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006 冒険者?

読んで頂き有難う御座います。

 お昼ご飯を食べるべく高級焼肉へと入り、10人用の個室を取って只今お食事中。

 黒狐はそこそこ草食らしく、肉も時折焼いて食べているが野菜や魚介類も焼いて食べているし、サイドメニューでサンドイッチやサラダ、野菜スティックを注文している。

 何やら女の子らしい注文の仕方だ。

 白猫はある意味男らしい。

 肉以外は要らぬばかりにひたすらに肉を焼いて食べている。

 レアが好きらしく、焼く時間も短めだ。

 俺は食べながら先生を使ってひたすら肉を網へ並べている。

 ひたすらに肉を食べる白猫。

 ひたすらに肉を並べる先生。

 白猫はまるでフードファイターの如し勢いで真剣勝負と言わんばかりに食べる食べる。

 肉だけ食べる。

 高級店の10人用だからか網は大きく1人当たりのスペースも大きい感じなので、俺と黒狐で1人分と少しのスペースを使っている。

 白猫は残りのスペース総てを使ってひたすらに焼き肉を食べている。

 広くて焼いたり取ったりするのは面倒だろうと先生を使って並べ、白猫の焼き方を見て好みの焼けた肉を皿へと投入して置いていたら白猫はいつの間にか食べる専門になっていた。


 「黒華も4人前は確実に食べているはずだからそんな事は全くないはずだけど、黒華が凄く少食に感じるこの不思議」

 「凄い勢いで食べてますね……私もお腹が空いていましたしが、セリアさんの食べっぷりを見ているとお腹がいっぱいになった気分になります」

 「ですなー」

  

 む?白猫が手を止めた。

 お腹いっぱいになったか?


 「私の事はセリアで構いません。私もクロカと呼びます。共に同じご主人様にご奉仕する奴隷同士で遠慮は不要でしょう」

 「はい。分かりました。セリア」


 黒狐の返事に満足したのか白猫は頷いて食事を再開した。

 まだ食事の方は満足してなかったんですね。


 「黒華は食べるのもう良い?」

 「はい。お腹一杯です。有難う御座いますご主人様。まともな物を食べるのは随分と久しぶりな気がします」

 「一応売られる前の奴隷の食事は知ってるけど、やっぱり不味いのね」

 「そう……ですね。美味しくはありません」


 だろうね。

 栄養はあっても不味いと言うか、不味過ぎて家畜ですらそのままでは食べれず、他の物と混ぜて薄めてようやく家畜用の食用として使えると言うラクスターの実をすり潰した物らしいし。


 「ご主人様。アレは不味いなどと言う物ではありません。拷問です」


 拷問とまで。


 「苦く渋くエグ味で、舌がおかしくなります。純粋に味の不味さで拷問に使える代物です。そして栄養を取るために決まった量を食べさせられます。吐いても吐いた物を残さずに食べる事を義務付けられています。その上食べる際は首輪は付いていますが、全裸で手を使わず四つん這いで食べなくてはなりませんし、逆らえば死ぬより酷い拷問と言われる【隷属の首輪】の激痛を伴う拘束が掛かります」


 うむ……知ってはいたが、経験者から聞くとまた違うね。


 「その拷問が日に二回あります。拷問食を食べる量としては多すぎますが、食事としては少なすぎます」


 そりゃー白猫の食事量を見れば納得だ。


 「基本的に獣人は多めに食べますが、私は白虎族で食事量が多い事を知られていますので拷問食の量は増えるのです。それでも量は全く足らないので常に空腹感を感じます」


 食べれば拷問。

 食べても空腹。

 逆らえば激痛。


 どう転んでもダメじゃん。


 「それ以外でも日に1度、理不尽に感じるそれが奴隷の当たり前だからと言う理由で全く逆らう事無く従っていても任意処罰を受けます。そうして心を折り道具としての奴隷に調教するそうです」


 うーむ……過酷だね。


 「それ以外の時間は買って頂けるご主人様に受けが良くなる様に教育を受けます。皆少しでも良いご主人様に買って頂ける様に必死で学びます」


 そりゃそうだろうね。

 誰だってその環境から解放される可能性があるのなら必死になるわ。


 「買われた奴隷が別のご主人様に買い取られる訳でも無く、要らなくなったからと言う理由で売りに出された場合の末路の話なども聞かされます」

 「売れる可能性と良い相手に買って貰える可能性が減るんだっけ?」

 「それもありますが、新たな奴隷を出産し続けるだけの出産奴隷と呼ばれる存在も居ますので」


 奴隷を生む奴隷ね。

 まるで牧場だな。

 いや、実際に奴隷牧場か?


 「うーむ……奴隷業界は過酷だね」

 「ご主人様に買って頂いた事には感謝しております。ご主人様に買って頂けなければ私は失敗キメラに買われていましたし」

 「ああ、うん。オークに捕まるのとほぼ変わらないってもの凄いよね。素でドン引きしちゃったよ。メス奴隷の主食と言えば精液に決まっておろうとか真顔で言ってたし」

 「ご主人様に買って頂けなければ私は今頃どうなっていたのでしょうね。想像したくもありません」

 「ですよねー」


 言う事は言ったと言う感じで改めて止まっていた手を動かし食べる食べる。

 白猫の胃袋は底なしかっ……いや、マジでどんな圧縮率で入っているのだろうか?

 先生の腹の様に亜空間があったりするのか?

 微妙に初めてガン〇ムに乗ったア〇ロの気分になってしまうんだが。

 凄い、胃袋の容量エネルギーゲインが黒狐の5倍ある!とでも言えば良いのか?


 「ご主人様」


 なんだい黒狐。


 「失敗キメラは如何に料理するご予定でしょうか?」


 失敗キメラと言う名は定着しつつあるね。


 「とりあえずは金運が消滅する呪いでも掛けて様子を見ようかと思ってたんだけどねー……お金くらいしか取り柄の無い恨みを買いまくってそうな存在からお金が無くなったら面白そうだなーって。後はまぁ汚職とか不正とか大量にやってるみたいだら、不思議な事に1番露見すると困る所へ証拠が~とか面白そうかなって思ってた。人望とか無いだろうし、お金でゴリ押ししてたんだろうけど、そのお金が無くなったらどうなるんだろうなーとワクワクドキドキしてました」


 俺の懐も温まるし。


 「素晴らしいです」

 「黒華がやって見たい事とかあるのなら追加も検討するよ?」

 「いえ、ご主人様のお手を煩わせる程の事ではありません。私は失敗キメラが苦しんで破滅するのであれば満足ですので」


 あれ?自分の手で直接できなくても良いの?


 「そう?淡白だね。端から細かく五百回くらい八つ裂きにしならが焼いてブタの餌にしてみるとか、色々あると思うんだけど。まぁ直接手を下す事に拘らないなら近い内に一族郎党打ち首獄門の上晒し首とかになるだろうし、ならなくても俺が必ずこんな目には絶対に合いたくないと思ってしまう様な惨状にするけど」

 「ご主人様も失敗キメラに恨みがお有りでしょうか?」

 「別に無いけど、セリアが俺の奴隷になった後でセリアにしようとした事を考慮すれば、普通に殺してあげるだなんて慈悲深い対応をする気にならないってだけだよ。後は強いて言うなら見せしめだね。いちいちあの手のバカやアホやマヌケを相手にしてことあるごとに毎回プチプチ潰すのも面倒だしね。無くなりはしないだろうけど、頻度くらいは減るでしょ」


 あの手のバカはどこからともなくゴキブリの如く湧いて出て来るのもだから無くなると言う事は無いだろう。


 「承知致しました。ご主人様のお手伝いをさせて頂きます」

 「あー……うん。失敗キメラの処理ならもうほぼ終わっちゃっててね。後は経過と結果を鑑賞するだけって感じかな?必要なら微調整するし、黒華が追加要素が欲しいなら後からでもできるだけ追加するけど、そっちが特に無いなら別の方向でやって貰う事はある」

 「別の事ですか?」

 「そう、と言うか元からそっちが本命だね。セリアもだけど、黒華も基本的には目立つ戦闘員として期待して買ってるから。当面の予定は冒険者ごっこだね。ダンジョンに入って魔物を乱獲して俺の冒険者ランクを上げる。ま、その前に冒険者登録からだけど」


 この世界ギルファーナは大きく分けて2つの大陸があり、文明があるのは片方だけなので事実上は文明が存在する方の大陸しかない。

 文明がある方の大陸には特に名前はないが、文明が無い方の大陸は暗黒大陸と呼ばれている。

 暗黒大陸に文明ができない理由は単純で魔物の質と量が桁違いだからだ。

 単純に大陸と呼ばれる文明域には大きく分けて3つの国がある。

 500年ほど前までは20近い大小様々な国が乱立する群雄割拠の戦国時代だったらしいが、今は三国志風に3勢力による三竦み状態となっている。

 

 人間至上主義帝国『セイル』通称帝国

 帝国は人間至上主義であり奴隷は亜人・獣人しかいない。

 亜人と獣人は総て奴隷ともいう。


 獣亜人連合共和国『リゲイル』通称共和国

 共和国は逆に人間が総て奴隷。

 エルフ・ダークエルフ・ドワーフ・ホビット・竜人・鬼人・狼人・虎人・兎人・狐人・狸人と様々な獣人・亜人が複合して国の形態をなしている。


 もちろん帝国と共和国は仲が悪い。 


 実力至上主義国家『マーセナル』通称王国

 王国はある意味では平等な国と言える。

 帝国と共和国の良い所も悪い所もごちゃ混ぜにしているとも言えるが。

 

 そして今俺が居る王国の辺境都市にして迷宮都市アルガムは世界で唯一の形態を持つ特殊都市として知られている。

 辺境の辺境たる理由は単純だ。

 人が済み易い地域から開発されていき、逆に何らかの理由で開発し辛い場所は後回しになっていく。

 アルガムが辺境都市な理由は300年ほど前までは魔物が多すぎ、危険すぎてとても開発できる状況ではなかったからだ。

 そんな中開拓が可能になったのは滅んだ古代魔法文明から発掘された秘宝が理由らしい。

 なんでもこの世界には魔物の一種としてダンジョンコアと呼ばれる存在があり、ダンジョンコアはダンジョンを作り出す。

 魔物の一種と捉えられているのは人間を捕食するとされているからだ。

 ダンジョンは周囲の魔物を強制召喚して内部に転移せる機能があるのだが、内部に人が入ってこないとダンジョンの外に魔物を放出する。

 それも人里を狙って大量の魔物が波の様に襲い掛かって来る。

 この現象をスタンピードと呼ぶのだが、ダンジョンを放置するとスタンピードが起きるのでダンジョン内に侵入し、内部の魔物を狩る冒険者と呼ばれる職に高い需要がある。

 見つかった秘宝と言うのがダンジョンコアの制御をある程度可能とする品なのだが、制御と言ってもできる事は2つしかない。

 

 1、ある種の結界を張り1つの階層だけを安全なエリアに変える機能。

 2、ある種の小規模な結界を張りちょっとした安全エリアを維持しつつ転移での移動を可能とするテレポーター機能。

 

 これだけしかできないのだが、その恩恵は計り知れない。

 この秘宝と言うか装置の最も凄い所は外部に魔力共有装置が外付けされており、事実上ノ―コストで運用できるという事だろう。

 必死で専門の研究者が解明しようとしているらしいが、あまりにも高度過ぎて成果は残念な事になっているらしい。


 ダンジョンの内部は様々な形態があるが、現在はアルガムと呼ばれる都市のある場所で見つかったダンジョンはかなり特殊であったらしく、1層辺りの直径が10kmほどのぶち抜きの円形をしているらしい。


 この特殊な形態と秘宝のコンボにより開発が可能となった。

 ダンジョン内の1層を丸ごと安全エリアに変えてダンジョン内から街を作ったのだ。

 そうしてできたダンジョン内都市を下層都市と呼び、ダンジョンの上に蓋をする様に後から作られた都市を上層都市と言う。

 上層も段階的に拡張されており、現在は第3層まで城壁があり、中心部から上層1層、2層、3層と呼ばれる。 


 迷宮都市は世界的に見ると20近く存在するが、迷宮内に都市が在るのはアルガムだけだ。

 

 その様な経緯があり辺境都市兼迷宮都市となり、ダンジョンがあるので冒険者が集まり、冒険者が居るので冒険者を対象とした商人が集まり、魔物の多い辺境での交易を行うために商人には護衛が必要であり、護衛として雇われる冒険者に需要がある。

 

アルガムはダンジョン特需で栄えた都と言える。


 そんな訳で当然の様に冒険者ギルドが在る。

 冒険者ギルドは依頼人と冒険者の仲介を受け持つ独立した組織だ。

 故にどの国にも存在し、村レベルではない事も多いが町と呼べる大きさになれば必ずと言って良い程に存在する。


 冒険者の基本活動は主に4つあり


 1、魔物を倒して素材の需要に供給する。

 2、商人などの護衛。

 3、街の中で可能なあらゆる雑用。

 4、有害指定された魔物の討伐。


 となる。

 冒険者ギルドに登録するための制限は事実上存在しない。

 強いて言えば初期の登録手数料に銀貨を1枚、100リル取られる事だけど日本人基準に換算すれば1万円だ。

 その金ですら無いならギルドが貸してくれる。

 つまり、本当に食い詰めてなにひとつ持たない孤児ですら冒険者になることはできる。

 

 まぁなんだ。

 無職者を減らして少しでも社会構造に組み込もうと言う職業斡旋所的な面も無きにしも非ず。

 登録するだけでも身分証明書になり、街に入るたびにかかる入街税の免除などの恩恵はある。

 もっとも、初心者級は仕事を一定の期間行っていないと登録を抹消されるが。


 冒険者にはテンプレ的にランクがあり、冒険者ギルドで買い取りされている有害指定された魔物の討伐証明部位の買い取り額のみをもってランクが上がる。

 

 Fランク  討伐証明なし

 Eランク  1万リル未満 

 Dランク  1万リル以上

 Cランク  10万リル以上

 Bランク  100万リル以上 

 Aランク  1,000万リル以上

 Sランク  1億リル以上

 SSランク 10億リル以上

 EXランク 100億リル以上


 と実にシンプルな事になっている。

 パーティーはあるが、パーティーの場合は討伐証明買い取り額が単純に頭割りされ、自動的に割り振られた額がギルドで加算されて反映されるのでパーティーランクは存在しない。


 なのでパーティーの場合は、『なんちゃらランクが何人と、なんちゃらランクが何人のパーティなんだぜぃ?』とかになる。


 ありがちなランクアップ試験とかもない。

 依頼にランクが条件として指名されている場合を除き、ランクが足らないと依頼を受けれないとかもない。

 

 もちろんそんな事をすれば身の程知らずの悪い意味での冒険者達がガンガン死んでいくのだが、この世界の冒険者に最も求められる物は戦闘力ではなくリスクコントロール能力とされ、それが無い者はどんなに強くてもすぐに死ぬと言われている。

 それだけならまだ良いが、大抵の場合その手合いの冒険者は周りを巻き込むのでそんなアホはとっとと死ね!と言う方針らしい。


 おつむの具合も含めて弱い奴は死ね!が標準仕様と言う訳だ。

 

 もちろんそれが冒険者を営む者の標準の認識であるため、その手のアホはハブにされ相手にして貰えなくなる。

 一般的な認識は

 

 F 街中雑用戦隊

 E 駆け出し

 D それなり

 C 一人前

 B ベテラン

 A 一流

 S 超一流

 SS 勇者的なナニカ

 EX 魔王的なナニカ


 となっており、ランクが高い=有害指定される魔物を討伐しまくってる=実力があると言う認識になっており、社会的地位が比較的高い。

 またS、SS、EXの冒険者には社会的に貢献しているとされ、特例としてかなり特殊な特典が付く。

 Sランクから名誉貴族と言う社会的地位が付与される様になり、Sランクで名誉伯爵、SSランクで名誉侯爵、EXランクで名誉公爵となる。

 名誉と付くので領地は無いし1代限りと決まっているが、それでも1つ目立つ特典がある。

 奴隷の所有制限上昇だ。

 Sで100体、SSで1,000体、EXで1万体となる。


 「俺は!社会貢献して!!奴隷ハー……間違った。EXランク冒険者になる!!!」


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