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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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楠木side

楠木side


朝から気分が悪かった。

食事も喉を通らない。


顔色が悪いと担任に保健室へ行けと言われ、そのまま学校を出

てきた。

足は自ずと病院へと向かった。


昨日行った病室へ着くと先客がいた。


こっそり聞き耳を立てると事故の事で聞きに来ていた警察だと

知った。


ぽつりぽつりと話す先輩の声が少し震えていた気がする。


「そうですか…最近変わったことなどありませんか?誰かに付

 けられているとか?何かものがなくなっているとか?」

「いいえ……覚えてないです」

「では、あの日の事で何か覚えている事はないですか?」

「……すいません………何も思い出せなくて………」

「そうですね………多分ですが、何かショックな事があったと

 思うのですが……いや、今はいいです。何か思い出したら、

 こちらに連絡ください」


二人組みで聴き込みしていたのか出ていってしまった。

その後に、部屋に入ると声をかけた。

やっぱり、変わらない月島の姿に目を細める。


「誰……かな?」

「俺です、楠木………楠木祐介です。先輩……」


名前を言っても反応が薄かった。


「先輩、差し入れです。好きでしたよね?」

「えーっと、毎日くるけど……君は……」

「昔に、先輩にお世話になったので、少しでも気に入っても

 らえたらいいなって…ほら、食べてくださいよ〜」

「ううん……」


手土産にと好物を持ってきたつもりだった。

が、少しも嬉しそうじゃない。

かえって警戒させてしまった気がする。


もし、もしも、何も覚えていないのなら…

また一から始められるのではないか?

これはチャンスなのではないだろうか?


「好きだったはずです…ちゃんと食べてくださいね。また来

 ます」


それだけ言って出てきたのだった。

次の日にはもっと近づこうと思っていた。


そして、差し入れがてら手を握ろうと近付いた時だった。

すぐに避けるように引っ込められた。


まるで故意的に避けている気がする。

これでは手を握る事さえも難しい。

病人に乱暴なことはできないし、本当の事もわからない。


ただ、楠木の事を歓迎していないのは態度で分かっていた。

分かってはいるけど、弁解したくて、まだこうやって訪ねている

のだった。


「そういえば、もうすぐ先輩も3年なんですね〜」

「そっか〜、そうだね…」

「俺には姉が一人いるんですけど、それがスッゲー顔はいいんです。

 そのせいでストーカーとかいて〜」

「…」

「あ、疲れちゃいました?」

「うん、ごめんね…少し横になっていい?」

「いえ、俺帰りますね…」

「うん…」


それ以上、会話など出来なかった。

楠木の持ってきたものは、冷蔵庫に入れておくといって中を開けた。

すると昨日の物にも手をつけていなかった。


いつもなら、喜んで真っ先に食べそうな先輩が手をつけないのだ。

あきらかに嫌われているとしか思えない……。


本当にもう、ダメなのだろうか?

もう、振り向いても貰えないのだろうか?


だったら、どうしてあの日…抱かれてくれたのだろう。

別れるつもりだったのなら、なぜ…?


聞けない疑問は膨れ上がるばかりだった。

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