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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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38/40

紙一重のスタンドイン

 3番バッターも同様に片付けるトウ華。

 先ほどまでの剛速球になれていたファルコンズナインは、右のアンダースローの繰り出す技巧派の投球に手が出ない、

 ドーム内に響き渡る、『あと一人』コール。敵地とはいえ、数少ないレイヴンズのファンのテンションはMAXに近づいていた。

 凜はマスクを外し、マウンドに駆け寄る。

「......どうする」

 口元をミットで隠し、トウ華に告げる凛。

「敬遠ってこと?しないよ、当然」

 トウ華はグラブの中でボールをパン、パンと軽く弾ませながらそう言う。架空の存在である青い球をめでるように。

 5番バッターも決して組みやすい相手ではない。しかし——スカディは別格である。

 しかし、凜は静かに頷いた。トウ華を全面的に信用する。結果がどうなろうとも——

 ゆっくりとネクストバッターサークルを出るスカディ。金色の長い髪をなびかせ、豪壮な応援歌が彼女を出迎える。

 一発が出れば同点、再び試合は振り出しに戻される。

 左の打席に構えるスカディ。片足を軽く上げ、ぎっとトウ華を青い瞳でにらむ。

 1球目。初球からあえて、内角への高速スライダー。

 スカディは慌てることもなく、完璧にタイミングを合わせそのボールを救い上げる。

 虚空に放たれるヴァルキュアの矢のごとく、放物線を描いてスタンドに吸い寄せられる青き彗星。

 凜は立ち上がる。トウ華は振り向くことなく、静かにスカディを見つめていた。

 ライトスタンドに一直線——しかし、しかしわずかにポールの外側に外れていく。

『ファール!ファール』

 判定のコールが告げられる。

 ほっとするレイヴンズベンチ。

 当然凜も。あと数センチの違いだったかもしれない。

 一方スカディは微動だにしない。バットを持ったまま、バッターボックスに立ち尽くしていた。

 トウ華も何事もなかったように2球目の準備に入る。

 もはやファルコンズファンもレイブンズファンもなかった。ヴァルキュリアボールを観戦する一観客として、この対決にただ固唾をのむばかりである。

 二球目の投球。今度は外角高めのボール。右に投げてから一番の速球である。

 ゆっくりと構えを展開させるスカディ。見逃すことはない。全力でスイングする。

 白球は外角高めいっぱいへ伸びていく。

 その刹那。

 青い球は糸が切れたように沈み、同時にストライクゾーンの外側へ滑り込む。

 高速スライダーとスプリットを掛け合わせたような変化球。その変化に凜自身が必死でミットを合わせようとするが——

 これまた、スカディはバットでその変化をとらえる。

 こんどは流すようにそのボールを三塁側へと打ちこんだ——

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