勝利のファーストキス
私の体を軽々と持ち上げる雹牙は、凄く頼もしく見える。
でも・・・。
「何アレ?!」
「イヤー!!伊藤君がぁぁぁ!」
「でもあの子、すっごい美人ぢゃん?」
色々聞こえてくる小声。
は、恥ずかしい・・・。
思わず顔を隠してしまう。
気づけば、誰も居ない裏庭に。
「小夏」
ずっと無口だった雹牙が、ようやく口を利いてくれた。
「な、なに?」
「降ろしていい?」
へ???
・・・あーぁ!!!
「ご、ごめんなさぁいっ!!」
私は慌てて雹牙の手から滑り落ちる。
「お、重かった、よね・・・」
「全然?ちょー軽かったー」
にこやかに言葉を返す雹牙。
ちょっと顔が赤い・・・。
今日暑いもんねー。
「てゆーか、頬大丈夫か?」
心配そうな顔で、見つめてくる雹牙。
「う、うん!!」
きゃー!
ドキドキしちゃうぅ・・・。
「なんか・・・ごめんな」
「え?何が?」
「俺が試合に呼んでなかったら・・・」
あ・・・。
雹牙はファンクラブを名乗る女の子達のことを言ってる。
「全然!雹牙悪くないし!」
痛いけど。
「こんな綺麗な顔に傷つけるなんて・・・」
私の腫れた頬に手を伸ばす雹牙。
「俺・・・まぢ最低だな」
苦く笑う雹牙。
ずるいよ・・・。
そんな風に笑っても、雹牙はいつだってカッコイイ。
雹牙の手が触れた頬は、痛みを忘れ、どんどん熱くなっていく。
「誰にでもしてるの?」
「え?」
雹牙は私の発言に驚いた。
勿論私も。
何でこんなこと言ってるの?
「誰にでも、こんな風に優しくするの?」
何故か、涙が零れてくる。
幸い、まだ一粒。
私の口は、ようやく正常になる。
「ご、ごめんね?
変な事言って!!」
何言ってるんだろ、私ー。
そう誤魔化す私に、雹牙の顔が急接近する。
「ひょ、ひょーが?」
ち、近いっ!!
「もう我慢できねぇわ・・・」
え?
何が?と聞こうとした瞬間。
私の唇に、柔らかい感触が広がる。
そう・・・。
触れるか触れないかの、微妙なキス。
「あ・・・」
私から離れた雹牙の顔は、熱中症レベルで赤かった。
「ごめん・・・」
私の目をしっかり見る雹牙。
「ぜってぇ勝つから、また後で話そう」
そう言い残すと、雹牙は風の如くに、走り去っていった。
「あ・・・」
私は、自分の唇に指で触れた。
そっか。
ファーストキス、終わったんだ。




