水戸side
水戸side
目が覚めたと知らせを貰って、すぐに駆けつけた時に見たのは
外を眺めながら静かに泣いている月島の姿だった。
「蛍……?」
「た……か…ちゃっ………」
「いいよ。無理いて話さなくても…」
「うん……」
そっと抱きしめると震えているのに気づいた。
あえて指摘しないでおくと、落ち着いた頃に、母親が帰って来
ていた。
「あら、貴之くん、いらっしゃい」
「はい、こんにちわ。」
「ごめんなさいね。蛍がこんな状態で…」
「いえ……怪我の方はあれからどうなんですか?」
「順調によくなってるわ。足も骨折してるけど、すぐにリハビリ
も始まるし。それよりもね……精神的なものの方が……」
「…蛍、ちょっとトイレ行ってくるな?」
「うん…」
母親と一緒に病室を離れると、詳しく聞いた。
それは、一時的に事故の前後の記憶を無くしていると言う。
本人は何があったのか覚えてないと言っていたそうだった。
「そう…ですか…」
「そうなの…でも、何かあったはずなの。じゃなきゃあんな事……」
水戸も月島の身体につけられていた鬱血や噛み跡、そして腕を縛ら
れたような痕の事を聞いていただけに、なんとも言いずらい。
犯人は知っているが、説明などしずらいのだ。
ましてや、月島がゲイだと親には話していない事を知っているので、
よけいにいえなかった。
「あの子が何かに悩んでるんじゃないかと思うと………なにか聞いて
ないかしら?」
「すいません、何もこれと言っては……」
「そうよね、ごめんなさいね」
「いえ……」
言えないのが辛い。
ましてや、水戸自身も認めたくない事実が最近発覚した。
親友のはずの自分が月島に惚れているかもしれないという事実にだ。
これでは、楠木の二の舞になってしまう。
近くにいると触りたくなるし、抱きしめたくなる衝動がたまにある
のだった。
今は気づいていないが、いつかは気づくだろう。
嫌われたくない。
大事な親友なのだから。
でも、誰にも渡したくないのも事実だった。
だから、楠木の事も言えなかった。
あの時見たのはあいつの姉で、嫌われていたわけでも、二股かけられ
ていたわけでもないのだと。
言ったら、また月島を遠くに感じてしまう。
今はまだ、そばにいて欲しい。
自分を見てほしい。
その感情だけが、確かな気持ちだったからだ。




