4話【四度目の電話】
――2027年7月7日(少女)
治療成功。
無事退院。
荷物を持つ両親と頭を下げる少女。
看護師たちに見送られる。
健康になった少女。
車窓から流れる七夕飾り。
暖かい日差し。
退院した喜びを伝えたい――
電話に願いを込める。
画面には――
【彦星様】
だが――
出ない。
不安げな顔でスマホを見つめる。
お願い……
……声を聞かせて……
少女は何度も発信ボタンを押し続けた。
――――
――2028年7月7日(青年)
傘を差す青年。
信号待ちしていた。
着信音が鳴る。
視線を落とす。
スマホ画面には――
【織姫】
……!
青年が通話ボタンを押そうとしたその時――
キキィィィ――
車が突っ込んできた。
ドガンッ――!
青年をはね飛ばし、信号機に激突する車。
宙を舞う傘。
スマホが道路へ転がる。
ひび割れた画面。
【織姫】
壊れた着信音だけが響く。
震える手を伸ばす。
あと数センチ。
届かない。
青年を呼び続ける着信音。
人集り。
「きゃぁぁぁ!」
「おいっ!大丈夫か――!!」
「誰か救急車を呼んで――!」
遠退く声。
広がる血。
雨が身体を濡らしていく。
意識が薄れる青年。
それでも――
必死に伸ばす手。
……声が……聞きたい……
やがて――
大音量のサイレンが、か細い着信音を掻き消す。
着信音が止まる。
ひび割れた画面。
待受に戻るスマホには――
あの時の、七夕飾りを背に笑う二人の写真。
そこに落ちる、涙のような雨粒。




