楠木side
楠木side
事故に遭ったと知ってから、慌てるように病院へと向かった。
水戸の後ろ姿を追うように向かった先は結構近くの病院だった。
病室に直行した水戸について行くと、ちょうど中から母親らし
き人が出て来ていた。
廊下で何か話したあとで、荷物を持って帰ってしまった。
水戸が入ってからなかなか出てこない。
中からは話声が聞こえてくる。
ドアにへばりつくわけにもいかずうろうろと通り過ぎたが、看
護師の目がある為に、それ以上は止まれなかった。
病院の待合室でじっと待つ事1時間。
辺りも暗くなりつつあった。
やっと出てきた水戸と変わるように病室へと向かった。
あの日の謝罪をしたい。
無理矢理したせいで、こんな事になったのなら尚更、放置出来
なかったからだ。
病室であった先輩は痛々しく、至る所に擦り傷ができていた。
顔も、そして身体中にも…。
動けないのか、点滴をしていて、足はギブスで固められ固定さ
れていた。
腕も片方は傷だらけだったがもう片方は…
初めて見た先輩の時のように傷ついた姿に心臓の高鳴りが抑え
られない。
「先輩………」
声をかけると視線がこっちを向く。
見た瞬間少し瞳は揺れた気がしたが、すぐに何も映さなくなっ
た。
「先輩…えーっと、あの……」
「…」
まるで興味がないとでもいうように窓の外を向いてしまう。
まるで知らないとでも言われた気分だった。
そんな視線に耐えられずに病室を飛び出してしまった。
せめて、原因作った自分を非難してほしい。
何言われても受け止めるつもりでいたのに…まるでその瞳に映す
ことすら拒否されるのは耐え難かった。
家に着くと、どうやって帰って来たのかさえわからなくなってい
た。
好きだからこそ、自分に振り向いて欲しくて少し強引な事もした。
それが月島を泣かせる事になっても、自分の手で笑わせる自信が
あったからだ。
それが、それがこんな早く無くなってしまうなんて思わなかった。
自分すら見てくれない…
そんなの耐えられない!!
早く誤解を解かなければっ!
明日にでももう一回行ってみようと心に決めたのだった。
「祐介〜ご飯よ〜」
ガチャっと部屋のドアが開く。
「おい、開けるなって!」
「別にいいじゃない〜、お母さんが呼んでるわよ〜って、あんた
顔どうしたのよ!喧嘩でもしたの?」
そう言われてみれば昼に水戸先輩に殴られたんだっけ…。
月島先輩が事故に遭ったと聞いた時から、感覚が鈍っている気が
する。
いや……違う。
月島先輩に別れようと言われた時からだ。
あの時、何かが壊れるような感覚がしたのだ。
大事なものが無くなってしまうような…そんな怖い感覚が。
幸せだった時間が一気に崩れ落ちてしまった気がした。
目の前にある先輩を本気で壊すつもりで抱きしめていた。
無理矢理縛って…それから………
俺はナニをした…?
泣きじゃくる先輩を押さえつけて……それから……
思い出せるだけでも酷い事をしたと実感した。
今にも吐きそうな気分になると手で口元を抑えるとトイレに駆け
込んだ。
「おぇぇぇっ………ウッ………」
「あんた変なもんでも食べたの?食事変えてもらう?」
「……いらない……」
なんて事をしてしまったのだろう。
こんな事しておいてどんな顔で会えばよかったのだろうか?
いっそ何も覚えてなければいいのに…。
何もかも初めからやり直したい。
時間はかかってもいい。
先輩と出会うところからやり直したかった。




