第二十話
やっと熱も下がって学校へと来た。
昨日の水戸からの言葉に思い返してみても、自分の気持ちを
はっきりと理解させられた気がしたのだった。
水戸にキスされるかと思った瞬間、嫌だと思ってしまった。
それは誰でもいいというわけではないという事を指していた
のだった。
一条の時も気持ち悪かった。
では楠木の時はどうだった?
あの時は、抵抗なかった。
息苦しさはあったが、嫌ではなかった。
むしろ、もっと触って欲しいという欲求すら感じていた。
それは、自分に素直になる事と、自分に向き合う事に他ならな
かった。
「蛍先輩、一緒にお昼食べに行きましょ」
「え……あ、うん……」
二人っきりになると恥ずかしくて顔がまともにみられなかった。
「ちゃんと俺を見てください…俺の事嫌いになりましたか?」
「そんな事……ない」
「だったら…今週末に先輩を抱いてもいいですか?」
「う゛っ……うん」
こんな事真正面から言われると余計に恥ずかしかった。
抱かれる?
ほんとうにセックスするのだろうか?
いや。前だってホテルに入った時、するつもりで入ったんだから
嫌なんて言えない。
それでもちょっぴり怖い気もする。
このまま、お試しのお付き合いがいつまで続くのだろうという、
この不安定な関係をはっきりさせたいと思い始めていたのだった。
土曜日の朝早くに、いきなりLINEの通知が入ったのだった。
出かける準備をしながらドキドキして朝食をとっている時だった。
そこに書かれた文字を見て、一瞬で気落ちしたのは言うまでもない。
『すいません、緊急の用事が入ったので明日に変更していいで
すか?』
「分かった。明日、駅で待ち合わせでいい?」
『はい、すいません。では、明日に』
短い単語に、がっかりした気持ちになった。
それだけ期待していたと思うと、明日はちゃんと自分の気持ちを伝
えようと考えていたのだった。
「どうしよう。今日暇になっちゃった。そうだ!たかちゃん誘って
買い物いこっと!」
電話をかけるとすぐに出て、了解を取ると水戸の家に向かったのだ
った。
水戸の家に行くのは久しぶりな気がする。
「たかちゃーん、いる?」
「あら、蛍ちゃんじゃない!大きくなったわね〜、貴之なら、まだ2
階にいるわよ〜」
「はーい、お邪魔しまーす!」
見知った家族のせいかすぐにあげて貰える。
2階へと上がると慌てるように部屋を片付けている水戸がガタガタと
何かをしていた。
「たかちゃん?いる?」
「ちょっと、待って!!」
勝手に開けると何かを隠すような仕草に怪訝に思うった。
「なーに?それ……まさか〜!!」
ちょっとイタズラ心が出ると、さっき隠したものを漁ろうと飛びつい
ていた。
「ちょっと、蛍!やめろって!って、何を漁ってんだよ!」
簡単に引き剥がされるが、そんな事では諦めない。
腰をがっしりホールドされて、身動きが取れなくなるとやっと落ち着
いたのだった。
「なんだよ…チェッ、見たっていいじゃん!」
「それは蛍だって同じ事あるだろ?」
「えーーー。ないもん、だってたかちゃん無理にでも見ちゃうじゃん」
確かに、体格差がある分月島の方がフリだった。
「で?今日はあいつん所行くんじゃなかったのかよ?」
「うん…その予定だったんだけどね……」
朝きたLINEを見せると少しがっかりした事を話した。
「なんだよそれ……、まぁしゃーない。俺が今日は一日付き合って
やるかな…」
「えーーー!僕のが暇を付き合ってやるんだもんっ!」
「はいはい。ちょっと出かけるか!」
「うん」
ちょっと待ってろとくしゃっと頭を撫でられるとなんだか昔みた
いで落ち着く。
なんでだろう。
いつからこんな普通の事が、普通じゃなく思えたんだっけ?
月島はぼうっと着替えを眺めながら考えていたのだった。




