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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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20/25

街を巡る

 本拠地でありながら、凛はあまりこの街を歩いたことはない。出身は東北ではあるが違う県。どちらかと言うと旅行先のような感覚である。高校入学の際に入団したことから地元の高校に籍をおいてはいるが、野球漬けということもありあまり身近に感じないのも事実である。

 高校のクラスメート――とも決して絶縁というわけではないのだが、やはりプロ野球のほうに重心が置かれる。勉強自体は問題ないが、高校生らしい生活というものをこのかたついぞ味わったことがなかった3年間だった。

 しかし、今日はその地元でデートである。

 まずはアーケード街を練り歩く二人。

 なるべく視線を落としがちにする凛。一方トウ華はそんなのはお構い無しに大きな声ではやしたてる。

 あまり凛は自分の素性を知られたくなかった。半一軍の選手とはいえ奥州マテリアルレイヴンズのお膝元である。熱狂的でなくてもそれなりにファンは多い。とうぜん凛のことを知っている一般人もそこらかしこにいるのだ。

 とりわけ、最近は活躍している。トウ華とのコンビで『レイヴンズの救世主』などと地元メディアがもてはやしている。

 ヴァルキュリア・ベースボールは女性が選手のためアイドル的な要素もあるとはいえ、凛はあまりそれを受け入れたくなかった。

 ふと、横を見るとトウ華がいない。

 後ろの方で女子高生たちと握手しているトウ華。

「凛もおいでよ~。一緒に写真撮りたいんだって~」

 凛はげっそりする。ファンサービスは興行野球に属している以上、必要不可欠ではあるが個人的には好きではないのも事実である。

 トウ華と並んでポーズをとる凛。

「かたいよ~もっと笑って」

 そう言いながらトウ華が凛にのしかかる。歓声を挙げる女子高生。

「......勘弁してくれ」

 げっそりした感じでそう凛は吐き捨てる。

「まあ、こういうのも必要だからね。ファンあってこそのヴァルキュリア・ベースボールじゃん。ありがたいことですよ」

 そう言いながら、去りゆく女子高生たちの後ろ姿を両手で拝むトウ華。

 この姿勢は学ぶべきものがあるな、あんまりしたくないけどと心のなかで凛はつぶやいた。

「さて、せっかくだし牛タン食べようか。牛タン」

「......地元の人は食べないよ」

「ボクは凛とバッテリー組むために仙台に来たんだよ。いろいろ教えてよこの街のこと。あ、動物園と遊園地があるんだっけ?食後はそこに行こうよ!」

 正直ぐったりする凛。まだ試合の疲れが取れてない感じもある。一方トウ華は先発ではないものの80球以上投げているはずだ。

 いかに体力が余りまくっている中学生とはいえ、あまりに体力オバケではないのか。

「今日は凛を離さないよ。まあ、今日だけでもないけどね」

 トウ華に手を引かれる凛。

 ふと、凛は気がつく。

 そういえば自分はこういうことを高校入学から全くしていないことに――

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