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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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ファルコンズ不動の四番スカディーナ=フォン=アルンシュタイン

 スカディーナ=フォン=アルンシュタインは父親をドイツ人に持ち、日本で生まれる。

 小学生時代からヴァルキュリアリトルリーグで頭角を現し、中学2年の時にファルコンズに入団した。

 ユニフォームの背中には『1』の背番号と『スカディ』の名前が記されている。

 試合前のフリーバッティングで軽々とスタンドにヴァルキュリアボールを運ぶスカディ。

 驚く者は少ない。これが彼女の普段の姿なのだから。

 入団年はシーズンホームラン35本、打率3割越えを記録。新人王は当然のことながら、本塁打王や打点王のタイトルを独占する。

 本塁打王を逃した年もあったが、それでも球団いや日本を代表するスラッガーとして不動の地位を確保していた。

 やや白色が強い長い金色の髪が流れるとき、ヴァルキュリアボールはスコアボードの正面にたたきつけられる。

 悠々とダイヤモンドを巡るスカディの姿は、まさに『ダイヤモンド・ヴァルキュリア』の名前にふさわしい貫禄であった。

『スカディさんはメジャーに行くつもりはないのですか?』

 恐れを知らぬスポーツ番組の記者がそう質問する。スカディは練習をやめることなく、小さな声でつぶやく。

「私にとって、ヴァルキュリアベースボールはここだけだ。私がいる限り、ここが最高の舞台なのだから」

 ヴァルキュリアベースボールの発祥地はアメリカである。近年、その本場のメジャーを志望する選手も多い中で、スカディはかたくなにそれを否定していた。

 すぅ、とバッターボックスで構えるスカディ。

 打席に入った瞬間、空気が一段、引き締まる。

 胸の高さにグリップを構える。オープンスタンスであるが、重心はしっかりしている。

 まるで神主が祓う大幣のように垂直に立てられたバット。それはまるで天上の神を指し示すがごとくにピクリともしない。

 前足――右足が、ゆっくりと持ち上がる。

 膝が胸元まで高く引き上げられ、そこで一瞬、時が止まる。

 一本足。

 明らかに不安定であるはずのこの態勢が、まるで何かの彫刻のように完成されたもののように感じられる。

 軸足にすべての力を預け、身体はわずかに投手へ傾く。

 バッティングピッチャーがヴァルキュリアボールを投ずる。

 ストレートの速球、内角低め。

 右足が下りる、その刹那。

 バットは空間を切り裂く。

 その瞬間――一切の無駄も誇張もなく青い球はまたスタンドに吸い込まれていった。

 それをベンチから凜はじっと眺めていた。

 いつ見ても、スカディの絶対的な存在感には圧倒される。

 実際、何度もレイヴンズはスカディに苦汁をなめさせられていた。

 その相手に初めて挑むトウ華。

 どのようなリードをすべきか――凜は自分の顔を両手でたたく。

 試合は、もう始まろうとしていた――

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