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たとえ今、好かれなくても…  作者: 秋元智也
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第二十九話

事故で運ばれてから、数時間後意識を取り戻したのだった。

慌てて両親が駆けつけた時には警察からの事情聴取もあった

らしい。


本人の意識がないので聞くこともできず、明日またくると言

っていた。


事件性があったのかと問うたが、あまり詳しくは言ってこな

かった。


医師からも不審な点が指摘されてはいた。

手足の何か擦れたような、縛ったような跡。


押されて倒れた後に、すぐに立ち上がれずそのまま跳ねられ

たと言っていた。

まだ若い青年がすぐに立ち上がれないだろうか?


薬物反応も飲酒の反応もない。

いたって普通の青年だったと言っていた。


強く打ちつけたせいで全身打撲程度で済んだのは、車がそこ

までスピードを出していなかったからだという。


数日は入院を余儀なくされたのだった。


朝早く、学校へも行かず駆けつけた水戸の姿に月島の母親が

簡単な説明をしてくれた。


「そう……ですか……」

「ごめんね、なんか大袈裟よね〜、私ちょっと動転しちゃって」

「いえ……それで蛍は今?」

「えぇ、中で眠っているわ。入って行ってちょうだい」


中に案内されると、横たわって眠っている蛍の姿があった。

痛々しく包帯が巻かれていて、顔にも幾分かの擦り傷がついて

いた。


手首を見ると、あきらかに不自然なくらいに赤い痕がついている。

まるで縛られていたかの様な痕に、思い当たる節があった。


「この痕って……」

「そうよね〜まるで縛られていたんじゃないかって言うのよ?それ

 じゃ〜この子は何かの事件に巻き込まれたんじゃないのかと警察

 の人がね…」

「そう……ですか…」


昨日の電話口の声はあきらかに変だった。

泣きそうなのを必死に我慢しているような。

震えているような声だった。


もし、あの時迎えに行っていたら、じっとしててくれたら。

なにか違ったのだろうか?


午後から学校へといくと1年の教室へと向かった。

どう考えても楠木としか思えなかったからだ。


顔を見せると、眉を顰めてたが、自分から来てくれたので助かった。


「話がある。昨日の事だ。分かってるんだろ?」

「先輩…俺、もう関係ないんで。無駄に絡んで来るのやめてもらえま

 すか?」

「昨日、あいつに何をしたんだ?蛍は今病院で眠ってるよ。昨日夜に

 車に跳ねられて……どうしてそうなったか、お前なら知ってるんだ

 ろ?」

「……は?事故って……」


知らないとでも言うような顔に水戸は襟首を掴むと思いっきり殴りつ

けていた。


水戸が暴力など考えられないと月島なら言うだろう。

水戸だってこんな感情が昂った事などなかった。


一つ間違えたら、死んでいたと思うと殴らずにはいられなかったのだ。


周りの生徒達が騒ぐと、先生を呼びに行ってしまった。


今はそんな事どうでもよかった。


「話せよっ!言い訳の一つでもしてみろよっ!」


怒鳴ったせいで騒がしい教室が一斉に静かになったのだった。



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