ミーティング
ミーティングルームに集まる選手たち。みなレイヴンズのベンチ入り選手である。大阪AR機構・オルカスの本拠地AR第三ドーム球場のビジターエリアに選手たちは集合していた。本日の18:30プレイボールに臨んで、作戦会議が開かれていたのである。
ルームの中空には可視化されたいくつもの図。選手たちは試合と同じAR投影による説明でミーティングの内容を理解するのだった。
立体的なスタメンのメンバー表が表示される。細かいネオセイバーメトリクスの指標とともに、蓮子と凛の名前も記されていた。
「今日の先発は鷹見蓮子」
女性の投手コーチがそう告げる。いえーいと、蓮子の合いの手。ほかの選手たちもそれにつられて笑う。
なんだかんだ言って蓮子はムードメーカーとしての資質は高い。今回、ベンチ入りしたのもチームの雰囲気を変えたいという気持ちもあるのかもしれない。
「スタメンキャッチャーは九条凛。お互い気心が通じているあたりでお願いしたい」
はい、と凛が答える。久しぶりのチャンス。これで結果が出せなければ、今シーズンの出場はもうないかもしれない。当然、気合が入る。
「凛、ミーティングしよ」
蓮子が凛の袖をつかみ、ブルペンへと引っ張ろうとする。
凛はプロテクターを手に、ミーティングルームを後にした。
「......いいんですか?監督代行」
投手コーチがそれまで奥の椅子に座っていた『監督代行』という中年の女性にそう話しかける、
その声はあまりに不安に満ちていた。
「大阪オルカス相手に、鷹見のような投手を使って」
ゆっくりと立ち上がる中年の女性。まったく投手コーチの言葉を意にも解さぬように。
「まあ、うまくいくさ。悪くはない選手だ」
「......私が言うのもおこがましいのですが、リリーフ陣も壊滅的で」
「あるだろう、『ダイヤの原石』が。そのために鷹見を先発にしたんだ。それ以上に九条をスタメンキャッチャーに」
投手コーチはびくっと反応する。
「『ダイヤの原石』って......まさかあの子を使う気ですか?あくまでもテスト生ということでベンチに登録しているだけでは......」
「おやおや、うちのチームはいつからそんなにぜいたくになったんだい?使いもしないピッチャーをベンチに入れるくらい」
「しかし......」
投手コーチの肩をポンと叩く監督。
「私が責任を取る。大丈夫、これ以上悪くはならないよ。それならなんでも試してみなきゃね」
そういわれて投手コーチは押し黙る。
奥州マテリアルレイヴンズと大阪AR機構オルカスのナイトゲーム。
スターティングメンバーが球団の応援歌とともに球場の中に響き渡る。
『奥州マテリアル・レイヴンズ、本日の先発は――レンコ・タカーミ!!』
ファンの歓声。絶不調でかつビジターであるにも関わらず、ファンは全力で応援する。ここからの復活を心から祈りながら――
ここから『ダイヤモンドヴァルキュリア』の新しい伝説が始まることとなる――




