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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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第三十九話

体育館の観覧席に腰を下ろすと隣に鞄を下ろした。


下では水戸や部活メンバーがいて全体が見下ろせる位置に

いるのだ、こうやって改めて見ていると動けない自分が惨

目に見える。


月島は運動が苦手だ。

だから観戦する事が多かった。

体育祭でも、参加するというより応援の方に力を入れるタ

イプなのだ。


目立って美形でもなく、特徴的な顔付きでもない為、いた

って平凡な月島には誰よりも目立つものなどない。


最近では一年の王子様こと、楠木祐介が毎回尋ねてくるの

で、多少女子に嫉妬の目で見られるくらいには名を覚えら

れる程度だった。


「僕も多少は動いた方がいいかな〜」


ぼんやりと眺めていると、いきなり足音が聞こえてくる。

ここには誰も来ないと思っていただけに驚くと振り返った。


そこにはさっき女子達と一緒に帰ったはずに楠木が荒い息

をしながら入ってきたところだった。


「どうして?…帰ったんじゃ………」

「どうして…どうして貴方は……、ここではなんなのでちょ

 っと来てください」


腕を掴もうとしてきたのを、咄嗟に引っ込める。


「いやだっ……もう来ないでって言ったはずだけど…」

「俺には聞きたい事があるんです」

「僕には…ないよ…」


俯く月島を見ると、どうしても聞かずにはいられない。

楠木にとっては知らなくてはならない事でもあったからだ。


「あの日、先輩は別れを切り出すつもりできたんですか?」

「……」

「だったら…それならなぜ、俺に抱かれるような事をしたんで

 すか!俺は…月島先輩の事が好きです。ずっと…高校を受験

 した日に会ってからずっと…」

「…えっ……会ったのってあの教室が初めてじゃ…」

「違います、ずっと先輩を探していたんです。初めて好きにな

 った人だったから」


そんな事を言われても、あの日見た事は忘れられない。

お似合いのカップルだった。


男の自分なんかよりもずっと。

側から見た感じ親密そうで…そこに入っていける気がしなかった。

いつも女子を連れていることは変わらないが、自分から触る事は

なかった楠木が自ら腰を抱き寄せていたのだ。


信じないわけにはいかなかった。

諦めるように、自分を偽るしかなかった。

あの時、自分に言った言葉はきっと、その場しのぎの言葉だろう

と思ってしまう。


信じ切るだけの確証が持てなかった。


「何を言われても、もう遅いよ…」

「先輩っ……」

「理由が聞きたいって言ってたよね?教えてあげるよ…抱かれて

 みたかったんだ。誰でもよかったんだよ、抱いてくれるなら…」

「嘘だっ…先輩はそんな人じゃない!」

「見えてなかったんだね…僕はそう言う人間だよ。誰とだって付

 きあえるような、そんな人間なんだよ、だからもう来ないで」


今度こそ、はっきり言えた。


あの時はうやむやになってしまったけど、もうこれでおしまい。

何もかも夢のような恋愛も、終わりなのだ。


そう思うと少し寂しく感じてしまう。

少なからず、月島は一緒にいて楽しかったし、本気で好きになり

かけていた。

だからこそ、寂しいし、悲しさが募ってくるのだろう。


それもすぐに忘れる。

だって、まだ若いし、これからも出会いはいくらでも……。


そう思った瞬間、引き寄せられると、ぎゅっと抱きしめられていた。


「えっ……」

「なんでそんな泣きそうな顔するんですか……そんな顔されたら

 引き下がれるわけないでしょ……」


そんな顔って…自分じゃ分からない…

だって……これは諦めなきゃ行けない事で……一緒になってもきっと

後で後悔する。

そういう恋なのだから……。

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