知らなかった事
再びボールを蹴る音が聞こえる。
皆の大声。
「海東さん」
不意に橘さんにスクイズボトルを頬に押し当てられた。
「~っ、ち、ちべたいっ!」
氷の入ったスクイズボトルは、結構温度が低い。
「なにすんのよぉ!!!」
ちょっと怒ってみる。
「ふふふ」
橘さんは、不敵に笑った。
こ、怖い・・・。
「ヤキモチ?」
「べ、別に・・・」
気づかれてる。
「ふーん」
どうでもよさそう・・・。
そんなことより!
「ゴールっ!!!」
「ナイス伊藤!!」
「雹牙、今何点入れた?」
「なーんか急に調子出てきたな!!」
さっきも凄かったけど、今はもっともっと凄い。
「伊藤、交代だ!」
かなりの点差を付けたからか、先生は他の人に交代した。
3年生と。
「三宅先輩、お願いします!」
「おぉ!」
三宅先輩。
3年生だけど、レギュラーに入った事はないらしい。
でも、明るくチームをサポートする、先輩の鏡。
「いい人だな・・・」
「そこは同感」
独り言を聞いてくれた!!
「は、はいっ!」
あたしは、伊藤君にスクイズボトルを渡す。
「サンキュ」
爽やかな笑顔で返してくれる。
ほんっとにカッコイイ・・・。
その時だった。
バッチン!!
凄い音が聞こえた。
「何?」
なんだろう?と聞こうとして、伊藤君の方を見た。
でも、そこには、すでに彼の姿はない。
「え・・・?」
「きゃー!!」
女の子達の絶叫が聞こえたのは、観客がいる所。
そこを見ると・・・。
「え?」
どうして?
そこには、小夏をお姫様抱っこする、伊藤君の姿があった。




