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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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7/25

プレイボール

『さあ、いよいよプレイボールです。大阪AR機構・オルカス対奥州マテリアル・レイヴンズのリーグ第12カード。ここまでオルカスが4勝1敗と勝ち越しています』

 アナウンスが流れる。しかしそれは球場の熱気にかき消される。

 フィールドの上に浮かぶいくつもの広告。おもに本拠地親会社のアークティック・リサーチ機構の広告である。AR効果により、立体的にフィールドの上に投影される。観客は非接触型ARコンタクトレンズを通じてこの画像を見ることができるのだ。

『......アークティック・リサーチ機構は広大な領海・排他的経済水域の資源を開発して20年。これからも皆様の理解を...』

 しかし、観客が見ているのはそれではない。

 本日のスターティングメンバーが繰り返し表示される。赤い髪を振り乱して送球を投げ込む女性の投手の動画。青い球は唸りをあげて、ミットへと収まる。

『本日の先発ピッチャー鷹見蓮子。背番号57!』

 完成が上がる。ビジターとはいえレイヴンズの応援団は大阪にも存在している。きわめて少数派ではあるが。青い烏が描かれた球団旗と、鷹見蓮子の名前が記されたタオルがぐるぐると観客席にうねりをつくる。

『久しぶりの先発です、鷹見投手』

『持ってるものはいいんですけどね。なかなか、本番で発揮できない感じで』

『先程レイヴンズは監督が交代しました。瀬木監督代行としては、なんとか負けを減らしたいところでしょう。そういった意味でも新戦力の登場は待たれるところです』

 きれいなマウンドで投球練習をする蓮子。それを受けるのは凛である。

『この二人も入団当初は期待されたんだけどなぁ。いまいち伸び悩んでるよねぇ』

『レイヴンズも焼きが回ったな。何回持つか』

 心無い評をするファンも少なくない。それだけレイヴンズはファンを裏切り続けてきたのだから。

「いい感じ、蓮子」

 そう言いながら凛はマウンドに近づく。

 無言の蓮子。普段からは想像もつかないくらい緊張しているようだった。

 これが蓮子の弱点である。いいポテンシャルを持っていながら、メンタル面で弱さを見せる。

 凛は決意する。

 少なくとも今日は強気のリードをしていこうと。

『プレイボール!!』

 AI審判による司会開始の宣誓が球場内に響き渡る。

 初球。

 150Kmを超す速球。しかし、外角に大きくハズレる。

 少し首を傾げる蓮子。

 それに対して、凛は同じ球を要求する。

『同じで大丈夫かな?』

『大丈夫、私を信じて投げて』

 お互いに『バルドル量子演算プロトコル』より意思疎通を図る。

 量子演算でも、腕が大きくブレない限りは次はストライクゾーンに放り込めるはず。

 こくんと頷く蓮子。

 振りかぶって――青い球が投げ込まれる。

 それを予測していた打者。

 ジャストミートに量子演算を合わせてバットを振るう。

 鈍い音。

 打球は鋭く跳ね返されるも、ファーストの守備範囲。

 蓮子はそれを読んでいたように――いや量子演算ですでにわかっていたことではあるが――

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