楠木side
楠木side
次の日、やっと月島が学校に来たようだった。
あんな事を言っておいて、会わないという選択肢はない。
だが、昨日水戸が家に行った時に一体何を話したのだろう。
きっと核心をついた事を話したのなら、今頃は別れる事を前提に
考えているかもしれなかった。
「蛍先輩、お昼一緒に行きましょ」
「え……、あ、うん……」
少しぎこちない感じが余計に嫌な予感をさせていた。
なかなか視線が合わせられない。
いつも以上に距離を感じる。
「ちゃんと俺を見てください…俺の事嫌いになりましたか?」
「そんな事……ない」
「だったら…今週末に先輩を抱いてもいいですか?」
「う゛っ……うん」
どう見ても頬を染めている気はする。
それはまだ熱があるからだろうか?
それとも…照れてるいるだけなのだろうか?
今度こそこの関係にはっきり決着をつける必要があった。
お試しではなく、ちゃんとした恋人になろうと言わなければと
考えていたのだった。
週末に約束をしてから、どうしてもソワソワしてしまう。
毎日会っていても、どうにもいつものように話す事ができない。
先輩の様子も少し気になってはいた。
週末になると突然母からの連絡で急遽出かけなければならなく
なってしまった。
叔父の緊急入院に慌てるように月島へとLINEを書く。
『すいません、緊急の用事が入ったので明日に変更していいで
すか?』
「分かった。明日、駅で待ち合わせでいい?」
『はい、すいません。では、明日に』
ポチポチっとメッセージを打つと電車へと乗り込んだのだった。
姉と共に出かけるのば久しぶりだった気がする。
このケバい…もとい、派手な女性の横に並ぶのはどうにも避けて
来たというのに、今回ばっかりは仕方がない。
周りからは美男、美女と言われるが、こっちとしてはそうは思っ
ていないのだった。
「こうして出かけるとさぁ〜カップルみたいに見えるのかね〜」
「ただの姉弟でしょ?」
「またまた〜、そんな事言って〜。」
「恥ずかしいから腕を組むなって!」
「やだわ〜この子ったら〜」
「このババァ…少しは自重しろよ……」
「もう、生意気んなだから〜」
笑いながら言うと席も隣に座って来たのだった。
母親は先に行っていたが、一応なんともないと言っていた。
母親を病院に残して二人はそのまま帰る事にしたのだった。
「あんた達、こっちでホテルとっておくわよ?」
「私はいいわ。明日友達と出かけるからさ〜あんたはどうするの?」
「俺も帰るよ。明日は先輩とデートだし?」
「なっ!生意気〜、って!マジで恋人できたの?」
「あぁ、明日告白する予定だから…」
「ふ〜ん、あんたがね〜。どんな子なのよ?写真とかないの?」
「あっても、見せねーって!」
「そう、なら気をつけて帰りなさいね。私はこっちで泊まってから
月曜の朝には帰るわ」
そういう姉と共に帰って来たのだった。
家までずっと質問攻めだったが、絶対に答えてやらなかったのだった。
駅でなぜか、ベタベタとしてくる姉に文句を言おうとすると、すぐに
ぎゅっと腕を絡められた。
「ちょっとあんたそのままじっとしてて、元彼がいるのよ」
「ちょっ…もと彼ってあのストーカーになったやつか?」
「そうよ、めんどくさのよね〜あんたそのままでいなさいよ」
「はいはい、全く………」
嫌がりもせず、そのままバカップルを演じる事にしたのだった。
遠くで何か声が聞こえた気がしたが、走り去っていく後ろ姿が月島を
思い出させた。
こんなところにはいないだろう。
明日は先輩とデートかぁ〜楽しみだな〜。
前みたいにすぐにホテルはダメなだ、ちゃんと告白して、それから〜。
明日の想像をしながら家に帰ったのだった。




