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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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指名打者とは

『さあ、5回裏レイブンズの攻撃!氷室と天城の好投でここまでゼロが並んでいます。先取点を上げて、援護したいところ!レイブンズは下位打線からの打順。とはいえ、7番DHの佐々木。今シーズンは不調ながら、一発が狙える打者なだけに期待です!』

 解説が早口にそう告げる。本来ならば強打者を入れるべきDHだったが、レイブンズの打力不足という事情もあり7番に打順を落とされていた。とはいえ佐々木は先のシーズンで低打率ではあるもの二桁本塁打を記録した長距離砲である。ここは皆が一発を期待するところ――であった。

 ベンチから瀬木監督が歩み出る。

 不思議そうにそれを見るファルコンズベンチ。ここで監督が動きべき理由が見当たらない。

 主審に何かしら告げる、瀬木監督。主審は携帯端末にその申請を打ちこむ。

『ファルコンズ、選手の交代をお知らせいたします。」

 アナウンスにざわつく球場。三塁側も一塁側も同じく。

『指名打者、佐々木七余に代わりまして――」


『天城トウ華、天城燈華が指名打者に入ります』

 球場に響き渡るどよめき。当然である。到底まともな采配とは言えない。

『なんだそりゃ、瀬木監督何考えてんだ』

『今投げている投手が代打で出せるの?おかしくない?」

 あちこちで疑問の声が上がる。それをなだめるようにアナウンスが入る。

『なお、この交代により、天城トウ華投手は指名打者を兼ねます。これに伴い、レイヴンズの指名打者制は解除となります』

 ファルコンズコーチがタブレットで野球規則を検索する。

 公認ヴァルキュリア野球規則では 5.11(指名打者) の規定。

 『投手が指名打者の代打者または代走者になった場合:指名打者は解除され以降投手がその打順を務める』

 「旧野球から変更のないルール規定です。とはいえ――」

 ファルコンズコーチが監督にそう告げる。

「そのそも、打てる選手をDHに入れるのが当然な以上投手をあえて代打に出すのは意味がありません。ブラフかこちらの揺さぶりを狙ってのことか――」

 ファルコンズ監督はマウンド上の氷室を見つめる。

 投球練習を淡々とこなす氷室。

 動揺はない様に見える。

 一方、レイヴンズベンチから元気よく飛び出すトウ華。

 打撃用のヘルメットをちょこんとかぶり、ネクストバッターでぶんぶんと体に比して大きなバットを振り回す。

「本気なのか――」

 凜は口を押えながらそう漏らす。

 レイブンズベンチで平常を保っているのは瀬木監督くらいである。打席をはずされたDHの佐々木ですら、何が何やらわからない表情で状況を見つめている。

 プレイ!の掛け声とともに、ボールインプレイが宣言される。

 投げる方と同じ、左打席。

 かなりオープンスタンスな構え。

 氷室は一切気にせず、振りかぶって投げる。

 1球目。それはど真ん中のストレートであった――

 

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