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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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37/40

絡み合う経糸と緯糸

 1球目。外角低めに放るトウ華。ストレート。さほどスピードは出ていないように見えた。巧打者晴海は躊躇なく初球をとらえに行く。

 しかし、晴海の手元で青いボールは地面から浮き上がる。胸元付近まで伸びるような感覚。バットの先でなんとか当て、ファールにするのが精一杯である。

 空中のAR情報ボードには球速134kmの表示。しかし実際には150kmくらいの速球のように感じられた。

『右のアンダースローならではのボールですね。落ちるボールは対応できても、浮かび上がるボールはなかなか対応が難しい』

 ボックスを外し、ヘルメットを弄る晴海。

 2球目。今度は内角低めぎりぎりのボール。バットを出すが、タイミングが合わない。100kmを下回るチャンジアップ。バットは空を切った。

 ちっ、と晴海は舌をならす。

 遅いボールにタイミングが合わない。

 先程まで160Kmの豪速球を投げていたトウ華が、今度はスローボールのチェンジアップ。まるで蚊がボールの上にとまってしまような遅さである。

 しかも左打者からは右のアンダースローの手の動きが見えにくい。ストレートなのか、チェンジアップなのかなかなか見当がつきにくいのである。

 3球目。サインを交わすこともなく、トウ華はセットポジションから投げ込む。まるで氷の盤面をはう、フィギュアスケートの選手のように。

 ボールが青い航跡をなびかせながら、凛のミットを目指して一直線に突進する。

 晴海は決断する。このストレートを叩くことに。『運命視』は内角に決定。たとえ縦の変化を下としてもこのスピードなら十分に対応可能だった。

 全力でバットを振り抜く。結果は引っ張ってライト後方の二塁打——になるはずだった。

 しかし、ボールはホームベースの手前で、まるで意思を持ったように軌道を変える。

 横へ滑る。

 そのまま終わるかと思った次の瞬間、

 今度は膝元へ向かって鋭く沈み込んだ。

 左右、そして上下。

 二つの変化が一つの軌道となって、白球は晴海のバットの芯を避けるように食い込んでいく。

 「ク……っ!」

 振り抜いたはずのバットは、最後の数センチで置き去りにされた。

 ゴツッ。木片を鈍器で叩いたような、鈍く重い衝撃音とともに青白き球はバットの根元をえぐり、そのまま力なく二塁前へ転がる。

 セカンドゴロ。

『なんと3球勝負!結果は天城の勝ち!』

『最後のボールは高速スライダーですね。右のアンダースローにあんなの投げられたらそりゃあ打ち損じますよ。ボールが曲がるんじゃない。左打者のバットをえぐりにくるボールですからね。家と言って見逃してもギリギリストライク。どうしようもない』

 解説が呆れた声でそう分析する。

 人差し指を内野手に見せつけるトウ華。

 凛はゆっくりとマスクを外し、トウ華を見つめる。

 「まずはワンアウト——」

 あと二人、あと二人でレイヴンズは勝利する。

 あと二人で——

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