第二十四話
一気に走って来たせいで息が切れると立ち止まった。
「蛍……あのさ……」
「やっぱりそうだよね……男の僕より…女性のがいいよね」
「それは………」
水戸からは何も言えない。
楠木ならあんな強引な手を使ってでも月島への執着があったから
きっと大事にすると思っていたのだ。
が、さっきのをみると、美男美女カップルとしてはお似合いだっ
た。
「蛍、帰ろう?」
「もうちょっとここで頭冷やしてく…」
「なら、俺もいるよ」
公園のベンチに腰掛けると水戸は横に座った。
何を言っていいのか迷っていると余計に言葉が出てこなかった。
こんな時、なんと言ったら慰めれるのだろう。
楠木は振られた直後の月島を慰めて自分へと振り向かせたのだ。
水戸にはそんな器用な事はできなかった。
「蛍……いっそ楠木の事は忘れて新しい恋を始めるのはどうかな?」
「たかちゃん?」
「俺じゃダメか?……まだはっきりとは言えないけど……ほら、
あれだ、幼馴染みだし?いつでも甘えられるだろ?」
じっと顔を見つめられるとドキッとする。
が、月島は首を横に振ると、俯いてしまった。
「ごめん……たかちゃんに気を使わせちゃったよね……大丈夫だから。
こんなのへっちゃらだよ。だって、それが普通なんだもん。僕が
おかしいんだもんね………こんな感情を抱き方がおかしいんだよ」
「ちがっ……」
否定したくても、水戸にも正解なんてわからなかった。
誰が誰を好きになっても、不正解なんてないと思う。
ただ、一般的に歓迎される恋愛か、そうでない恋愛かの違いだけだ
った。
「今だけ…抱きしめてもいいか?」
「…うん………ごめんね……」
月島だってわかってる。
こんな風にずっと甘えていいわけではない…と。
それでも、誰かの温もりが欲しい時だってあるのだ。
ぎゅっと力強く抱きしめられると勘違いしそうになる。
勘違いしちゃダメだ…たかちゃんはただ、慰める手段としてこうや
って抱きしめていてくれるだけなのだと。
冗談でもキスを拒んでしまった手前、勝手だと言うものはわかって
いる。
ただ、今だけは…このままで。
落ち着くまでずっと抱きしめられると本当に気持ちが落ち着いて来た。
さっきまでのぐちゃぐちゃな心が癒された気分だった。
「もう…大丈夫だから……」
「そう?平気って顔には見えないけど?」
「うんん、本当に大丈夫だって……これ以上たかちゃんの迷惑になり
たくないし…」
「迷惑じゃない。親友だろ?」
「うん…」
背伸びをすると少し元気になったと言って家まで送っていった。
心配だが、これ以上は深入りはできなかった。
親友だと言った手前、決して恋人にはなれない。
もし強引に引き止めて、彼の心を掴めるのだとしても、きっと水戸には
できない事だろう。
一つ間違えれば親友という立場をも無くす事になりかねないからだ。
「俺は何もできないんだな……」
家に入って行った月島を見送ると一人漏らしたのだった。




