第三十話
このまま先生が来る前にと、水戸と楠木は場所を移動した。
信じられない話だったからだ。
「さっきの話どう言う事ですか?」
「先に俺の質問に答えろよ。腕に縛った痕があったんだぞ。それも
知らないと言いたいのか?」
「それは……俺ですね。一緒に遊んで楽しかったのに…初めてあの人
を抱けて…それから、告白しようと思ったんです。もうお試しじゃ
なくて、本当に付き合おうって……でも、いきなり蛍先輩が別れよ
うって言い出して……それで……」
そのまま動かなくなるまで犯したと続けたのだった。
ホテルに残して来たと言った。
拘束したのは逃さない為だったという。
さほど抵抗はしなかったらしいが、痛みに多少は暴れたと言っていた。
「なんで………あいつを裏切るなって言ったよな?」
「それは先輩が……」
「前日何をやってた?約束すっぽかして何してたんだ?女と腕組んで
歩くくらいに見せつけてたくせに……」
「女って、俺はそんなのいなっ………あっ……」
そういえば、姉に元彼がいるからと周りに見せつけるように腕を組ん
でいたのを思い出した。
「見てたのかよ……」
「思い出したんだな…言い逃れはできないだろ?あいつを傷つけてお
いて、それ以上に逆恨みだなんてな…クズ以下だろ?」
「蛍先輩は今どうして……」
「まだしばらくは動けないから入院してるよ」
「どこに……」
咄嗟に睨むと水戸はそれ以上言わなかった。
「会いに来る気か?あいつを傷つけてボロボロにしておいて、まだ苦
しめるつもりなのか?あいつがどんな気持ちで会いに行ったのかも
知らないで………二度とあいつに会うな!それだけだ」
立ち去った後も、これ以上ないくらいに自分を責めた。
楠木自身、別れたくなかった。
なんであんな事を言うのか、ずっと疑問だった。
でも、前日の事を見られていたのなら納得してしまった。
ゲイならともかく、そうじゃないのなら、男の自分より女を取ると
考えてしまったのだろう。
そして身を引く覚悟で最後に抱かれたと言うのだ。
「ちゃんと言って欲しかった…あなたの口から非難して欲しかった」
そうしてれば、ちゃんと弁解していたのに…
もう、何もかも遅いが、まずはちゃんと弁明したかった。
もう会うなと言われても、もし、嫌いで別れたのではないのなら、
もう一度、もう一度だけ……。
ネットで近くに病院を検索すると、昨日事故で運び込まれた月島
という人が運ばれて来なかったかと聞きまくったのだった。
ちょうどヒットすると、学校を抜け出して向かっていたのだった。




