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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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15/25

左中間を貫く青い球

『ボクの声が聞こえる?』

 間違いない。トウ華の声。ビクッと凛は反応する。タイムをかけバッターボックスを外す。

『気にしなくても大丈夫。このコミュニケーションは誰も聞こえない。たとえ、『バルドル量子演算プロトコル』のアドミニストレータでも。二人だけの世界だよ』

 思わず人工芝を強く踏みしめる凛。いちいち気に障る事を言うガキである。

『だったら――なんだ。かわりに『運命視』をしてくれるとでも言うのか』

『うーん、それもいいんだけどね。でも、ボクが助力するまでもない。なぜなら凛は打てるからさ。このチャンスに』

『.......』

 凛は言葉に詰まる。

『まあ、凛の普段の成績から予想すればここは凡打。いっその事スクイズなんか考えてもおかしくない。いいとこ犠牲フライかな。でも、違うんだなそれは』

 一呼吸おいてトウ華は続ける。

『外しているのは結果であって、選択は外していない。あの時、ボクのボールを受け止めたことも。 なにより、先程のピンチでもボクのボールを受け止めることのできたその選択。そして、ボクの最愛のキャッチャーであることを受け入れたことも』

 後半、チャンネルを切る凛。

 なぜこんなに好意に満ちているのか理解に苦しむが、一方で気になることも行っていた。

『外しているのは結果であって、選択は外していない』

 凛はいつも悩んでいた。相手ピッチャーの『運命視』に抗い、結果自分の一番狙っていた球を打ち損じていることに。

 自分がいまいち信じられない。

 プロ初めての打席。その時自分の『運命視』の力の限界を悟った。

 それ以降、凛は常に後手のバッティングを余儀なくされていたのである。

 ――選ぶ。

 凛は、目を閉じる。

 外角。

 内角。

 落ちる球。

 逃げる球。

 無数の軌道が、頭に浮かぶ。

 ピッチャーはセットアッパー永山。決めはフォークのはず。だとすれば決め球は――

 目を開く凛。

 内角低めのストレート。他は、消す。

 投球動作に入る永山。

 ——来る。

 ボールは、二つに揺れた。

 内角低めの早い軌道と、下に落ちるフォークの軌道。

 凛はタイミングだけを合わせる。

 内角低めを思いいっきり引っ張る凛。

 その瞬間、軌道が、一つまとまる。

 乾いた音。

 ボールは、一瞬だけ止まり、そのまま左中間へ抜けていく。

 前進守備の横をすり抜け、フェンス沿いに転がる打球。それほど会心の一撃というわけではない。

 しかし、結果はついてきた。外野が追いつく間に2塁ランナーそして1塁ランナーがバックホーム。

 必死で走る凛。

 凛は、走りながら振り返る。

 信じられない、という顔で。

 結局、二塁に戻ったボールでタッチアウトになる凛。

 とはいえ、アウト前に入った点数はフォースアウトではないので消えない。

 AI審判がチャンジをコールするも、ドームには大きな歓声と応援コールがこだまする。

 2-1。ついにレイヴンズが逆転した瞬間であった――

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