第三十七話
リハビリも順調に進み、やっと明日退院が決まった。
「月島くん、頑張ってるわね〜、ほらっ…もうちょっとよ」
「はいっ……」
歯を食いしばりながらリハビリに励んでいたのだった。
腕の方はだいぶんとよくなった。
片足は今も少し不安は残るが、松葉杖を使えば歩くのに支障は
ないくらいには回復した。
「よっ!」
リハビリ室の外から差し入れを持って入って来た水戸に気づく
とすぐにゆっくり歩き出した。
看護師さんに松葉杖を借りて、休憩にする事にしたのだった。
「たかちゃん!まだ学校はいいの?」
「あぁ、明日からかな…」
「僕もだよ!明日退院して明後日からだって。」
「そっか。学校は段差が多いからな、気をつけねーとな」
「うん…でも、たかちゃんがいるから…また一緒に行こうね」
「そうだな…、足はどうだ?」
松葉杖を持っているのを見ると、それなしではまだ歩けないと
理解したのだろう。
間違ってはいないが、順調に回復して行っていることを伝えた
のだった。
「それなら、よかった。」
「心配かけてごめんね?」
「いや……いいよ。それよりも聞きたい事があるんだ。蛍…お前
記憶無いって言ってたのさぁ〜あれ、嘘だろ?」
「……なんで?たかちゃん…何が言いたいの?」
一瞬ドキリとした。
もちろん、目が覚めた時は多少の混乱はあったが、すぐに状況
を理解してからは記憶に混濁はない。
むしろはっきりと思い出せる。
「もしさ…楠木を思い出したくなくて忘れたって事にしたのな
らさ……」
「…」
「いっそ、しっかり振って来いよ」
「もう、付き合ってないよ?あの日、別れを告げたんだ。だか
ら………もう僕とは関係ないんだ」
「そっか……」
「うん…」
言っている意味はわかる。
だが、問題は楠木が諦めていないという事だった。
これは月島の問題ではなく、楠木の問題だった。
水戸の中では決して二人っきりにしないでおこうという考えが
まとまっていくのだった。
あれから一条先輩は大人しくなったが、楠木は毎日のように2
年の教室にくるようになった。
前のようにこっそり来ては、合図して待ち合わせをするような
事もなく、堂々と中に入って来ては月島の隣に来たのだった。
「蛍、荷物持つから待ってろ」
「別にリュックにしたから平気だよ?」
「いや、危ないから、待ってろ。勝手に帰るなよ!それと、楠
木お前もさっさと帰れ」
「別に水戸先輩に言われる事じゃないですよね?俺は月島先輩
に会いに来たんで?待ってる間暇でしょ?話相手になります
よ?」
もう隠しもしない堂々とした態度を見せるようになったのだっ
た。




