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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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11/25

『運命視』

『165......165Km!!すごい!初球で160を超えました!バッターの柳川も手を出せず!』

 空中に浮かび上がる時速103マイルの表示。『バルドル量子演算プロトコル』により女性でも150Km台の剛速球を投げることは可能とはいえ、160を超える選手は数少ない。それも中学生が。

 手にびりびりとしびれが走る。二度目の感覚。それはあの通り魔の現場で受けた三球目のボールの感覚と一致していた。

 座ったまま、返投する凛。踊るように小さな体のトウ華がそれを受け止める。

 再び振りかぶってボールを投じるトウ華。

『もう少しギア上げてくね!受け止めて、私の愛を!』

 これは野球のサインなのか?というメッセージが『バルドル量子演算プロトコル』を通じて凜の頭の中に広がる。

 再び真ん中にミットを構える凛。その瞬間に再び青い矢がずどんとミットに納まった。

 バッターの柳川はど真ん中の直球に手を出すも振り遅れる。単なる速さだけではない。伸びも感じさせる投球に完全に圧倒されていた。

 ヘルメットの鍔に指をかけ、バッターボックスをはずす柳川。今季四番を任されている中堅の選手である。打点王を獲得したこともある、オルカスの主力選手であった。ちっ、と舌打ちをする。今まで見たことのないようなストレート。先ほどより球威が増しているようにも感じられた。

 しかし

 柳川は気を取り直す。

 このヴァルキュリアベースボールでもっとも大事な要素。それは『運命視』の能力である。

『運命視』をピッチャーが使用することで、望んだコースにボールを投げ込み三振を狙う。

 一方、バッターはそれを読み自らの『運命視』により、バックスタンドへボールをはじき返す。

 最終的につまるところは、『運命視』の能力がどれほど大きいのかの勝負に収れんするのだった。

 ならば、柳川は有利なはずである。相手は中学生そして初マウンド。『バルドル量子演算プロトコル』にもまだ慣れているとも思えない。

 意識を集中する柳川。『運命視』が構築される。

『次の球。外角に外す変化球スライダー。それで空振りを誘う。それを流し打ち。右方向二塁打。二者生還』

 これで3点先取。プロの洗礼を受けるべきだろう、と柳川は納得する。

 当然凜もそれを察していた。

 外すなら、大きく。相手の挑発に乗る必要はない。ここは立ち上がっても――と思った瞬間、トウ華が振りかぶる。

 サインがない。サインを出すことも受け取ることもなく、いきなりトウ華は投球を開始したのだった。

 先ほどよりは速度は遅い。多分、変化球。とっさに外角に構える凛。

 まずい!このままでは――

 静かなフォロースルーのままトウ華はただうつむいていた。

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