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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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19/25

ご褒美デート

 衝撃的なデビューから一ヶ月が過ぎた。

 トウ華はその間、四度登板し三勝を挙げる。失点することもあったが、それほどは大崩しない。防御率は2点台。なによりここ一番で抑えることがトウ華の持ち味である。その秘密を知るものはキャッチャーの凛とそれに対戦した打者のみであろう。2つの未来を持つ『シュレジンガー・カッツェ』と相手の『運命視』の結果を無効にできる『ユグドラシル・プロトコル』の発動。二段重ねで張り巡らされた勝利の方程式はいまだ破るバッターはリーグに存在していなかった。

 無論、観客はそれを知らない。

 突如現れた天才中学生少女。新『怪物』、剛速球JC、レイヴンズの救世主など様々に称される。

 レイブンズは相変わらず勝率5割を切っているものの、トウ華の登場する試合はすべて勝利しその勢いのままに勝利数を順調に伸ばしていった。

 先日もトウ華は4回から最後まで投げきった。

 ロングリリーフ、というのも変であるが瀬木監督はトウ華を先発には用いず、先発投手が崩れそうになった時にトウ華を投入した。

 その後、レイヴンズが得点で上回ると、最終回まで投げきり勝利投手となるといった流れである。一度だけ逆転しない時があったがその時は引き分けでゲームが終了した。勝率は10割。このまま行けば6月の月間MVPの目も見えてくる。凛の評価も上がる。

 トウ華が登板する際には必ず凛もスタメンをつとめる。

 これぞいわば勝利の方程式。打率も2割に到達し、ここ一番での打撃は下手な中軸よりも信頼を集めていた。

 皆は知らない。

 凛がトウ華の登板の際に必ずマスクを被るのは、彼女しかトウ華の投球を受けることができないということを――


 6月の第1週月曜日。今日は試合がない日。あわせて昨日登板したトウ華は休日である。そして凛も。

「練習したかったな......」

 手にフローズンフラッペのペットカップを持ちながら凛はそうもらす。高校の制服。あまり目立ちたくないという凛の普段着である。

 一方そのそばにまとわりついているのがトウ華。オーバーサイズのパーカーにカーゴパンツ。そして白いスニーカー。遠目には男の子と見えなくもない。長い銀色の髪を結って、帽子の中に入れている。

 レイヴンズの本拠地仙台の街なかを歩く二人。

 恋人、同士には見えない。姉と弟といった感じであろうか。

 しかし、彼女らにとっては『デート』である。

(なんで私が......)

 凛はそう心のなかで繰り返す。

 しょうがない。約束したことだった。約束していた『明日』のハズだったデートを伸ばし伸ばしにしていたのだから。

 女同士でそういう趣味なのか、と思うこともあったがどうもそうでもないらしい。

 凛は自分に対する執着を今ひとつはかりかねていた。 

 ぎゅっと制服の裾を掴むトウ華。下から見上げるようにじっとトウ華が見つめる。

 間違いない。これはデートであった――

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