を消した。
・・・
魔弾を撃っても避けられた。なんというか人間離れした動きに見えた。早すぎて目で追えなかった。アイズを使用していればよかったとゾーイは後悔した。アマルティアに鍛えられた少女兵だと思っていたがどうやら違うようだ。まぁ、顔が全く同じという時点で四つ子か別のナニかと疑うべきだった。呆気にとられたのは逃走進路を塞がれた時だ。ローラとモアに合流する前に死ぬと覚悟した。が、来たのはパシンと乾いた音と、ヒリヒリとする左頬。ビンタをされたことに気付くのに数秒かかった。不機嫌そうな少女はニヤッと笑うとゾーイを見下すように言う。
「ほら。本気で逃げないと次は右頬を叩くからな」
「その次は右腕を折るの」物静かで可憐な雰囲気を纏う少女が言う。
「ふふ。じゃあその次は左腕の切断ですかねぇ。ワクワクするね、メイラ」
アニメのキャラクターに出てきそうな気味悪い雰囲気の少女が言う。
「…うん」無感情の少女がただ頷く。
敵の前で動揺するなんて兵士たるもの、あってはならないと思っている。だけど、今だけは露骨に顔と態度に出てしまった。動揺が出てしまった。ゾーイは気味悪い四姉妹から逃げるようにまた走り出す。
(なんなの、あの子達。同じ人間とは思えない…)
そう言えば似た現象を、心の違和感を以前体験したことがある。入隊試験の時だ。あの中にも人ならざる者…クローンが潜伏していた。ソイツ等もアマルティア兵だった。
待機場所へ向かうとローラが銃を向け、モアが姿を消す。瞬きをする隙も与えず、モアが少女の前に現れ強烈な蹴りをお見舞いする。蹴られた少女は「うっ」とうめき声をあげ数メートル先に飛ばされ地面に叩かれる。
「イッタイナァ、なにするんですかぁ。おばさん」
蹴られたのはアレークだった。唇が切れたのか血が滲んでいる。傷口を舌先でなめ、味見でもしているかのようにひたりと舐め続けている。
「五月蠅いよ、小娘が。四人纏めて相手してやるから揃っておいで」
「おもろぉ!でもおばさんには私一人で十二分です。えぇ、結構に十二分です。エリーニュ姉さん達は他の二人をお願いしていい?後期高齢者の相手って大変だって言うじゃん」
「あぁ?そんなババア相手に手ぇ貸す訳ねぇだろ、ボケ!私はお高くとまってるあの生意気な面してる女にするぜ!」
ビシッと指をさされた方向にはローラが。無駄に五月蠅そうな相手にローラのこめかみから汗がじんわりと滲む。
(ここでも五月蠅い相手の面倒みるのか…)
「じゃあ、私とメイラであの眼鏡の子の相手しよ?」
ティーシが静かに誘うと、メイラは横目でティーシを見てから数秒黙り、声を出す。
「…いい。私、やらない」
「えぇ?今わがまま言うの?ナノス様に怒られちゃうよ?どうしてもやらないの?」
コクリと頷く。ティーシは小さな溜息を吐くと、短刀二刀を取り出し、ゾーイに向く。
「じゃあ、私と“共闘”したってことにしてあげるからね」
持前の瞬発力でティーシは一気にゾーイとの距離を縮める。ゾーイが銃を構える隙なんて与えやしない。ふりかぶり刀がゾーイの頬を掠め、血が少量跳ねてじんわりと滲む。
違う――
ティーシは。ティーシお姉ちゃんは――
(ティーシお姉ちゃんは…人形作りが好きな事を知っている。だから獲物の顔に傷がつかないようにしてくれた。アナタは優しい顔を見せるだけで私にはなんの興味も持っていない)
偽物。そう心の中で毒づく。
後から創造されたくせに姉面をする。まるで本当の姉達のように。嫌がるそぶりを見せれば落ち着くか距離を置かれると思っていたが、まるで変わらなかった。反抗期の妹がいるとでもいうような扱いをしてくる。腹が立って仕方がない。
メイラは丁度椅子替わりにできそうないいサイズをした瓦礫に座る。
さて、見ものである。
・・・
(こうなるならモアさんを前線に行かせるんじゃなかったわね)
ローラはエリーニュの暴力的な強さ…いや、剛腕さに押されていた。二丁拳銃を使用してくるくせに接近戦も好んで自ら攻撃範囲に入り殴る蹴るをかましてくるのだ。エルデドールの補佐がある、盾となってくれているから大怪我は負っていない。
(…いける、かな)
目を動かし、状況を把握する。
「おい、よそ見すんじゃねぇぞ!」
「もしかして構ってちゃん?」
どうやら地雷だったらしく、エリーニュの顔はみるみる赤くなり憤怒で満ちている。
「ティーシみたいに扱うな!」
なるほど…ローラは内心思う。この調子で崩していけば勝算は見えてくるかもしれない。ただし
「オラオラオラオラ!」
拳銃はリロードの速さが尋常ではなく自動装填のように無限ともいえる魔弾をぶっ放してくる。銃が魔力に耐えられず壊れないギリギリで。その高度な技術を持つエリーニュのおかげでローラは今必死をこいているところなのだが。
エルデドールを駆使しながら剣を振りかぶるが当たらないし、当たり判定のデカい攻撃を駆使すればモアはともかくゾーイまで巻き込むことになる。
(我慢よ、私)
敵の意識が自分に集中していればいい。それが狙いなのだから。こっちはまだ本格的な攻撃なんてしなくていい。
・・・
参ったわね…と内心ごちる。右手に銃を。左手にサバイバルナイフを持ちティーシと呼ばれたいかにも女の子といった雰囲気の少女相手に押されている。若干、若干だけ押されている。エルデドールが援護しようとしてくれるがこっちが望む動きとは微妙に違う。これもそれも、ローラの意識が散漫しているからだろう。こちらを見てくれていればどうするべきか考えて援護してくれる。
「よそ見している余裕なんてあるの?」
「うっさいわよ」
可憐に笑うかんばせと、自分を殺そうと短刀を振りかぶってくる。ちぐはぐだ。殺しが楽しくて笑っているという表情ではない。花を摘み冠を作る少女のようなのだ。
「キャハハ!私まだ本気だせていないのよ?このきったない泥人形のお邪魔虫がいるからなんとか保てている感じ…?」
ゾーイを守ろうとエルデドール複数体がティーシによってたかって圧し掛かるが数秒後には切り刻まれて塵となる。僅かに生まれた隙を狙い魔弾を撃つがティーシの瞳孔がギュッと狭まる。
「アイズ?!」
「いいえ、アイシクルよ」
恍惚とした笑顔が脳に焼き付く。魔弾を撃ったとて羽のように飛び容易く避ける。そして短刀に氷を纏わせギザ歯…のこぎりのような刃でゾーイの首を掻っ切るべく目にもとまらぬ早さで突きつけてくる。
ガン!とサバイバルナイフと短刀がカチ当たりギリギリと音を立てる。
「あら、貴女もアイシクルが使えたの?」
「そうよ。使えないと死んでしまうからね…今みたいに」
「アハハ!それは今も私が手加減してあげているからよ。そうじゃなかったら貴女はもう死んでいるんだから」
なんというか。身体が怠い気がする。いつもみたいに動かない気が…ほんの少しだけだがする。本調子、という感じがしない。なんなんだ、この違和感は。
そう。ゾーイはアイズに関しては自信があった。同期の中ではトップクラス。軍全体で見ても上位に食い込むほどには射撃とアイズには自信があった。それが自身より年下…クローンである少女に押されていることにプライドがどうこうという前に不思議でしょうがなかった。
クローンだから人間より優れるように造られているのかもしれない。それでも長年の経験が負けるのだろうか。いや、負けそうなのだが…
(なんか悔しいわね。強くなったつもりでいたけれど…世界は広いわね。ここで負けたら悔しいとかじゃなくて、恥じだわ。私が本調子ではなくても、敵に勝てないとか恥じだわ)
相手が上の存在ならどんな手を使ってでもそれよりも上に立ち勝利する。それがティアマテッタ軍…正義としてのありかただ。敵が完全なる悪である場合ならなおさらだ。考え方ひとつで正義も悪も変わる世界があることくらい知っている。だがナノスという存在は世界にとっての悪で癌で。これだけには負けることは許されない。
(負けられないの。強くならないといけないの。最初から強さを与えられたあなた達とは違うの。だから)
致命傷を避け、皮膚を裂きながら笑い声を上げるティーシに視線を定める。後方にはエルデドール数体。視覚が、脳がクリアになり鮮明な未来が数秒見える。
バン!と銃声が鳴る。
「え…?嘘、私が見ていた未来と違う…」
ティーシの右腕が撃たれ肉が半分ほど抉れ、骨が見える。動揺しているようだが薄い反応だ。
「テメェ!!」
先程の乙女は豹変し酷い面を見せながら短刀を振りかざす。ゾーイに斬りかかるその瞬間にエルデドールが間に入り込み、短刀が食い込むが土が覆いこみ差し込んでも、引こうとしてもビクともしない。
もう片方の短刀を突きさすがそれもエルデドールが割り込み飲み込んでいく。さっさと刀をはなせばよかったものの、一瞬の動揺を見逃してもらえることもなく土が両手を飲み込み拘束する。おまけに足にまでしがみついてきて、地面と一体化し始める。
「クソ!クソクソ!アイシクルを使いこなしていたのは私のほうなのに!どうしてお前の方が見据えているのよ!」
「どうやらそうみたいね。クローンは知らないけれど人間の活性化は凄いのね。…人の身体、すごい数の切り傷つけやがって。なんか、フラフラする。意外と出血が酷いのかしら。そういうことで、決着を着けましょうか」
銃口をティーシの額に当てる。そして、引き金をひく。
ティーシの身体が仰け反る。ビシャッと赤い液体が地面に流れ落ちる。しかし、胸が上下している。生きているのだ。頭部を撃ち抜いたのに。思わず、ゾーイは距離を取る。
もう一発撃とうとするが、ぎゅいんと身体を持ち起こす。
「な…んでよ!私が負ける訳ないんだから!」
額は螺旋を描いたような穴がぽっかりと空いている。それでも普通に喋ってきているのが不気味で、顔に出さないようにするが狼狽えている。
止めを刺そうともう一度銃を構える。
「許さない許さない許さない!テメェみたいなブスに負けるとか愚かすぎる結末だわ!腹立たしい、腹が立つ!あぁああああああああああ!」
その恨み言はもはや金切り声だ。鼓膜にダイレクトに響き、キーンと鳴り痛い。すると身体が水分化し、ぶわりと体が分裂する。水でプルプルとしたティーシが氷の刃で襲ってくる。そして水のティーシは関節部分が氷の球体となり、人形のようなフォルムになる。コンパスのような足、刃物の両手。瀕死なのはティーシのほうなのに、分身を作り出すほどの魔力が残っているのだ。本物のティーシは、呼吸を整え身体を休めている。
身体は氷で、顔はティーシの分裂体(コピー体?なのだろうか)がニヤリと笑う。
「…まじか」
視界がぼんやりと白けていく。
・・・
鞭が撓るたび瓦礫が水を得た魚のように跳び上がる。跳び上がるだけならいい。不規則な自由を得た瓦礫はモアの身体に衝突する。いくらブーストで逃げても、逃げ場を広げても楽しさに身を任せ衝突することを気にもしない子供のように。モアにガツガツと当たるのだ。空中に一旦逃げてもテールが伸び足首に絡みつく。そうなったら地面に叩きつけられる。相手は金属性。イヤーズの力で音速すら拾うのだ。
「ガハッ!」
「アッハハハハ!おばあちゃん、お体大丈夫ですかぁ?」
ニタニタとアレークが笑う。起き上がろうと腕を突くと地面に影が映る。
「この!」
モアは慌てて駆けだすと同時に岩石が落下し、周りをバキバキと潰していく。
「まだ終わらないですよ、おばあちゃん♡」
金属片が浮かぶとモア目掛け、蛇の如く宙を這ってくる。ブーストを使い壁になりそうな瓦礫に金属片の塊を誘導しながら少しずつ衝突させて数を減らしていく。
「流石に音では終えても本体は急変化にはついていけないかぁ。もっと鍛錬しなくちゃ」
アレークは伸びをする。
目を動かし二人の様子を把握する。ローラはまだ余裕があり、策があるのだろう。準備をしている。ゾーイはいつもより動きが鈍い。ティーシの猛攻と接近に苦戦しているのだろうか。エルデドールがサポートしているから辛うじて攻撃可能になっているが、らしくない。
「余所見は駄目ですよ、おばあちゃん」
「お前は姉妹とやらが気にならんのか」
「私達は繋がっているので大丈夫です。ご心配どうも」
「ふぅん。じゃああの座っている娘は特別ってかい?」
座り込んで暇そうにしているメイラを指さすと、アレークは苦笑いをした。
「あぁ、メイラはあんな感じなんです。ずっとね。いちいち促すのも違うなって。彼女の好きにさせているんです」
「…特別、ねぇ」
メイラの顔を見れば解る。あれは納得いっていない顔だ。不満を持ち、反抗している。この姉妹に腹の中で何かを思っている。
剣を取り、アレークに先を向ける。
「宣戦布告ですか?」
「そうさ。お前達姉妹の絆とやらを試したくなってね」
「悪趣味だこと」
・・・
私、頑張ったと思わない?
なんていうか、こんな不利な中。この世界に呪いがあるとしたら、祟りがあるとしたらそれらが身体に纏わりついたように重たいの。
えぇ、こんな化学や魔法が発展した世界で呪いなんてあるわけないって。否定派よ。
まぁ、言葉の呪いならあると思っているけれど。
膝を突き、ゾーイはくだらないことを考えていた。
息も荒く整わない。あのコピーは腕を鎌のように変化させ、足は針のように鋭く、胴からは不意に剣が飛び出してくるビックリ箱状態だ。トラップに気づいて逃げようとも足元に氷が盛り上がり拘束されてまんまと刺されるのだ。
ボロボロだよ、身体は。それを見てティーシがキンとするような声で笑う。
「アハハハ!ざまぁないわね!いきがっていたくせに無様に負けてるじゃない!さっさと死になさいよ!」
「額に穴開けている貴女には言われたくないわね」
はぁ、と溜息を吐く。
そろそろだろうか。
「…疲れちゃった、私。一体この空間はどうなっているのよ。まるで酸欠だわ」
ティーシの眉がピクリと動いた。見逃さなかったゾーイは眼を細める。
「貴女は酸欠にならないの?クローンだから?」
「五月蠅いわね!私達は特別だから全然平気なんだから!人間の方が弱いのよ!弱体め!」
「そう。まぁ、そうかもね。なら人類代表ハイブリット人間も特別参加ってことで手を打って頂戴よ」
「はぁ?」
訳が解らなかった。首を傾げると、頭上に影が映る。思わず顔を上げると、そこには大股開きで自分を飛び越え、コピーを踏みつけた女がいた。
「おりゃああああああああああ!」
そのまま勢いで銃口をコピーに向け、躊躇いもなく引き金を引く。黒い魔弾はガキン、と頭部が破壊される。
「ゾーイ、大丈夫?!」
「マノン…悪いわね、助けてもらって」
「仲間なんだからどこにだって駆けつけるよ。それに、少し頭整理したかったし」
マノンはゾーイの足にこびりつく氷を壊し、負傷部位にガーゼを当てる。
「なんなの…なんなのよ、アンタ」
「人類の更なる可能性、マノンちゃんだ!お前等を倒して、レンと改めて対峙する」
「レン姉様と対峙?馬鹿なこと言ってんじゃないわよ。レンお姉様はアンタなんかより強いんだから!」
相変わらずヒステリックな性格は変わらないのかと思う。ただ、なんというか。やっぱり二年前見たティーシとは全然違う。姿は全く同じでも、性格が似ていても違う。
「最先端同士、手合わせしようや」
・・・
モアはアレークと文字通り火花を散らす戦いをしていた。アレークが扱う鞭は柔にも硬にもなる。そして何より手足のように鞭を扱うのが厄介だった。
「おばあちゃん思ったより動けるんですねぇ。いやぁ、思ったより楽しめるかも」
口が耳元まで避ける様な笑顔に、引き攣るような感覚になる。
「あれあれぇ?アレーク、まだ戦ってんの?」
アレークが声のする方へ視線をずらす。完全にモアに対して油断している。そこに腹も立ち、止めを刺すよう喉目掛け剣を突きつける。
が、銃弾がそれを阻害した。モアも声がした方を見ると同じ顔をした少年…双子だろうか。黒髪の双子が剣と銃を持ちこちらを見ていた。
「アイオ、クロノ。どうしたの」
「つまらないから見に来ちゃったんだ。姉さん達がちゃんと勝ってるのか気になって。ね、アイオ」
「そうそう。負けてたら援護か俺達が戦ってやろうと思ってさ」
姉さん達…ということからあの双子も確実にクローンだろう。味方同士なのにピリついた空気に、モアは頭を抱えるのだった。




