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ダイヤモンド=ヴァルキリア~青白き球の女神たち  作者: 八島唯
第1章 ダイヤモンドの原石

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10/25

ピッチャー天城トウ華登場

 無言でマウンドをおりる蓮子。

 その表情には悔しさがにじみ出ていた。

 凛も一緒にベンチに戻ろうとする。しかし、それを瀬木監督が止める。

「九条。お前はそのままだ」

 おかしい。あくまでも蓮子のバッテリーとして抜擢されたはず。蓮子が降板するのであれば、私も――

 空中のバーチャルフィジカルマッピングに表示されるネクストピッチャー。顔などの画像はなく、名前と記録だけが文字で表示される。

『奥州マテリアル・レイヴンズのピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー鷹見蓮子に代わりまして、ピッチャー天城トウ華。背番号88』

 天城......トウ華......?

 首をかしげるオルカスベンチ。それはレイヴンスベンチも同様であった。

『あれ、そんな選手いたっけ?』

『背番号88って、コーチじゃないの?』

 そんな声がベンチから聞こえる。

 観客たちもまた同じ疑問を抱えていた。

『あ、検索しました。一週間前に育成選手から支配下登録されています。一軍には昨日登録。中学2年生の選手です』

 実況がそう答える。

『私も聞いたことないですね。あまりに特殊な選手登録で起用です。何か意味があるのですかねぇ。』

 解説の女性がそう漏らす。彼女は情報通で有名なヴァルキュリアリーグの元選手である。そんな彼女でも知らない――少女がマウンドに向かおうとしていた。

 身長は160CM程度。ヴァルキュリアリーグの平均と比べてもかなり低い。帽子からまるで馬のしっぽのようにはみ出た髪は銀色に揺れる。ゆっくりと、ゆっくりとマウンドに歩み寄りながら。

(......)

 凜も知らない選手。凜はベンチの方を振り返る。球場の天井を見つめる瀬木監督。何の指示も与えられることはなかった。

 野球帽を深くかぶり、トウ華と名乗るピッチャーはマウンド上に仁王立ちになる。

 軽く投球練習。

 左投手。オーバースロー。ややスリースコーターに流れるフォーム。

 中学生としてはしっかりとした球ではあるが、あまりすごみは感じられない。明らかに蓮子の方が格上に感じられた。

『さあ、ノーアウト12塁。プロ初登板でいきなりのピンチ。天城、どんな投球を見せてくれるのか?』

 実況の声にあはは、と解説が乾いた笑いを漏らす。

 息をのむ観客。侮るような視線を送るベンチ。様々な感慨がドームを支配した。

『初球は外角に外す。コースは――』

 凜は『バルドル量子演算プロトコル』に接続してトウ華にサインを送ろうとする。

 その次の瞬間――頭の中にはじける声。

『ど真ん中!いくよ!マイダーリン!」

 少女の声。とっさに凜は真ん中にミットを構える。

 その次の瞬間、青き矢がミットめがけて流星のごとく駆け巡る。

 この時、この場にいたすべての人間は目撃した。

『ダイヤモンド・ヴァルキュリア』が初めて投じた一球を――

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