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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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22/25

巡る運命と観覧車

 あっという間に時間はすぎる。

「動物園行こうかと思ってたら、あっという間にこんな時間になってたね~」

 腕時計を見ながら、残念そうにトウ華がもらす。

 いっぽう、ぐったりとする凛。

(これが......現役女子中学生の......体力か......)

 コークスクリューに四度乗り、空中サイクロンにも五度乗った。手加減無しの連チャン。さらにはファーストフードをはしごするなど、とにかくやりたい放題の『デート』であった。

「じゃあ、今日は半日分ってことで。そのうちまた遊びに来ようね。今度は動物園に」

 閉園間近の観覧車。その中に二人はいた。

 景色を見下ろしながら、足をぶらぶらさせるトウ華。その面立ちはいかにも年相応である。

 ぐったりしながらそれをじっと見つめる凛。

 こんな少女がマウンドに立つと、日本屈指のバッターを次から次へとなぎ倒す怪物投手に――

 そもそも、凛はトウ華のことをあまり知らない。

 なぜ自分にこんなに『こだわって』いるのかも。

「トウ華」

 ん?と嬉しそうに振り向くトウ華。自分の名前を呼んでくれたことが嬉しそうだった。

「そもそも――トウ華のボールを受け止めるのは私でなくてもできるのではないか?世の中にはもっとうまいキャッチャーがたくさんいる。ファルコンズの長野さんとか――」

 静かにトウ華は首を振る。

「ダメなんだ。凛じゃないと。ボクの球を受け止めるのは」

 外を見ながらそう寂しそうにトウ華はつぶやく。初めて見る表情にすこし凛は戸惑った。

「ボクは昔から凛のファンだったんだよ。そう、かなり昔から」

「昔って――私がデビューしたのは四年前で、そんなに活躍も――」

 そっと凛の唇にトウ華の人差し指が添えられる。

 白くそしてどこまでも細い人差し指。この指があの豪速球を投げ込んでいたとは到底信じがたい。

 顔が近づく。

 銀色の髪の毛が少し、凛の額にかかる。

 透明な――そしてどこまでも無機質なトウ華の存在。息をしているはずなのに、生き物の熱が感じられない。

 なればこそ先程まであんなに活発だったのが、まるで嘘であったかのようにも思われる。

 まるで人形のように静かに、そして微動だにせず。

 こつんと額に当たる感触。トウ華が凛のおでこにじぶんのおでこを軽くタッチしたようだった。

「まあ、いきなりいろいろ種明かししても面白くないし。ゆっくりお互いの秘密を打ち明けていこうね。秘密を知っていく時間って、嫌いじゃないでしょ。そういうのが『恋』っていうもんだからね」

 はあ?、と赤くなりながら凛はおでこを抑える。

 なんというか、とんでもない中学生である。同性同士で、しかも年上を相手に。

「最初だからね、キスは遠慮したんだよ」

 トウ華の言葉に更に赤くなる凛。

 そうこうしているうちにゆっくりと観覧車は、地上に達する。

 トウ華が凛に左手を差し出して促す。

「さあ、またはじまるよ。僕たちの舞台が。ヴァルキュリアのダイヤモンドになるための――」

 無言でその左手を握る凛。

 明日からは本拠地での試合が始まる。敵は――首位を独走する福岡オービタル・エアロスペース・ファルコンズ。

 トウ華は予告先発と発表され、初戦のマウンドに立つこととなる――

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