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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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24/25

本拠地の戦い、始まる

 ――本拠地決戦――敵は首位を独走する福岡オービタル・エアロスペース・ファルコンズ。迎え撃つ仙台奥州マテリアル・レイヴンズ。シーズン当初は断トツの最下位だったレイヴンズもトウ華の活躍に刺激され、現在5位。いまだ借金生活から抜け出てはいないが、それでも勢いがあった。

 本拠地マテリアル・パークドームの様子を見れば一目瞭然である。

 詰めかけるファン。押すな押すなの喧騒。すでに指定席は満席で、外野自由席すら立錐の余地がない状態である。

 『天城トウ華』『九条凛』の横断幕が応援団席に翻る。

 予告スターティングメンバ―、ピッチャートウ華そしてキャッチャー凛。

 ここのところ負けなしのトウ華のピッチングの期待に、レイヴンズファンのテンションはほぼマックスである。

 大歓声の中、ブルペンで投球練習をするトウ華。そのボールを受けるのは当然凜である。

『トウ華ちゃーん!がんばってねー』

『パーフェクトゲーム期待してるぞー!トウ華!』

 ファンの声援に右手を挙げて応じるトウ華。

 いつもは二番手で投げるトウ華が今日は先発である。

 否が応でもファンの期待は高まる。

「ぼくの弁当食べた?」

 そういいながら、凜に飛びつくトウ華。

 弁当。そう人気選手は球団が名前を冠した弁当を球場で販売してくれる。これが球団の人気選手の証である。

『天城トウ華の放課後エース弁当!

 唐揚げ、チキン南蛮、そしてオムライス!まさに天城の球種のごとく縦横無尽にはじける味覚!

 これを食べて、トウ華の完全試合を応援しよう』

「......胃がもたれた」

 げっそりとする凛。トウ華がニコニコしながら持ってきた特製弁当を昨日、試食したのだった。

「こう、もっとあっさりとしたメニューにできなかったのか?」

「うーん。食べ盛りだからねぼくは。凛みたいに年取ってないし」

 トウ華の言い草にムッとはするものの、すぐに平静を取り戻す。

 今日はトウ華初めての先発。

 彼女の実力は推して図るべしだが、キャリア初めての挑戦である。

 トウ華とはいえ、表には出していないが多分緊張しているに違いない。

 こういう時に先輩である自分が彼女の精神的なケアを――

「何食べてんだー!」

 振り向きざまに凜は叫ぶ。

 そこには人工芝の上に座って、弁当をおいしそうに食べるトウ華の姿があった。

「うーん、やはり自分の名前の付いた弁当はおいしいねぇ。凜も食べる?」

「試合前に何やってんの!そんなことしたらピッチングに影響して――!」

 まるでコントのような二人をチームメートたちが見守っていた。

「トウ華のためにも、今日は打たないとな」

「先取点を取って、早く降板できるようにしてやろう。中学生に頼ってばっかりも情けないよ。レイヴンズの底力、見せてやろうぜ!」

 明らかにベンチの様子が違っていた。連敗していたころのあの、雰囲気とは

 それをコーチがうなずきながら見つめる。思わず涙も出そうである。

 一方、瀬木は相手のベンチの方をただ凝視していた。

 そこには、バッティング練習をする背番号1の背の高いバッター。

 スカディーナ=フォン=アルンシュタイン――ファルコンズの絶対的四番であり、そしてヴァルキュリアベースポールを代表するバッターであった――

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