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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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16/25

9回裏一打逆転

 凛の逆転打のあと、両チームとも凪のように打線が湿る。

 レイヴンズは継投策に出たオルカスの中継ぎの前に沈黙を余儀なくされ、一方オルカスの攻撃は――

『天城!この回も抑えました!』

『三回裏に柳川を三球三振にしたあの球威ほどすごくはないんですけどね。全体的に力をセーブしていると言うか......』

 打たせて取るピッチングに切り替えるトウ華の投球。まるでベテランのように、微妙なところを外してアウトの山を築いていく。

 あれ以降『運命視』は発動していない。

 サインも凛が出したものをそのまま受け入れ、そのとおりに投げている。

 キャッチャーとしての凛は投球の組み立てが巧みであった。

 その点は入団時から評価されていた。

 問題はレイヴンズにその投球通りに投げられるピッチャーがほとんどいなかったということである。

 蓮子はやや、コースにばらつきがありそしてメンタル的に追い込まれると失投が目立つ。

 一方トウ華はそうではない。たとえサインの結果打たれたとしても、動ずることなく次のバッターに対峙し凛の求める通りの球種コースを投げ込むのだった。それはまるで穴を通すようなコントロールで。

『まあ、凛のいうことなら何でも聞くからね』

『バルドル量子演算プロトコル』経由で凛に直接コンタクトしてくるトウ華。ハートという絵文字まで付けながら。

 それを瞬時に抹消する凛。

 しかし、規格外である。

 球速は抑え気味とはいえ150km前後で安定している。あまり、疲労も感じさせない。これで本当に中学生なのか。

 もしかしたら――このままオルカス打線を――

 9回表、レイヴンズの攻撃は結局0点に終わる。

 得点は2-1。1点差のまま、最終回裏を迎えることとなる。

『さあ、最終回!1点差ということで抑えを出したいところではありますが』

『まあ、レイヴンズの抑えが佐野にしても、天ノ田にしてもイマイチ信用がありませんからねェ』

 昨年は30セーブを上げて、守護神として君臨していた佐野は今年不調。勝てる試合を何度も落とし、『佐野大明神劇場』なる不名誉な名前をファンから付けられていた。代わりにセットアッパーからストッパーになった天ノ田もいまいちピリッとしない。

 当然瀬木監督は動かない。

 投手コーチもこれは理解できた。

 多分、トウ華を継投させることが勝利の確率を最大化することだと。

 1アウトは簡単にとる。

 次のバッター、本来は振らせるはずの変化球が見逃しとなり四球で出塁。

 そこで球場内にコール。

 『3番 ライト美濃川実里背番号7』

 登場曲とオルカスファンの期待を背に、美濃川が登場する。

 ここで一発あれば逆転。

 トウ華は帽子を深く被る。決して、緊張はしていない。いやむしろ、感情の高ぶりを感じていた。

 試合はクライマックスの最高潮。

 この一打席にこの試合の運命が託されることとなる――

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