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雨の七夕 ~時間軸のずれた二人を繋ぐ、不思議な電話~  作者: もろ


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2話【二度目の電話】

――2024年7月7日(青年)


天の川が綺麗に輝く七夕。


青年は新たな人生を送っていた。


コンビニのバックヤードで休憩する。


その時。


ブルブルブル。


着信を知らせる振動。


画面には


【非通知】




もしかして――


青年は慌てて電話に出る。


「二年前の人!?」


思わず口走ってしまう。


だが少女は言う。


『二年前……? 今日は2025年ですよ』




……!?


青年は混乱する。


カレンダーを確認する。


今は2024年。




少女は一年後の世界に居た。


二人の時間軸は一年ずれていた。




『今年も生きてました――』


会話の中で少女は笑いながら話す。


違和感を忘れ青年も笑う。


波長が合う二人。





少女の声が急に落ちる。


電話越しに聞こえる微かな雨音。


その音に混じる少女の告白。




『私……本当は怖いんです』


『……死にたくない』


『でも……高額な治療費が足りなくて……』


『パパは、クラウドファンディングまで立ち上げてくれたんですけど……』


沈黙。


『私……来年まで生きられるかな……』




雨音だけが微かに聞こえる。


青年は初めて知る。


あの柔らかい声の裏で、少女は命と戦っていた。




「……」


かつて、死のうとしていた青年は何も言えなかった。




重い沈黙。




……彼女を助けたい。


そのためには――




唇を噛む青年。


考えを巡らす。




彼女は一年後に電話を掛けてきた……?


僕は二年後に電話を受けた……?




頭の中で違和感を整理する。




2025年の彼女……


2024年の僕……


……だから……この二年間彼女を探しても見つからなかったんだ。


そして……僕の世界線に彼女は――居ない。




……でも……二人の時間軸が近づいている。


もしかしたら――


一度だけ……彼女に会えるかも!




青年は一つの考えに辿り着き、少女に尋ねた。


「少し、そちらの情報を教えて欲しいのですが……」


『えっ?』


戸惑いの声。


それでも青年は続けた。


「この一年で起こったいろいろな出来事を、できるだけ詳しく知りたいです」




僕は七夕の奇跡に――賭ける。




――――




――2025年7月7日(少女)


病院。


抗がん剤。


副作用。


髪が抜ける。


それでも――この日のために懸命に生きてきた。


願いを込めて電話を掛ける。


繋がる。




「今年も生きてました――」


一年分の思いを乗せて話す。


時事ネタは、青年と何処か話が噛み合わない。


少女は首を傾げる。


それでも話す。


話したい。




「今年は大雨で七夕も見えませんね」


『来年は……大雨なんだ』


「でも、雨でも願いって届くと思うんです」


「今日みたいに……」




そして――


初めて少女は本音を打ち明ける。


告白する。




「私……本当は怖いんです」


「……死にたくない」


「でも……高額な治療費が足りなくて……」


「パパは、クラウドファンディングまで立ち上げてくれたんですけど……」


両親との写真を見つめる少女。


指先で両親をそっとなぞる。


「私……来年まで生きられるかな……」




窓に打ち付ける雨音。


『……』


電話越しで青年が沈黙している。




慌てて話題を変えようとした。


その時――




『少し、そちらの情報を教えて欲しいのですが……』


「えっ?」


戸惑いながらも質問に答える少女。


分からない事はスマホで検索した。




『二年後……いやっ来年の七夕にお会いできませんか?』


驚く少女。


「……はい」


少女に来年へ生きる約束ができた。


顔が緩む。




あなたに会いたい。


また一年、頑張って生きよう。




約束を交わす二人。

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