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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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18/25

世界創造

 美濃川に襲いかかる変化球。

 それはスライダーでもあり、スイーパーでもあった。

 先程の柳川はそれを打つことができなかった。

 しかし、美濃川は違う。

 この最後の打席、最後の一打にすべての『運命視』のパラメータを振り分ける。

 たとえ、スライダーだろうがスィーパーだろうが美濃川の望むコースにヴァルキュリアボールは収束する。

 それを力のかぎりジャストミート。

 そのまま、外野スタンドを突き刺すという『運命視』のシナリオだった。

 あきらかに、トウ華はおされていた。

 シュレジンガー・カッツェのボールが一つに収束しようとしている。

 まずい、と言葉を漏らす凛。しかし、もう成すすべはない。

 このまま、逆転を食らってしまうのか。

 その時、時がとまる。

 すべてのものが動きをとめて、凛の眼の前に放り出されたのだ。

 いや、動いている存在があった。

 それはマウンド上のトウ華。彼女はグローブを手に、天を仰いでいた。背中には『バルドル量子演算プロトコル』による拡張効果だろうか、天使のような大きな羽が大きく翼をひろげていた。

「これでラスト。正直、いまのボクの『運命視』では美濃川サンには太刀打ちできない。ならば――この打たれる世界を一旦崩壊させる。別な世界の創造。大丈夫、ボクだけではできないけど凛と一緒ならできる。祈っておくれ、ボクのために。さあ――」

 右手を差し出すトウ華。ゆっくりと凛は立ち上がり、その手を掴もうと歩き出す。

『ユグドラシル・プロトコル発動。新たな世界が創造されます』 

 『バルドル量子演算プロトコル』がそう告げる。

 美濃川がホームランを打つ世界線。それが一度目の前で再生され、そしてまたそれは巻き戻る。

 美濃川のフルスイング。『運命視』により、ボールをミートする世界――は改変された。

 青いボールの下を大きくすり抜けるバット。

 そしてそのボールは大きな音とともにミットに収まる。

 時速は167km。本日最速のストレート。

『スリーストライク、バッターアウト。ゲームセット!』

 響き渡る試合終了のコール。

 湧き上がるレイヴンズの応援スタンド。

 そしてベンチから飛び出してくるレイヴンズの選手たち。

 ここ最近、このような勝利を経験していなかったチームのことである。嬉しさも尋常ではない。

 しかし、瀬木監督はそっとウィンドブレーカーを羽織るとベンチをあとにする。

 それを横目で見る凛。

 しかしすぐチームメイトたちにもみくちゃにされる。

 敵地とはいえ、ヒーローインタビューは凛とトウ華二人だけのものであった。

『放送席、放送席。本日のヒーローは途中から投げすごいボールで勝利を勝ち取った天城投手と、決勝のタイムリーを放った九条捕手です!』

 わぁ!という拍手。本日の試合の様子がリプレイ動画で空中に投影される。

 最後の一瞬。

 そこには美濃川がホームランを打つシーンは当然、映っていなかった――


第1章 完

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